ノートで学ぶマネーの「常識」

FP fumicoの“Live colorfully”#27 令和に生きる相場格言~日常生活のヒントにも

「マネー」に関するインスタグラムへの投稿で、20~30代の女性から支持を集めるFP(ファイナンシャルプランナー)のfumicoさん。お金に対する苦手意識を克服する方法や、ちょっとした工夫などをfumicoさんのインスタでお馴染みの手書きのノートでお届けする、27回目です。今回は相場格言について。意外と役に立つ“格言”を解説します。
FP fumicoの“Live colorfully”#26 「72の法則」「世代の違い」投資の注意点はこれ!

円で支払われた給与、日本の銀行に預けると・・・

「卵はひとつのカゴに盛るな」は分散投資のススメです。

実は「投資は怖い」とすべてを預金に回すのも、リスクを分散できていません。預金だけというのも、ひとつのカゴに預けているのと一緒ですから。
預金に加えて、株式投資もしているから大丈夫、という方にお伝えしたいこともあります。それは、もし日本の会社に勤めていて、円で貰った給与を国内の銀行に預けたり、日本の会社の株式に投資したりしている場合も注意が必要ということ。この場合は、“日本国内”というカゴの中で“盛っている”だけです。

しかも現在の日本は、賃金は増えない一方、物価は上昇し、低金利は続いています。

投資で人と比べても「意味はない」

「遠くのものは避けよ」は、情報があふれていて、SNSなどでの運用成果を目にする機会が増えた現在において重要な格言です。自分がフォローしている人が薦めている金融商品を買いたくなったり、周囲の人が「儲けた」と聞いたりすると、同じ手法を試したくなりがち。しかし、他者の成功は“遠くのもの”。投資にはタイミングもありますし、向き不向きもある。当然ながら情報量や資金力も人それぞれです。特に資金量の多寡によって、どの程度まで値動きの振れ幅を受け入れることができるかというリスク許容度は違ってきます。

しかも、投資は始めてから成功するまで時間がかかる。つまり今、世の中にあふれている成功例と、これから始めようとする人とはタイムラグがあるのです。ご自身にとって身近な投資方法なのかという点も含めて、深く検討せずに真似をすると、失敗する可能性が高くなる。このことは肝に銘じておいてくださいね。

大学受験や資格試験などもそうですが、万人に共通する必勝法はない。だから一般に“成功談”より“失敗談”の方が共通性があると言われるのです。
しかも、ライフプランは千差万別なわけですから、投資においては他人の成功体験に引きずられたり、人と比べたりしても意味がありません。比較対象はあくまでご自身。投資をした場合と、そうでない場合を比べるようにしてください。

かくいう私も、過去に銀行に薦められるがままに“新興国投信”という“遠くのもの”に手を出したことがあります。新興国債券に投資する投資信託だったのですが、相場の上がり下がりのメカニズムを、私自身がまったく理解せずに流行に影響されて……。当初は上昇の波に乗っていたのですが、ズルズルと下がっているのに持ち続けてしまった結果、損をした。“遠くのもの”では、会社の同僚に勧められ、人生で初めて購入した教育系の会社の株での失敗も。買った直後までは、その会社は株式分割を繰り返して株価を上昇させていたのですが、次第に下落。買った当時の半分くらいの値で売ることになりました。

ですから、投資初心者なら、“近く”から選びたい。
女性であれば、化粧品業界やスーパー、外食系の企業などが、最初の投資対象になり得ると思います。日ごろから、商品を利用したり、足を運んだりしていて身近ですからね。インサイダー取引は違法ですが、働いている中で状況を把握しやすい業界もあると思います。これも“近く”にあたります。

「ドキドキして寝られなさそう」なら控えて!

「落ちてくるナイフは掴むな」は、私が自分に日頃から言い聞かせている言葉です。

株価が下がっているときなどには、「買わなくては損!」と思ってしまいがち。ですが、買えばさらに値下がりして損をすることがある一方、買わなければマイナスになることは決してない。
ノートでは「下げ止まってから購入したいところです」と書いていますが、購入の目安も示したいと思います。
その株価の上下動に「ドキドキして寝られなさそう」「仕事が手につかなくなるかも」という状態なら購入は控えた方がいいと、私は普段、お伝えしています。みなさんそれぞれのリスク許容度も含めて、判断していただければ。

相場での経験則であるアノマリーというモノもあります。ノートで紹介した「Sell in May and go away」はその一つで正確には「But remember to come back in September」などと続きます。本来は、「5月は株高になりやすいので高値で売り抜け、株価が底を打ちやすい9月に戻って来い」という意味でしたが、日本では「5月に株価が下がるので売ってしまおう」という違う意味に取られているようです。誤解して伝わっているケースもある、と心に留めておいてください。

示唆に富む相場格言

現在も残っている相場格言には汎用性があり、日常生活のヒントになる場合も多くあります。

例えば「卵はひとつのカゴに盛るな」。仕事の資料をPCのハードディスクのみに保管していたら、故障やウイルス感染の場合に一気に失う可能性があります。私の知り合いに、子どもが生まれてからの数年間の写真を高容量のSDカードに保存していたら、壊れてしまったという方もいらっしゃいました。東京一極集中というのも、卵をひとつのカゴに盛っている状態と言えると思います。

相場格言は古くからあり、多くの人によって伝えられ、現在も残っているモノですから示唆に富んでいます。今後も紹介していきますね。

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FP fumicoの“Live colorfully”は、第2・第4金曜に公開の予定です。

FP fumicoの“Live colorfully”#26 「72の法則」「世代の違い」投資の注意点はこれ!
CFPⓇ保有のファイナンシャルプランナー。 大学卒業後、生命保険会社や市役所での勤務を経て、2017年12月より「お金」に関するInstagramへの投稿を始める。社会保険や税金・資産運用といった学ぶ機会がなく、話題にも上りづらいコトを身近に感じてもらえるよう、解説の投稿は手書き。趣味は起床後すぐの15分ヨガと、株式投資。
ハイボールと阪神タイガースを愛するアラフォーおひとりさま。神戸で生まれ育ち、学生時代は高知、千葉、名古屋と国内を転々……。雑誌で週刊朝日とAERA、新聞では文化部と社会部などを経験し、現在telling,編集部。20年以上の1人暮らしを経て、そろそろ限界を感じています。