今だから知っておきたい!K-POPの独特すぎる推し活用語4選+α

「NiziU」や「JO1」「INI」などK-POPの文化を取り入れた日本人アイドルの流行により、K-POP文化に触れることが多くなった昨今。「チッケム見なきゃ」、「センイル企画します!」などの謎の推し活用語に出くわす人も多いのでは?そんな用語にはK-POPならではの応援方法や文化を色濃く感じさせるものがたくさん。K-POPファン歴10年になるライターが、K-POPのユニークな推し活文化を理解するための基本の4用語と関連用語を厳選して解説します。

最初に押さえたい「カムバ」

まず押さえておきたいのが、新曲を発売してK-POPアイドルが表舞台に戻ってくることを指す「カムバック」、略して「カムバ」。K-POPアイドルの活動がオンシーズンとオフシーズンとにはっきり分かれていることからこの名称で呼ばれている。

新曲を発売して活動が盛んになる「カムバ期」には、MVのティザー公開、メンバー別のコンセプト写真や動画の公開、「ショーケース」と呼ばれる新曲のお披露目会、アイドルが出演する生配信、MV公開、テレビ番組への出演、サイン会およびテレビ電話でアイドルとファンが交流する「ヨントン」と、さまざまなコンテンツが目白押し。中でもK-POPの推し活の独自性を際立たせているのが、地上派で放送されている複数の音楽番組の存在だ。K-POPの世界ではどれだけCDやデジタル音源が売れたかという単純な記録以上に、複数の指標で総合的にランキングを決める音楽番組での1位獲得が大衆人気の証として重視されており、いつまでも1位が獲れないと活動休止や解散に追い込まれてしまうとも囁かれている。そのため、特定のグループやメンバーのファンの集まりである「ファンダム」は音楽番組ごとに異なるランキングの算出基準を分析し、CDや音源の購入以外にも「スミン」と呼ばれるYouTubeおよび音楽ストリーミングサービスでの再生や、番組へのWeb投票などを呼びかけあう。カムバに伴う多種多様なコンテンツが「供給」される中で音楽番組のための推し活をするため、カムバ期のファンからは「スマホとPCの2台でスミンしたり、ヨントン応募のためにCD買ったり、音楽番組に投票したりで忙しくて供給に追いつかない。1位を争うライバルのファンダムも強いから気が抜けないし……」といった声がよく聞こえてくる。

ファンとアイドルの絆も!

握手会や特典を得る目的で“積む”というCDを複数枚買う行為は、日本のアイドル文化でもよく聞く話だ。K-POPでもサイン会やヨントンの抽選に当選したいがために、CDを積むファンも多い。それは、お金がものをいう世界でもある。しかしK-POPの音楽番組で1位を獲得するには、お金だけの力では不可能に近い。ファンの時間と労力が費やされてこそ、好成績が残せる。だからこそ、ファンにとって音楽番組で1位を獲得させることはアイドルへの最高のプレゼントであり、これからも活動し続けてほしいという意思表示でもあると思う。音楽番組当日が誕生日のメンバーがいれば「1位をプレゼントしよう」、兵役に入り活動休止直前のメンバーがいれば「入隊前最後のカムバだから1位を獲らせてあげよう」という呼びかけがあるのもそのためだ。そんな「自分たちが1位を獲らせてあげなきゃ!」という愛情から忙しく活動するファンの苦労や思いをよくわかっているからこそ、アイドルも悲願の1位を獲得できたときはファンへの感謝で涙を流すことも多い。そのアイドルを見てファンもまた涙する。ファンとアイドルの絆が一層深まるのがカムバ期だといえるかもしれない。

Getty Images(1枚目も)

「掛け声」で試されるのは…

カムバ期やライブに欠かせないのが、K-POPならではの応援法である「掛け声」。表題曲に対して事務所作成の公式の掛け声が周知され、ファンは完璧に覚えて音楽番組やライブに挑む。

「掛け声」は新曲公開と同時にファンに周知される。ファンは音楽番組の収録やライブまでに各自練習を積み、本番では一糸乱れぬコールでファン心を示す。掛け声の内容は、メンバーの名前の列挙、グループ名、曲名、歌詞の一部分を引用した合いの手などが多いが、時にはハモりやコーラスが求められる高度な掛け声も!以前はファンが自作で掛け声練習動画をYouTubeなどにアップすることが主流だったが、最近ではアイドル自身が掛け声を指南してくれる公式動画をアップする事務所もある。

日本のアイドルの応援でも有志作成の「コール」が用いられて曲を盛り上げることは昔から多々あるが、曲調にかかわらずすべての表題曲に必ず事務所が公式掛け声を設定する力の入れようはK-POPならではの文化ではないかと思う。この文化に馴染みがない日本人にとっては「パフォーマンスだけに集中したいのに」、「バラードにまで掛け声があるなんて……」とカルチャーショックを受けることも多いが、コロナ禍の無観客収録の音楽番組やオンラインコンサートでさえも別録りしたファンの掛け声がわざわざ被せられるほど重要視されているので無視できない文化。アイドル達も「大きな掛け声ありがとうございます!」なんて言ってくるので、結局は頑張って覚えちゃう人も多いのだ。メンバー名の掛け声は、芸名があるメンバーでも外国人メンバー以外はなぜか本名のフルネームのことが多く、メンバー名が多いグループだと前奏中や間奏中にまるで早口言葉のようにメンバー名を列挙しないといけないし、暗記力も問われる。ここでも、ファンの愛は存分に試されるのだ。

