比嘉愛未さん、映画『吟ずる者たち』で故郷で酒造りに目覚める女性を演じる 「自分が良い縁を引き寄せるかが大切」

日本酒造りが盛んな広島で、初めて吟醸酒を造った広島の杜氏の手記などに影響を受け、酒造りの道に進む決心をする女性を描いた映画『吟ずる者たち』が3月25日から全国で順次公開。主役の永峰明日香を演じるのは、女優の比嘉愛未さん。映画の見どころや、役を通して感じたことなどを聞きました。
比嘉愛未さん、映画『吟ずる者たち』で主演 30代になってから「固定観念がどんどんはずれて楽になった」

日本酒のありがたさを、改めて

――『吟ずる者たち』は、明治から令和と時を経て日本酒造りの想いをつなぐ人々の姿を描いた物語です。東京で夢破れ、故郷の広島に帰ってきた明日香もやがて、日本酒造りの魅力にとりつかれます。どんな気持ちで撮影に臨みましたか。

比嘉愛未(以下、比嘉): 「この役はこうあらねば」と考えたり、自分が台本を読んだときの感情に縛られたりしたくないと私は思っていました。なので、監督やスタッフと話し合いながら、シーンごとにその場に立った明日香としての感覚を大事に演じたいと考えていました。明日香が東京から出戻り、一番気分が落ちてしまったところから、自分なりの人生の道筋を少しずつ見つけていくというところは、丁寧に演じましたね。

――比嘉さんが演じた明日香は、杜氏として新たな吟醸酒を造ろうと奮闘します。撮影の前と後で、お酒に対する印象は変わりましたか?

比嘉: 元々お酒は好きです。今回、日本酒造りを一から体験させていただいたので、杜氏のみなさんが手間暇かけて造っていらっしゃることを深く知ることができ「ありがとうございます」「いただきます」という気持ちでお酒をいただこうという思いが強くなりました。

憧れながら背中を追ったのは…

――日本酒造りを体験して、学んだことがあれば教えてください。

比嘉: 私が体験させていただいて思ったのは「純米大吟醸と純米吟醸酒は何が違うのか」「日本酒をゼロから造る工程を知っている人が、私の年代でどれくらいいるのだろうか」といったことでした。映画でも描かれていますが、酒造りに欠かせない麹菌は“生き物”。だから、思っている以上にうまくいかないことも。それに向き合う精神も、役を通して学ぶことができました。

――本作は、明治時代に日本で初めて吟醸酒を造った広島の杜氏・三浦仙三郎の生きる明治時代と、明日香たちが生きる令和の二つの時間軸で物語は進んでいきますが、明治時代のパートはどう感じられましたか?

比嘉: 今回、明治時代のパートと撮影が重なることはなかったので、三浦仙三郎を演じた中村俊介さんと現場でご一緒できたのは一度だけ。明治時代の酒造りは現代とは違うやり方で準備することも多いですし、制限もある過酷な状況の中での撮影は大変だったと思います。明日香役の私としては、仙三郎の手記などから、その奮起する姿に影響を受け、憧れながらその背中を追っていったような感じで演じていました。

「覚悟を持って進む人は、絶対大丈夫」

――東京での仕事を辞めて地元・広島に戻り、家業の酒蔵を継ぐことを決めた明日香の決断について、比嘉さんはどう思われますか?

比嘉: どの仕事でも覚悟を持って進む人は絶対に大丈夫だと思います。覚悟って自分でしか決められないですし、自分のペースで切り開いていくのが人生。その覚悟と決心をした明日香のことをすごく素敵だなと思います。

――覚悟を決めるまでの不安を払拭できたのは、何がきっかけになったと思われますか。

比嘉: 「縁」だと思います。明日香は偶然にも仙三郎の書物を発見して、そこから少しずつ世界が広がっていって。仙三郎と会ったことはないけれど、私は明日香が引き寄せた必然的な縁だと思っています。
きっとみなさんも、見えないところで縁が通じることってあると思うんです。そのご縁から色々なことを学ぶことが、自分なりの決心や覚悟につながっていくんじゃないかな。
それに「あなたはこうしなさい」って誰かに答えを与えられるよりは、自分で模索して苦しんだ上で導かれていく過程が大事だと思います。そのためにも、どれだけ自分が良い縁を引き寄せるかが大切ですよね。

次に飛び立てるようになった時のために!

――改めて、映画の見どころを教えてください。

比嘉: この映画には、今の時代に通じるメッセージがあると思うんです。何かと耐えなければいけない事が多い時代ですが、ただ止まっているのではなく、次に飛び立てるようになった時のために、今は百回試して千回改める「百試千改」の気持ちで必死に耐え忍ぶ。その強さを、私は仙三郎さんから教わりました。どんなに辛く大変な時でも、自分の道を切り開いていく強さを持った仙三郎さんの姿を通して、この映画を観てくださる一人一人へのエールになったらいいなと思っています。



比嘉愛未さん、映画『吟ずる者たち』で主演 30代になってから「固定観念がどんどんはずれて楽になった」

●比嘉愛未(ひが・まなみ)さんのプロフィール

1986 年、沖縄県生まれ。2005年、映画『ニライカナイからの手紙』で女優デビュー。NHK朝の連続テレビ小説「どんど晴れ」(07)でヒロインを演じる。主な出演作に、映画「飛べ!ダコタ」(13)、「カノン」(16)、「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」(18)、「大綱引の恋」(20)、 ドラマでは朝の連続テレビ小説「なつぞら」(19)、「にぶんのいち夫婦」「推しの王子様」(21)、「日本沈没-希望のひと-」(21)など。

 ヘアメイク: Seiichi Okuharasuzukioffice)/スタイリスト:後藤仁子

■吟ずる者たち

監督:油谷誠至、脚本:仁瀬由深、安井国穂
出演:比嘉愛未/戸田菜穂 渋谷天外 ひろみどり 今井れん 中尾暘樹  中村久美 奥村知史/丘みつ子/大和田獏/中村俊介
配給:ヴァンブック 
3月25日(金) シネ・リーブル池袋ほか全国で順次(広島では2021年11月5日より先行上映)
©2021 ヴァンブック

ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。
カメラマン。1981年新潟生まれ。大学で社会学を学んだのち、写真の道へ。出版社の写真部勤務を経て2009年からフリーランス活動開始。

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