入山法子さん、リアルな心理描写で女性の闇と成長を描く ドラマ「明日、私は誰かのカノジョ シーズン2」

ドラマ「明日、私は誰かのカノジョ シーズン2」(MBS/TBS)で、何かにすがりたくない女子大学生の留奈(芽島みずきさん)とは対照的に、何かにすがりながら生きてきた40代の女性、江美役を演じる入山法子さん。役への印象や視聴者に届けたい思いについて聞きました。
入山法子さん「年を取るのが楽しみで仕方ない」 何歳になってもワクワクを信じて 【画像】入山法子さんの撮り下ろし写真

素の自分と真逆の役に「通じ合える瞬間」を探して

『第68回小学館漫画賞・少女向け部門』を受賞し、累計500万部を突破している人気漫画が原作で、2022年に実写化されたドラマの続編。入山さん演じる江美は、女子大学生の留奈と同じソープランドで働く、元バンギャルでスピリチュアル信仰の強い40代女性。父の死をきっかけに実家へ戻り、心のよりどころとする占師レター先生(橋本マナミさん)の導きで地元のスナックで働くうちに、客と関係を持つように。これまで、占いに人生を委ね、周りに流されながら生きてきました。

――オファーを受けたとき、江美という役柄にどんな印象を持ちましたか?

入山法子さん(以下、入山): 父の死をきっかけに今までの自分の人生を振り返った江美は、後悔や“たられば”ばかりが残っていることに気づきますが、今の生活を変えられるわけでもなく、未来に希望ももてないまま、流されるように生きています。率直に、素の自分とは真逆だなと思いました。私自身は、悪いことは忘れて、どんどん前に進んでいくタイプ(笑)。なんでこんなに過去が忘れられないんだろうと、もどかしさを抱きました。

――ご自身とは真逆の役。どのように役作りをされたのでしょうか?

入山: まず、江美の心情を想像することから始めました。例えば、江美が過去に執着してしまうのはなぜだろうと。江美は若さが武器になるという思い込みがあるんです。年齢を重ねることは素敵なことなのに、江美は、若さに執着するあまり、現実に目がいかなくなっている。これは女性なら誰でも理解できることだと気づいてからは、江美を身近に感じるようになりました。

また、江美はソープランドで働いている設定なので、遊郭などの風俗文化をテーマにした本を読んだり、現在、風俗産業で働いていらっしゃる方のブログやTwitterを拝見したりしました。そのうちにその方々の日常や価値観がわかるようになり、江美のセリフが腑(ふ)に落ちる瞬間が多くなりました。江美と通じ合えた感覚でしょうか。それを繰り返し、想像や勉強を積み重ねながら、江美という役に寄り添っていきました。

――江美を演じる中で、ご自身の価値観や考え方に変化はありましたか?

入山: 私自身の軸となる部分は変わらないものの、人によっていろいろな生き方があるのだなと思いました。これまでも演じる役柄を通じて価値観の広がりを感じてきましたが、今回もまさにそうです。新たな生き方を知ったことが刺激になり、自然と演技に反映されるといいなと思います。

――何かにすがりたくて、江美のようにスピリチュアルにはまってしまう女性も多いですよね。

入山: そうですね。スピリチュアルとは少し違いますが、私も占いは好きで、よく見ます。スピリチュアル自体が悪いこととは言えませんが、依存するほどすがってしまうのは危険です。第三者の意見として参考にする、選択肢の一つに加えてみるというのであれば良いのかも知れませんが、自分自身の判断力を失ってしまうほどのめりこむと、自分だけでなく、周囲の人たちとの関係も悪くなってしまうので、特に、心が弱っている時には、過度に依存しないように気をつけなければと思います。

