古川雄輝さん、「30代になることへの不安はすごくあった。でも…」

6月25日から東京、7月22日から兵庫で上演される舞台「室温~夜の音楽~」で罪を犯した青年を演じる俳優の古川雄輝さん(34)。ドラマや映画、舞台と多方面で活動する古川さんは7歳からカナダで8年暮らし、高校時代は米・ニューヨークで過ごした帰国子女でもあります。そんな古川さんに年齢の重ね方などについてお話をうかがいました。
古川雄輝さん、「誤魔化しがきかない分、舞台は役者の技量が問われる」

30歳を過ぎたら…ほとんど変わらなかった

――今年の上半期だけでも連続ドラマ4本に出演し、舞台にも。忙しい日々の中で、どのようにしてリラックスしていますか。

古川雄輝さん(以下、古川): 夜にお酒を飲むことですね。今は昔みたいに外に飲みに出かけることもなくなりましたし、家に帰っても台本を読むだけ。基本的にやる事がそんなにないんです。

今はお酒でリラックスしているんですが、元々は飲めなかったんです。居酒屋に行ってもカルーアミルクが何とか飲める、という程度。それが30歳くらいで急に飲めるようになったんです。
きっかけは、ある時すごくいいウイスキーを飲んだら「こんなに美味しいんだ!」と感動したことです。だから今も、もっぱらウイスキー。おつまみは食べず、1時間ぐらい飲んでいます。

――12月で35歳。年齢を重ねることについてどのように考えていますか。

古川: 30歳になる時に、色々な取材で「30代になること」への不安をすごく語っていたんです。芽が出なければ30歳の時点で役者を諦めてやめちゃう人もたくさん出てきますし。それに20代と30代では、人は見方を変えるような気がしていて。
だから俳優の場合は、吉田羊さんみたいに年齢を非公表にするほうがいいのかな、とか考えていました。ただ、いざ30歳を過ぎたら……ほとんど変わらなかったです。今年35歳になりますが、今でも大学生役もやりますし(笑)。

なので、当時のような不安はあまりないんですけど、強いて言うなら、これから少しずつ年を取っていく中で、できる役柄が変わってくると思うんですね。今まであまりやったことがない上司や、役職が上の先生の役などを演じることになると思います。ただ35歳を前にして、いまだにそういう役を演じた経験がないので、オファーがきた時のことを考えると……という不安はありますね。

――上司や先生役の古川さん、ぜひ見てみたいです。

古川: これまで軽くはやったことあるんですけど、本格的に演じたことはまだないので、もしそんなオファーがくれば、の話ですが。何だか今後もこない気がしてきました(苦笑)。

人付き合いがとても苦手で…

――telling,の読者は20~30代の女性が多いのですが、同世代の女性に対して、古川さんはどんな印象をお持ちですか?

古川: ファンの方の中には自分と同世代の方もいます。人生の転機を迎えている方が多いですよね。以前行ったファンイベントに、久しぶりに来られたファンの方がいらっしゃって「何されてたんですか?」って聞いたら「出産していた」とか「結婚していた」と返ってきて。そういう話を聞くと、自分もファンのみなさんと一緒に時間を重ね、成長しているんだなと感じられますね。

――ご友人の中には一般企業に勤めている方も多いかと思いますが、古川さんは「役者」という職業を選択したことについて、周りの人と比べたり「こういう職業もいいな」と思ったりしたことはありますか?

古川: 自分の性格上、一般企業に勤めるのは絶対に無理なので、サラリーマンはできないですね。役者も安定した職業ではないので、起業するのはいいな、と思います。

「性格的に無理」というのは、自分は帰国子女なうえに世渡り上手ではないので、きっと上司と上手くやっていけないと思うんです。サラリーマンは、実力より人付き合いが上手い方が出世できる場合もありますよね。
自分は人付き合いがとても苦手で、現場でも共演者の方とはセリフ以外では話さないことが結構、あるんです。だから、やっぱりサラリーマンはできないですよね。

コロナ下で、ペーパードライバーを卒業

――この3年はコロナに振り回されましたが、古川さんはどう過ごされていましたか?

