上京した女性が感じる東京と地方「地元の友達とは、結婚・出産の話題ばかりになることも」

厚生労働省の人口動態統計月報年計(2020年)によると、女性の平均初婚年齢で東京都は全国で唯一、30代の30.4歳。地方で生まれ育ち、進学や就職などを機に東京に移り住んだ女性たちの多くが、結婚・出産やキャリアへの向き合い方などをめぐり、地元の友達とのズレを感じているようだ。東京で働く女性たちの思いを聞いた。

地元の友達は8割既婚、結婚願望はあるけど…

「地元で友達と集まった時に、子どもの話題になるとついていけないですね」
そう話すのは東京・池袋にある不動産会社・ランドネットで広報を担当する山崎静香さん(33)だ。北海道網走市の小さな町で生まれ育ち、芸能界入りを目指して2008年、20歳で上京した。東京で音楽活動やレースクイーンの仕事などに励んでいたが、30歳を前に将来が不安になり、同社に就職。会社の広報を3年前、1人で立ち上げた。

会社は入社当時の150人から社員400人規模にまで成長。試行錯誤しながらリリース発信や社内報運営、動画制作などに取り組んできた山崎さんは現在も多忙を極める。テレワークや午後休など柔軟な働き方ができているためプライベートは充実しているが、コロナ禍で出会いの機会は極端に減った。結婚や出産願望はあり、「出産には、リミットの年齢があるので、そろそろ考えなきゃいけないと思ってるんですけどね」と話す。

インスタグラムやフェイスブックには、北海道の友人の近況がアップされている。家族の写真などを見て、「幸せそうで、うらやましい」と思うこともある。年に2~3回の帰省では、幼稚園や小学校、高校の同級生と集まるが、8割が既婚だ。女友達に限ると、全員結婚しているという。「授乳や離乳食など、子どもの話になることもあって、全然ついていけなくて……。独身を否定されたり、見下されたりしたことはないけど、何を話したらいいのか悩みますね」
仕事に一生懸命な山崎さんだが、地元の友達に話すのは気が引けるという。「知識をひけらかしたり、自慢したりしてるように思われたら嫌だから。仕事のことは、東京にいる友達に話すことが多いです」

そんな状況をどう捉えているのか。「お互いの生き方を尊重し合えれば、良い関係が築けるんじゃないかな。幸せそうに見えても、それぞれに悩みがあるはずだし、彼女たちには逆に、私が独身を謳歌してるように見えると思う。環境が変わって話題が合わなくなっても、大切な友達はずっと大切なままです」

東京の人は結婚より仕事にフォーカスしてる

都市と地方で流れるスピードの違い――。それは次第に友人間の仕事や結婚に対する考え方の相違すら、生んでしまう。

「地元の友達は結婚や育児の話ばかりで、相づちを打つことしかできなかった時もありました」
東京のIT会社に勤務する田口美優さん(仮名・29)も、そう話す。田口さんは大学卒業後、地元・愛知県の大手アパレル会社に就職し、営業事務として働いていた。職場の雰囲気は良く、仕事も楽しかったが、「もっと頑張れるかもしれない」と転職を決意。2019年1月に上京し、今の会社で働き始めた。
転職する前には葛藤もあった。地元の友達は結婚や出産などのライフイベントを迎え、マイホームを購入している人もいた。「結婚についても考えなきゃならないアラサーというタイミングで、仕事ばかりしていて大丈夫かな」と不安になったという。
ただ今は、「東京に来なければできなかった仕事や、出会えなかった人たちがいる」と満足している。
年に数回の帰省時は、高校の同級生や前職の同僚と集まる。同級生6人は全員、前職の同期の女性は12人中9人が、既婚者だ。結婚式の準備が話題に上った時は「結婚相手がいて、いいな」とうらやましくなり、「一緒に旅行に行ったり、合コンに行ったりすることは、もうできないのか」とさみしさを感じることもある。
そんな田口さんの支えになっているのは、恋愛の話で盛り上がることが多い東京に住む中学時代の独身の同級生2人だ。職場の同僚も、20代後半の女性たちはほとんどが未婚。「『30歳くらいまでには』と思ってる人が多いように感じますが、東京の人たちは結婚よりも仕事にフォーカスしている気がします」
田口さん自身、結婚への焦りはないのか。「子どもを産みたいし、周りが結婚していってるから、『そろそろ自分も』という思いはありますね。ただ、焦っても仕方がないので……『30歳までは仕事に没頭する』と決めたので、不安は感じなくなりました」

東京は選択肢が多い。結婚への焦りはありません

厚労省の「賃金構造基本統計調査」(20年)によると、東京都の会社員の月収は37万3600円と、全国の30万7700円を大きく上回る。大手企業の本社が集中する東京は、全国各地から多様な人が集まり、転職や異業種との交流も盛んだ。飲食店や文化芸術施設なども充実している。むろん、都市と地方はそれぞれに“良さ”があり、コロナ禍でリモートワークが広がり、地方移住を考えている人も増えている。しかし、都会の華やかさや利便性に惹かれる人は多い。

「今が楽しいから、結婚はまだ考えなくていいかな」と話すのは、ご祝儀袋などの製造会社マルアイの清水友乃さん(25)。生まれも育ちも山梨県の清水さんは、昨年3月に東京に来たばかり。山梨の本社で4年間、工場のオペレーターとして働いていたが、「もっと人と関わる仕事を」と社内公募に応募して上京。「仕事を頑張りたい」と現在、婚活はしていないという。
山梨に住む友達は、半数くらいが既婚。「独身の友達と時々『私たち遅いのかな』って話すこともあります。あと数年で結婚や出産が果たしてできるのだろうか?と不安になることも、たまに」
それでも「結婚への焦りはない」と、清水さんはきっぱり。「東京にいる友達は、みんな結婚してないんです。東京は地方と違って“誘惑”が多いというか……たくさんの人や情報に出会えるから生き方の選択肢が多いように感じますね。転職してやりたいことを実現している同世代の女性もたくさんいますし。友達と過ごしたり、仕事を頑張ったりしてる今が楽しいから、結婚への焦りはそんなにないかな」

●取材協力…株式会社スーパーソフトウエア

1989年、東京生まれ。不登校・高校中退から高卒認定を取得し大学へ。新聞の記者・編集者を経て、2020年3月からtelling,編集部。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理。