私は悩んだとき、仲間に話を聞いてもらうことが多く、ずいぶん助けてもらっています。何でも言い合える人がそばにいてくれるのは、本当に大切ですよね。

生きづらさを抱える人を「かわいそう」で終わらせない

――原作では、レンタル彼女、整形、パパ活、ホスト狂いなど、現代社会で生きづらさを抱える人たちが描かれています。原作についての印象はいかがだったでしょうか。

入山: タイトルのインパクトをはじめ、過激なセリフや、登場人物のキャラクターの濃さ、ドロドロした人間関係などが話題になっていますが、私は、その中で必死に生きる登場人物たちの心の傷に目がいきました。今、心の痛みを抱えて生きている人がたくさんいるのだと原作を読んで痛感し、ドラマでは、原作に何をプラスして視聴者に伝えられるだろうと考えました。

――撮影で印象に残っているエピソードを教えてください。

入山: 10代から40代までという年齢幅を演じさせていただいたことでしょうか。当時の江美の様子を想像して演じるのは難しかったのですが、江美の人生を追体験しながら生きられたので、充実感がありました。江美としての時間を積み重ねる中で、どんどん彼女と向き合えた気がするので、その集大成となる最終話をぜひ楽しみにしていてください。

――ドラマに寄せたコメントで、人の一生を花に例えていらっしゃったのが印象的でした。

入山: 若さへの執着から抜けられない江美という女性を見て、若さだけが良いことではないのにと思いました。花の盛りが終わっても、冬を越え春になれば、ひと回り大きな幹や根になる。その時はわからなくても、時が経てば冬の必要性がきっとわかるはず。花が散ることは恐れることではない。人は何度でも再生できるということを伝えたかったんです。

――作品を通じて、どんな想いを届けたいですか?

入山: このドラマに出てくる人たちってかわいそうだよね、という感想だけが残るような、悲しいドラマにしたくないと思っています。江美が、なぜ人にすがらなければ生きていけなかったのか、気づけなかったことは何か。それを観ていただく中で、きっとみなさんにも共感していただける部分があるのではないでしょうか。ご自身の生き方や感じてきたことを振り返っていただきながらドラマの展開を楽しんでいただけたら嬉(うれ)しいです。江美が人生にどう立ち向かっていくのかにもご期待ください!

ヘアメイク:美舟(SIGNO)
スタイリング:黒崎彩(Linx)

入山法子さん「年を取るのが楽しみで仕方ない」 何歳になってもワクワクを信じて 【画像】入山法子さんの撮り下ろし写真

入山法子(いりやま・のりこ)さんのプロフィール

1985年、埼玉県出身。2004年4月、大学入学と同時に週刊朝日の表紙を飾りモデルデビューし、2006年、ドラマ『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』(日本テレビ系列)で本格的に女優デビュー。CMや舞台、雑誌、PVなど幅広く活躍。主な出演作に、映画『ハッピーフライト』『SP 野望篇・革命篇』『となりの怪物くん』『天上の花』、ドラマ『きみはペット』NHK連続テレビ小説『エール』『雪女と蟹を食う』など。

ドラマイズム『明日、私は誰かのカノジョ シーズン2』

出演:〈シーズン2〉茅島みずき、綱啓永、新井美羽、稲葉友、石川恋、橋本マナミ、入山法子 〈特別編〉齊藤なぎさ、本田響矢
原作:『明日、私は誰かのカノジョ』をのひなお/サイコミ(サイコミ/Cygames)
監督:〈特別編〉酒井麻衣〈シーズン2〉権野元 菅原正登
脚本:三浦希紗 イ・ナウォン 川原杏奈
製作:「明日、私は誰かのカノジョ」製作委員会・MBS
MBS(毎日放送)毎週火曜深夜0:59~
TBS 毎週火曜深夜1:28~
RKB(RKB毎日放送)毎週月曜深夜1:55~

愛媛県生まれ。5年間の都内学習塾勤務を経て、2011年にフリーライターに転身。ウェブや雑誌のインタビュー記事、教材や試験問題の作成や小論文の添削などを担当する。高校生と中学生の息子とのおしゃべりが大好き。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。