韓国語で誕生日の意味の「センイル」。ファンにとっては推しの誕生日を祝う一大イベント用語でもある。

年に一度の推しの誕生日、「センイル」。ファンダムが中心になって、お祝いの「広告出稿」をしたり、カフェとコラボしてメンバーの写真などが印刷されたカップホルダー、通称「カプホ」を配布したり、Twitter上で共通のハッシュタグをつけて一斉にツイートするタグイベント、通称「タグイベ」を開催したりと大忙し。広告出稿ではファン達がお金を出しあい、ソウル市内の駅貼りやビルボードだけでなく、日本の各都市のビジョン、ニューヨークのタイムズスクエアなどでお祝い動画を放映したり、タワーの色をメンバーカラーに点灯したりするなど大規模なものも。そんなファン達の気持ちに応え、広告出稿場所にメンバーが出向き写真を撮る「認証ショット」SNS上に公開することも多い。こういった有志のファンによる広告出稿は日本のアイドルの応援でも見られるようになってきている。どこかの企業の広告でもないのにアイドルのポスターが駅に貼られていたら、ファンによるお祝いや応援の企画かも?

Getty Images

FanCamとチッケムは同義

歌番組やライブにおいて特定のメンバーだけを追ったカメラ映像、「チッケム」。全体映像では見られない特定メンバーの細かい動きまで鑑賞できる、人気のコンテンツ。

K-POPでは2000年代中盤頃からファンが推しメンバーにフォーカスしたパフォーマンス動画「チッケム」を独自に編集してYouTubeなどにアップするファン文化が浸透しており、非公式ながら人気コンテンツになっていた。その影響を受け、2014年頃からテレビ局、続いて事務所が公式チッケムを出すように。さらに、コロナ禍でのオンラインコンサートでも全体映像のオプションとして各個人のチッケムの発売も行われるようになっている。

YouTubeでの動画再生数でメンバーの人気や注目度が如実に表れるシビアな面もあり、最近ではK-POP全体のチッケムの再生回数ランキングなども作成されるようになってきている。メンバーのチッケムの再生回数が他のメンバーよりも多いと、次の新曲でのパート割りでメインになる秒数、通称「分量」が増えることもあるとかないとか。そのため、「推しの新曲の分量が少なすぎるからチッケム回し頑張ろう!」というチッケムの複数再生を呼びかけるファンの声も時々聞く。また、推しのセンイルに向けて「センイルに●●万回再生をプレゼントしよう!」という企画が立ち上がることもあり、ここでもファンの推しへの愛が見てとれる。

公式のチッケムが浸透する以前は、ファンが推しのパフォーマンスを直接自分のカメラで撮影し、動画サイトにアップロードした動画のことを「FacCam」と呼ぶことが多かったが、事務所や音楽番組の公式が出す動画でも「曲名+メンバー名+Fancam」でチッケムの投稿があるため、FanCamとチッケムは同義と捉える傾向にある。

日本のアイドルの動画でも「マルチアングル」、「推しカメラ」、「Chasing Camera」といった名称で、以前よりも積極的に特定メンバーにフォーカスした動画が展開されるようになってきている。この傾向は、どのファンにとっても大歓迎ではないだろうか。分量が少ないメンバーにとってはメインパート以外の細かな動きをファンに見てもらえるいいチャンスだし、ファンにとっては歌パートが少ないダンスが得意なメンバーのダンススキルを拝めたり、全体を写すカメラには写らない素敵な表情やメンバー同士のアイコンタクトなどを発見できたりする、まるで宝の山のよう。「なにげなく見たチッケムで新たな推しができた」という声もよく聞く。その分、アイドルにとっては自分のパート以外でも気が抜けないことは大変なのだが……。

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K-POPを発展させた“好循環”

カムバ、掛け声、センイル、チッケム……。ここで挙げた独特なK-POPのファン文化は、お金だけでなく手間暇かけたファンの愛から生まれたり、支えられたりしていることが共通している。そして、ファン達の自主的な活動から公式的な文化になったものが多いのも特徴だ。例えば掛け声は、有志のファンがつくったものがファンダムで支持されて、流行による乱立を統一するために事務所が公式版をつくりだしたことが始まりだし、チッケムもファン自作のチッケムにより新たなファンを獲得していることからテレビ局や事務所が取り入れだした。センイル広告も、ファンだけでなく企業がK-POPファンを囲い込むための投票コンテンツとして利用する例も出てきた。日本人からすると、著作権は?肖像権は?と気になってしまう推し活が多いことも事実だが、ファン発案の文化を排除せず、ファン拡大に寄与したものはどんどん事務所や企業が公式に取り入れ、さらにファン拡大につなげるという好循環がK-POPを発展させたのも事実だと思う。「自分たちがアイドルを輝かせてあげないと!」というファン達の深い愛と、ファンから学び進化していくK-POP独特の推し活文化。日本のエンタメ業界にも取り入れだされてきている今、ますます目が離せない。

広告代理店で約10年間、コピーライター、プランナーとして企業や商品のブランディングに携わり、各種企画、コピーライティング、ディレクション業務を担当。独立後は大阪を拠点に全国とつながり、ブランディングやコピーライティングの他に、インタビュー記事の執筆、プレスリリースの作成、プロモーション企画の立案など幅広く活動。作詞、脚本にも挑戦中。

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