古川: 2年前の最初の緊急事態宣言で、仕事量がぐんと減ってしまいました。「自分と向き合う時間ができた」とか「今まで飲み歩いていたのが家族との時間に費やせた」とポジティブに捉えた人もいる中、自分は結構落ち込んでしまって。

だけど「このままだと時間がもったいないし、よくない」と思って、やりたかったけど手をつけていないことを始めたんです。その一つが運転。それまではペーパードライバーだったんですが、緊急事態宣言が出ていた時は街に車も人も少なかったので、1人の運転では感染リスクは無いと思って。「脱ペーパードライバー」ができました。それにゴルフ。ゴルフは外だし、打ちっぱなしなら1人でできますからね。

――最初の緊急事態宣言では、舞台は公演中止、映画は公開延期になるなどエンターテインメントも大きなダメージを受けました。最近ようやく活気が戻ってきました。

古川: 最近で言うと、この舞台ができること自体が変化ですね。最初の頃に比べて演劇ができているのがまず進歩だなと思っています。

“打ち上げ”ができるようになったら「以前に戻ったな」と思えるんでしょうけどね。作品が終わったら、みんなと打ち上げで一杯飲みたいのに、今はどの作品もクランクアップ日に「お疲れ様でした」で終わり。その後は会えなくなってしまい、人付き合いが苦手な自分でも寂しい思いもします。打ち上げができるようになれば、楽しい時代に戻ったということなんでしょうね。

――人との接触や、以前の状態に近づくことに戸惑っている人も多いようです。

古川: 以前に戻りつつあるのはうれしいんですけど、マスクをとるのが恥ずかしい人たちがいるように感じていて、少し気になります。撮影の現場などでも「顔はめったに見せません!」みたいな人が結構いるので。
自分たちのような職業にとっては、マスク生活は外出する時に楽です。芸能関係の人は、それ以前でも街中ではマスクするなど、それなりの変装をしているから、夏なんかは特に変に思われていたんですけど、今はみんなマスクをしているから、電車内で指を指されることもなくなった。そこは楽な部分ではあります。

挑戦するのにお金は少しでいい、けど…

――telling,読者の女性の中には「やりたいことがあっても一歩踏み出せない」という人も。アドバイスがあればお願いします。

古川: 自分は割と感情に左右される人間で「やりたい」と思ったら動くし、「やりたくない」と思ったらやめてしまうので、あまりいいアドバイスはできません。ただ、自分の経験を踏まえると、計画的に考えて動いた方がいい(笑)。
「一歩を踏み出せない」っていう背景の一つには、きっとお金の問題があると思うんですよね。金銭的な理由からチャレンジできない。ただ、どんなに蓄えがあっても技術がないまま別の世界に入ると、蓄えがなくなった時点で終わってしまいますよね。

「蓄えが少しでも、技術を持ってその場に入れば食べていける」という話を聞いたことがあります。例えばジャングルでの生活。サバイバルができない人なら、食べ物をたくさん持っていたとしても、無くなった時点で終わりです。でも少しの食べ物しか持っていなくても、魚を釣る方法などサバイバルスキルがあれば生き延びられる。

だから、お金は少しでいい。生きる術があれば「一歩を踏み出しても絶対大丈夫」って自分は思っています。

古川雄輝さん、「誤魔化しがきかない分、舞台は役者の技量が問われる」

●古川雄輝(ふるかわ・ゆうき)さんのプロフィール

1987年、東京都生まれ。7歳でカナダへ。11年間を海外で過ごす。慶応大学在学中の2009年に「ミスター慶應コンテスト」でグランプリ受賞。翌年『キャンパスターH★50with メンズノンノ』にて審査員特別賞を受賞し、8月に役者デビュー。主な出演作にドラマ『イタズラなKiss~Love in TOKYO』(13年)、映画「リスタートはただいまのあとで」(20年)など。8月には主演を務める映画「劇場版 ねこ物件」が公開予定。

●舞台「室温~夜の音楽~」

公演:東京の世田谷パブリックシアターで6月25日から7月10日/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで7月22日から24日
作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
演出:河原雅彦
音楽・演奏:在日ファンク
出演:古川雄輝、平野綾、坪倉由幸(我が家)、浜野謙太、長井短、堀部圭亮 / 伊藤ヨタロウ ジェントル久保田 

ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。
1989年東京生まれ、神奈川育ち。写真学校卒業後、出版社カメラマンとして勤務。現在フリーランス。
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