100人中10人が童貞・処女のミレニアル世代 その社会的背景とは
●ミレニアル世代の性
セックス未経験者の特徴
東京大学大学院医学系研究科の調査で、年齢別の性交渉未経験者のデータが発表されました。30歳~34歳の約12%、35歳~39歳の約9%がセックス未経験者という結果が出ました。
この調査の責任者の東京大学大学院医学系研究科の客員研究員の上田ピーターさんは、25歳から39歳の男女の社会的要因を解析したところ興味深いことがわかったと言います。
「男性の場合、正社員とパートタイムもしくは非正規雇用の人を比べたところ、後者の童貞率が4倍でした。さらに無職の人になると8倍になりました。」
男性において、収入が高ければ高いほど、セックス経験率が上がっています。年収が最も低い「0円~99万円」の人は、年収が最も高い「800万円以上」の人と比較して童貞率が20倍です。
女性では年収「0円~99万円」の人が最もセックス経験率が高いという結果に。結婚や出産を経験したことで一時的に年収が下がっていたり、専業主婦になって収入がなかったりするケースが考えられますが、収入や雇用形態との関連性においてはどちらが先かわからないのが現実です。
セックス未経験者と少子化の関連性
調査データから、セックス経験の有無は年収や社会的地位に関連性があることがわかりました。その一方で、ピーターさんは日本では引きこもりの問題もなどもあるため、収入以前の問題も関係していそうだと推測します。
国内では、生涯独身率や晩婚化、少子化が潮流となっています。その現象とセックス未経験者数の増加は関連があるのでしょうか。
「性交渉未経験者の割合が高かったら少子化につながる可能性が高くなると言えますが、性経験の割合が高くなったからといって出生率がより高くなるとは言い難いです」
ピーターさんは、性経験はほぼ必要条件ではあるが、十分条件ではない」と言います。
収入や社会的地位だけではない複雑な要因
ピーターさんは、スウェーデンの父親と日本人の母親との間に生まれ、生まれも育ちもスウェーデン。母国では、同棲や事実婚が法律婚とあまり変わらないそうです。そのため、結婚をして籍を入れる人は多くはないと言います。
「日本の概念と大きく異なりますが、スウェーデンでは日本のように、結婚してから妊娠、出産というステップを踏むことは少ないです。子供ができても結婚する必要はないですし、パートナーと別れることになっても、『子育てパートナー』として子育てをシェアしながら関係を続けることが多いです。それが社会的に問題視されることもないです」
100人に10人は童貞・処女の日本社会。そこには年収や社会的地位だけでは見えてこない背景があるとピーターさんは考えます。引き続き、日本のミレニアル世代の性について研究をしていく予定と話します。
「性交渉未経験の背景には、コミュニケーションが苦手だったり、親の介護をして恋愛する時間がなかったり、個々のケースがあると思います。理由を探るのは複雑ですが、今後この課題について研究を進めることができたらと思っています」