音信不通の彼氏、回避型愛着スタイルかも。精神科医・岡田尊司さんに聞く対処法は

好きな人と交際まで発展したのに、突然、相手から音信不通にされたり、浮気をされたり……。恋人のことを大切にしない男性は、そもそも人との信頼関係を結ぶのが難しいタイプという指摘もあります。そんな男性と、どう付き合えばいいのか――。『愛着障害の克服』(光文社)などの著書があり、9月に『マンガでわかるパーソナリティ障害』(同)を出版した精神科医の岡田尊司さんに聞きました。

精神科医の岡田尊司さん

人との絆が希薄な「回避型愛着スタイル」

パートナーなど大切な人に対して、親密な関係を結び、長期的に楽しく付き合える人がいるのに、対人関係が不安定で長続きしない人がいます。実際、交際中に突然音信不通になったり、浮気をしたりしてパートナーや恋人を蔑ろにする人もいますよね。原因は、その人の愛着スタイルによるものだと考えられます。

愛着スタイルとは心理学・生物学的な特性のことで、人との親密な関係を好むか、人付き合いが苦手か、一人でいることが好きか――など他者との関係をどう形成するかの傾向を指します。愛着スタイルを決めるのは遺伝要因も一部はありますが、ほとんどが環境要因。特に幼い頃の養育環境が影響しているとされています。

愛着スタイルが安定している人は、自己開示をして他者との信頼関係を育み、親密になることができる。一方で、愛着スタイルが不安定な人は、対人関係が表面的になりがちで、親密になっても長続きしません。小さい時の経験などから、大人になっても自分の意見や感情を表すことにブレーキをかけてしまうのです。
不安定な人の中にも、人との感情的な親密さを避ける「回避型」や、人間関係に対して心配や不安を強く感じる「不安型」、その二つが混ざった「恐れ・回避型」など様々なパターンがあります。

このうち、パートナーを蔑ろにする人は、回避型の愛着スタイルだと考えられます。誰に対しても自分の心中を明かさず、相手から好意を寄せられてもそっけない態度をしがち。誰かと一緒に過ごすことに興味がないわけではありませんが、基本的に一人で過ごすほうが気楽と感じるのです。人と一緒にいるには、相当な努力と苦労が必要で、情緒的なつながりを避けたり、責任を負うことを嫌ったりします。

昨今、世界的に回避型の人が増えていると言われており、ヨーロッパの調査では若者の3割程度との研究結果もあるほどです。日本にも同じくらいか、もっといるかもしれません。

愛情を注げばつながれる「回避性」、絆を結ぶのが難しい「自己愛性」

愛着スタイルが「回避型」と一口に言っても、「パーソナリティ」が違えば、全く違った性格になります。パーソナリティとは愛着に基づいて、社会の中でどのような生存戦略をとるか規定するもの、つまり人格のことです。

消極的に現状維持をしたり、危険を回避しようしたりする人は「回避性パーソナリティ障害」(回避性)という人格にカテゴライズされます。「自分みたいな人間はどうせ愛されない」「自分のような人間と一緒にいてもらうなんて申し訳ない」と遠慮して自ら引いてしまうので、安定した関係を構築しにくい。
自分に自信がなく、傷つくことを恐れ、人付き合いを回避してしまうのです。そんな人は安心できる状況で愛情を確信できれば、不安が解消されます。だから、パートナーから「あなたのことが好き」と積極的に言われ続けると、絆を深めることもできるのです。

一方で、「自己愛性パーソナリティ障害」(自己愛性)の傾向が強い場合は、絆を結ぶのが難しい。
自己愛性の人は一見、華やかで自信たっぷり、行動力があり、能力も高いので人を惹き付けます。その実、自分を特別視し、周囲を見下すことで、自分を守ろうとすると同時に、傷つくことには敏感、他者からの非難や指摘は受け入れようとしない――といった特徴があります。恐れ・回避型で自己愛性の人は、その尊大さの一方で劣等感や見捨てられ不安が同居し、感情が不安定になりやすい。第一印象は魅力的ですが、人との安定した関係が築けないので、突然どこかへ行ってしまうといったことも。

例えば何度も食事に行ったり、交際を始めたりするなどの関係になっていたとしても、いきなり連絡が取れなくなる。そうした扱いをされた女性側は、何が起きたか分からないまま、自分を責めたり落ち込んだりするかもしれません。でも、悪いことをしたというわけではありません。
情緒的な束縛や責任から自由でいたい回避型で自己愛性の人の場合は、親密さを避ける行動に出ているだけです。

このタイプと結婚している女性には、男性の自己愛を刺激するようなものを持っているケースが多いです。例えば、家柄や学歴が高かったり、美人だったり、お金持ちだったりといった自慢できる要素を持っている場合ですね。
残念ながら、そこに本当の絆があるわけではありません。結婚後も男性は浮気をするでしょう。仮に浮気をしなかったとしても、本当の意味で気持ちを共有できてはいません。こうした共感力がなく無神経にも見えるパートナーの場合は、自らが疲弊し、精神的なサポートが必要となる「カサンドラ症候群」になることも多々あります。

自己愛性で回避型の彼と長い付き合いをするのは、リスクが高すぎるので、私はあまりおすすめしません。

別れを切り出すのは危険。つらい気持ちを話してみて

これまでお話ししたように、回避型の人というのは、情緒的な束縛や責任を避けるために、人と親密な関係になることを回避します。だから恋人と突然、連絡を取らなくなることがあるんですね。一方、恐れ・回避型の場合は、傷つくことを恐れている。でも、本当は求めているので、誠意と愛情を示し続けると、次第に安定した関係になる場合もあります。

