男性社会への抵抗は、「女の子写真」とくくられた 金沢21美で展示
男性中心の価値観や、古いジェンダー感覚を揺さぶるような写真や絵画、オブジェ――。フェミニズムをめぐる二つの企画展が、金沢21世紀美術館(金沢市広坂1丁目)で開かれている。現代作家がそれぞれの問題意識から生み出すアートを、女性学のまなざしで読み解く試みだ。
「ぎこちない会話への対応策―第三波フェミニズムの視点で」を構成したのは、アーティストの長島有里枝さん。大学在学中の1993年、自分と家族がヌードになり日常を再現した写真でデビューした。その活動は、同時代に頭角を現したヒロミックスさんらとともに、「女の子写真」とくくられ、評された。
■長島有里枝さんが選んだ「こっち側の人」
自分がフェミニストだと意識しないまま、フェミニズムにつながる作品をつくっていた、という長島さん。10年前、大学院に入ってフェミニズムを学んだ。女性写真家の潮流について検証し、昨年出した著書「『僕ら』の『女の子写真』からわたしたちのガーリーフォトへ」にまとめている。
企画展では、男女にかかわらず長島さんが「こっち側の人」と考える、9人の作家の作品を選んだ。自身のデビュー作「Self―Portrait」と同じ展示室には、木村友紀さんの「存在の隠れ家」を並べた。体のパーツを撮影し、性を暗示する形に切り抜いた5点組みの作品だ。
90年代、女性が自らを撮ったこの二つの作品は「当時のヘアヌードブームなど、女性の身体を消費する男性社会の構造に対抗する表現だった」と長島さんはいう。
傍らに、裸で顔だけを赤い布で覆った男性の写真も展示した。結婚の際、女性の顔を隠す中国の風習に着想を得たという、潘逸舟(はんいしゅ)さんのセルフヌードだ。
■ジェンダーギャップ 感覚と現実の溝に
もう一つの「フェミニズムズ/FEMINISMS」展は、21美の学芸員の高橋律子さんが担当した。身体と内面の関係や性差、性愛などに向き合う作家、9人を紹介している。
青木千絵さんが、漆を使って造形する「BODY」は丸みを帯びた人体だ。男女を意識せず、「中性的な身体を用いて自分の中の違和感を表現した」という。肌もあらわな姿でほほ笑む男性像は、木村了子さんの「イケメン画」。古くからある「美人画」の対象を、男性に置き換えて描く。
いま、多様な性のあり方が当たり前になる半面、指数などが示す日本のジェンダーギャップは大きい、と高橋さん。「この感覚と現実の溝を埋めるものは何か、展覧会を見て考えてもらえるとうれしい」
来年3月13日まで、月曜と年末年始など休み(11月22日、1月3、10日は開場)。料金は2展共通で一般1200円、大学生800円、小中高生400円、65歳以上千円。日時指定のウェブチケットも販売している。問い合わせは美術館(076・220・2800)。
(朝日新聞社)朝日新聞デジタル2021年11月12日掲載