ソニンさん「ダサい情けない自分も認められるようになった」。節目の“不惑”記念日をファンとともに

EE JUMPのボーカルからソロとなり、『ミス・サイゴン』などのミュージカルではヒロイン役を数多く務めるほか、2023年1月期ドラマ『大病院占拠』でも重要な役どころで出演していたソニンさん。3月に40歳を迎えた彼女が、節目の年を共に祝うファンミーティングを開催します。これまでの人生を振り返り、ターニングポイントとなった出来事について話してくれました。
【画像】ソニンさんの撮り下ろし写真 ソニンさん「人生は理想通りにはいかない」。節目のいま、踏み出した一歩

ファンミーティングはホームパーティーのよう

――4月15日に、5年ぶりとなるファンミーティングが開催されます。

ソニンさん(以下、ソニン): 前回のファンミーティングから、いつの間にか5年も経ったんですね。実はその5年の間の2020年、コロナ禍の厳しい状況ながらもデビュー20周年を記念した『20th ANNIVERSARY LIVE「Cheers.」』を開催しました。その時はマスクをして黙って観なきゃいけない時期だったので、会場が静かで実は少し寂しかったんです。でもようやく今はマスクをすれば、お客様も声を出しても大丈夫という流れになってきました。この時期にタイミングよくファンミーティングができるようになってよかったと思います。

ファンミーティングがライブと違うところは、ホームパーティーのようなリラックスした雰囲気で行われることです。コロナ禍で失われていたファンの方々とのちょっとした会話を楽しみにしています。

今回は、私が3月10日に迎えた人生の節目を、ファンの方と一緒にお祝いする内容になりました。40年間を秘蔵映像や思い出の写真で振り返りつつ、それぞれの時代に合わせた歌を披露する予定です。J-POPもミュージカル曲も歌います。節目の年ということもありますし、コロナ禍を経ていることもあって、多分私も舞台から会場を観て、5年前とは違った感情になるのだろうなと今から思っています。ファンの方にもその気持ちを一緒に共有していただけたらすごくうれしいですね。

――EE JUMPのユニットからソロになった時はまだ10代後半でした。芸能活動をやめることなどは考えませんでしたか?

ソニン: その時は芸能界に入って間もなく、若かったし、「とりあえず言われた通りにやらないと、私は芸能界にはいられないんだ」と思って、必死にもがいていた気がします。

後になって、皆さんから「あの時、なぜつらい状況から逃げなかったの?」といろいろ聞かれるんですが、その当時の私は例えば事務所をやめるとか、芸能活動をやめるとか、自分に他の選択肢があることすら気づいていませんでした。でも若い頃ってそうじゃないですか。檻の中にいる動物は檻の中しか知らないように、渦中にいる人は案外気づかないものなんですよ。その後成長して、ニューヨーク留学以降は自分で広い視野を持って選択するようになりましたね。

――40年を振り返って、ターニングポイントになったのは、2012年に芸能活動を一時中断して、文化庁の新進芸術家海外研修制度でニューヨークに演劇留学したことでしょうか。

ソニン: やはり一番大きかったのは、ニューヨークへ1年半留学したことですね。私の芸能人生はニューヨークの前後で大きく変わっています。

留学前までは環境が変わることに自分の身を任せているうちに、進むべき方向性が自然と選択されていったように思います。EE JUMPのユニット活動からソロになった時も、自分が意図しないタイミングで活動形態が変わったんですよね。歌の世界から舞台に転向した時もそうでした。芸能界に入った時は、お芝居がしたいとは思っていなかったんですよ。そもそも私にお芝居ができるとも思っていませんでした。

ニューヨークに行くにあたり、現地のエンターテインメントの刺激を受けて、自分のお芝居や芸事の意識は変わるんだろうなと予想していました。でも、実際に行ってみて変わったのは、がんじがらめになって見えなくなっていた「ダサくて、情けない本来の自分の姿」を見つめられるようになったことでした。

ニューヨーク留学で考えた「人間・ソニン」

――ニューヨークで大きな収穫を得たのですね。

ソニン: 小さい頃からどこか優等生気質でした。若くしてアイドルとなり、表舞台に立つ者として長く過ごすうちに、いつも「人のお手本でいなくてはいけない」「カッコいい自分でなきゃいけない」と無意識に自分自身に言い聞かせていました。そうこうしているうちに、私はだらしない自分を許すことができなくなっていきました。

そんな私が「本来の自分って何者なんだろう」と考え始めたのは、ニューヨークに住む人々の生き様を目の当たりにしたからでした。いろんな人種の人々が混ざり合って住んでいる街です。皆、それぞれ出身地の文化をもとに生きているので、価値観がまったく違います。互いの主張がぶつかりあったとしても、自分から折れて相手に妥協することがない。お互いそれぞれ我が道を行くんですよね。むしろ主張を曲げることは、アイデンティティの根幹に関わるから決してしない。それでもコミュニケーションは成立する。ニューヨーカーたちのむき出しの意思疎通に触れて、「人間・ソニン」について考えたんです。

私にはカッコ悪いところがすごくある。でも人前に出る仕事をしているうちに、それをずっと心の奥に隠してきました。それがニューヨーク生活で露わになった。情けない自分も許そう、認めてあげようって。自分の悪いところを受け入れられるようになったんですよね。ストレス感じているんだな、サボりたいんだな。そういうモヤモヤした思いを自分の中から排除しない。そう感じている自分をそのまま認めてあげる。

パフォーマーも人間です。悪いところも人間の魅力につながることが多い。短所をひた隠す役者さんがいたとしたら、きっとお客さんの目から観てもどこかしっくりこないところを感じるのではないか。そういうことに気づけたのが、ニューヨーク留学の一番の収穫でしたね。

【画像】ソニンさんの撮り下ろし写真 ソニンさん「人生は理想通りにはいかない」。節目のいま、踏み出した一歩

●ソニン(そにん)さんのプロフィール

1983年生まれ、高知県出身。2000年にEE JUMPのメインボーカルとしてCDデビュー。翌年よりソロ活動を開始し、『カレーライスの女』で第40回ゴールデン・アロー賞音楽新人賞を受賞する。2004年『8 人の女たち』で初舞台。以来、舞台を中心に活躍し、『RENT』『トロイラスとクレシダ』『ダンス オブ ヴァンパイア』の演技で第41回菊田一夫演劇賞を受賞。『1789 −バスティーユの恋人たち−』『マリー・アントワネット』の演技でも、第26回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞している。近年は2023年1月クールの『大病院占拠』(日本テレビ系)などTVドラマにも精力的に出演中。4月からはNHKドラマ10『育休刑事』にも出演予定。

■「Sonim ”MILESTONE” Fan meeting~Talk & Live 2023~」

2023年4月15日(土)14:00/18:00
JZ Brat SOUND OF TOKYO
出演:ソニン/梶原健生(ギター)/高山和芽(ピアノ)

横浜生まれ、町田育ちのライター。エンタメ雑誌の編集者を経て、フリーランスに。好きなものは、演劇と音楽とプロ野球。横浜と台湾の古民家との二拠点生活を10年続けており、コロナが明けた世界を心待ちにしている。
2007年来日。芸術学部写真学科卒業後、出版社カメラマンとして勤務。2014年からフリーランス。