より難しいのは回避型。クールで、執着しない彼に対して、どう対応すればいいか、悩む人も多いでしょう。
元も子もないですが「あなたが、その相手にこだわらないのが一番いい」と私は思います。無理にしがみつこうとしたり、一緒になろうとしたりすれば、空しい思いをして余計にあなたが傷つくことになるからです。
もし彼にこだわるなら、連絡が取れなくなっても、しばらく待ってあげるくらいの余裕を持つこと。騒げば騒ぐほど、面倒くさがられるだけです。

回避型の人は、相手の気持ちにまで気が回らない。だから女性側が一生懸命考えても疲弊する一方です。一度の音信不通に耐えた後、良好な関係に戻ったとしても、自分の都合次第で、また連絡の遮断を繰り返したり。どうしても付き合いたいのなら、それなりの覚悟が必要です。
変化を嫌って現状維持をしたがるのも、回避型の人の特徴です。つまり、わざわざ別れるのも面倒。そのため積極的に別れようとはしないんですね。
だからといって、彼が変わってくれることを期待し、駆け引きのつもりで別れを切り出すのはリスキー。結婚していたり、2人の間に子どもがいたりする場合なら、「捨てられたら困る」と、あなたに再度、接近してくるかもしれませんが、恋人の段階だと、そのまま別れることになるケースが多い。回避型の人は、話し合って問題に向き合うということが、そもそも苦手なので、すんなり別れを受け入れてしまうのです。

しかも回避型の人は他人の痛みやさみしさにまで気が回らない。人への愛着も薄く、離れることへの痛みも感じにくいのです。
だから、駆け引きで別れ話をするより、彼を教育するつもりで「どれだけ私がつらい思いをしたか」を伝える方がいいと思います。大切なパートナーから「連絡が来なくなるとつらい」と切々と訴えられれば、共感はできなくても理解はできるはず。繰り返される音信不通に苦しんでいるのなら、一度、話してみるといいでしょう。

蔑ろにされてつらい思いをしている側が、「いつか関係が、終わっちゃうんじゃないか」との危機感を抱き、「あなたはきっと回避型だよ」などと本人に伝える。そしてお互いの関係を改善していこう、と提案する――。そうしてクリニックを受診する人も、最近は増えています。

そもそも回避型の人は話し合ったり、問題と向き合ったりすることを避けたがる。でも、関係を維持したいとの思いが本人にあれば何とかしようとするもの。パートナーや恋人に愛想をつかれそうになって重い腰を上げるケースが多いように感じますね。

音信不通の彼にはまってしまう、あなたの愛着も不安定かも

そもそも、人との関係というのは本来、片方が思いを寄せれば、一方から反応や思いが返ってくる“応答性”の中で強くなっていくものです。

しかし、相手から反応がないことによって逆に気持ちが盛り上がってしまうとしたら、愛着スタイルが不安型のせいかも。こうしたタイプは、突然連絡が来なくなったら何度でも連絡をし、過剰なまでに応答を求めようとします。不安型の女性は、音信不通の彼にヤキモキし、自分から深みに陥ってしまいます。自分の支えとなるものを他人に求めているようなところがあり、自分の中の理想像を、すぐ相手に投影してしまう。
だから、騙されやすい。魅力的だったり、押しが強かったりする男性が現れると、すぐに「理想の相手だ」という気持ちになってしまう。突然連絡が途絶えた段階で見切りをつけられればいいのですが、不安型の人の中では彼に対する理想化が続いてしまうんですね。不安型の人が抱えている“見捨てられ不安”も刺激され、さらに相手を求めるようになり、どんどんハマってしまうわけです。

これら不安型は、相手の顔色を伺い、自分にとって害のある人にまで迎合してしまいがちな「依存性パーソナリティ障害」、または、気分や対人関係が両極端に動いたり、自己否定が強く自分を傷つける言動をしたりする「境界性パーソナリティ障害」の傾向がある人が多いです。

愛着を安定させていい人間関係をつくるためには

人に振り回されないようにするには、自分自身が変わるしかありません。
私のおすすめは、犬や猫、小動物などペットを飼って世話をすること。動物をかわいがったり大切にしたりする中で、自分自身を大切にするという感覚も身についてくるからです。大切にされないのは、おかしいことなんだと肌で分かるようになってくるんですね。
また、自分のことを振り返る力が、愛着を安定させるために大切だと言われています。例えば、日記やブログなどで、自分のことを書いてみる。自分の中の欠けているところやドロドロしている本音の部分も文字にする。すると、自身を客観視できるようになっていく。そして自分にとって本当に必要なものが何なのか、段々分かるようになってくるのです。

●岡田尊司さんのプロフィール

岡田クリニック院長。京都大学医学部卒業後、京都医療少年院、京都府立洛南病院などに勤務。現在はパーソナリティ障害の臨床に取り組んでおり、メディア出演実績も多数。

『マンガでわかるパーソナリティ障害』

著者:岡田尊司(監修)/松本耳子(漫画)
発行:光文社
価格:1,320円(税込み)

1989年、東京生まれ。香川・滋賀で新聞記者、紙面編集者を経て、2020年3月からtelling,編集部。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理、銭湯。