自分を変える、旅をしよう。

旅で気づいた人生の選択。探すべきは「全て満たされる楽園」ではない(前編)

旅によって人生が変わった人や、旅を通した生き方をリーマントラベラーの東松寛文さんが紹介する「自分を変える、旅をしよう。」。22回目に登場するのは、大学勤務の有本佳那子さん。前編では、小学生の頃から初めて自分の殻を破ってアメリカに滞在した話まで、旅にハマるまでの経緯をうかがいました。

●自分を変える、旅をしよう。22・前編 有本佳那子(33)

リーマントラベラーの東松寛文です!今回お話をうかがうのは、大学勤務の有本佳那子さん。保守的な考え方と冒険心、2つの気持ちのバランスを取りながら生きていたという有本さんが、旅に目覚めた理由を聞いてみたいと思います。

東松寛文(以下、――): 有本さんはこれまで、16カ国、34都市を旅しているそうですね。旅にハマる前は、どんな考え方をしていたのですか?

有本佳那子さん(以下、有本): 私は田舎で生まれ育ち、保守的な環境の中にいたこともあって、幼い頃から周りの目を気にして過ごしてきました。それが影響して、大人になっても「型にはまる」という暗黙の掟を徹底的に守ることに必死でした。一方で、周りには見せないけれど心に熱い情熱を秘めているタイプで、異文化や海外など「自分の知らない価値観」に触れることに、人一倍興味を持っているんです。

――有本さんはもともと旅にハマる要素を持っているんですね。

有本: そうですね。小学生の時に、自転車で世界一周をしていた方が小学校に講演に来たことがあります。その方の旅の話を聞いて、子どもながらに血が騒いだのを覚えています。
その時、「2つの道があってどちらに行くべきか迷った時、どうやって決めるんですか?」と質問をしたのを覚えています。子どもの頃も今も悩みの根源はたいして変わらないなと思います(笑)。

――今も昔も変わらない悩みの根源とは、具体的にどんなことですか?

有本: 「型にはまらなければならない」というお堅い自分と、「心動かされる道を行きたい」という自由人な自分が2人存在していて、そのジレンマに苦しんでいたように思います。
「お堅い自分」は、優等生を装って親や周囲の期待に応えられるようにがむしゃらに頑張っていました。もし王道から一度でも外れたら、周囲から認めてもらえないのではないかという不安を常に感じていました。
一方で、もう一人の「自由人な自分」は直感に正直で、「これステキ!」という感性がとにかく豊かなんです(笑) 。

――なるほど。正反対な自分のなかでも、どのような気持ちを大切にしてきましたか?

有本: 周りから見てどうかよりも、自分の目で見て「コレが好き!」という感覚を大切にしたいという気持ちが強かったです。
振り返ってみると、旅をするまでは「お堅い自分」が「自由人な自分」をいつも心の隅に追いやって、自分の本当の気持ちにフタをして生きてきたように思います。

タイのタオ島。親友と見た夕日は、今まで見た中で一番美しい夕日だった

――ところで、有本さんはいつから旅をしているのですか?

有本: 20歳の成人式を迎えた直後からです。両親に「振袖はいらないから、その代わりに1カ月間アメリカに行かせてほしい」とお願いしました。今思えば、この時に初めて自分の気持ちを押し通したかもしれません。

――初めてのアメリカはいかがでしたか?

有本: アメリカのスタンフォード大学の寮に1カ月滞在し、現地学生との交流プログラムに参加しました。当時の私は英語も話せないし、とにかく自分に自信がなくて、穴があれば入りたいと思う毎日でした(笑)。でも、現地の学生と交流することで、これまで自分の中にはなかった価値観を知ることができ、「初めて聞いたけどなんかステキな考え!」というグッドカルチャーショックをたくさん受けました。

――それまで、「型にはまっていた」有本さんが学生たちの姿に影響を受けたんですね。

有本: 同世代の学生が自分の意見をちゃんと持っていて、勉強も遊びも全力投球で過ごしている姿を見て、とても刺激を受けました。当時はすごく臆病で自信もなかったけれど、この経験から「自分の知らない世界を知りたい!」という自分の中の好奇心がパーッと花開いたのを覚えています。そこから、私の旅が始まりました。

――自分の旅を始めた有本さんが旅にハマったきっかけはいつ、どこへ行った時ですか?

有本: きっかけは2段階あります。1段階目は、「ひとり旅」でしか味わえない「自分の価値観を揺さぶる旅」をしたこと。2段階目は「誰かと一緒に行く」安心感の中で「楽しみを共有できる旅」をしたことです。

フィジーの村を訪れると、客を迎え入れる「カヴァの儀式」が始まった

――確かにどちらもすごく重要ですね!

有本: 1段階目のひとり旅は、社会人2年目に一人で行った南太平洋のフィジー共和国です。1週間かけて、バスでフィジーを1周しました。透き通る海でおもいきり泳いだり、現地の村を訪れて儀式に参加したり、小学校を訪問したり、またある時はジャングルの中を歩いたり……。思いのほかワイルドな内容だったこともあって、アジア人の旅人は皆無。まだ一人旅に慣れていない私は、さすがに心細くて泣きそうになることがいっぱいでした(笑)。
でもその反面、旅でしか出会えない人と会ったり、温かく迎えてくれた経験は、何倍も心に沁みるものがありました。フィジーのひとり旅では、「お膳立て」された海外旅行ツアーでは決して味わえない、自分の価値観を揺さぶるような経験をすることができました。

――いきなりヘビーなひとり旅を経験したんですね!2段階目はいかがですか?

有本: 2段階目は5年前に親友と行ったタイのサムイ島(タオ島、パンガン島)です。未開の地へ冒険に出るようなワクワク感でいっぱいでした。美しい景色を見て一緒に感動することはもちろん、一人なら心が折れそうになるハプニングさえ、一緒に乗り越えることで逆に旅のスパイスになりました!旅の仲間がいることで安心感が生まれ、一人ではできない冒険ができたり、予想外のおもしろい出会いがたくさんありました。
サムイ島の旅は今でも思い出すたびにワクワクしますし、親友と行けて本当によかったと思える場所です。

――さまざまな旅先のなかで、一番印象に残っている旅先はどこですか?

有本: 2018年12月に行ったキューバです。アラサーに突入して、いろいろなことにがんじがらめになっていた時期で、「幸せってなんだろう?」と日々モヤモヤ考えていました。「“貧しくても音楽と踊りで溢れる国”キューバに行けば、きっと何かに気づけるかも!!」と思い立ち、期待と不安を抱いて旅立ちました。
10日間の滞在中にキューバで一番学んだことは、結局「何が幸せかは自分で決める」ということ。キューバは音楽と踊り、そして熱い愛情が街中に溢れていて、モノやお金はなくても十分人生を楽しんでいるように見えました。

キューバのハバナで。街を散歩してたらおばあちゃんと目があって、なぜかダンスする流れに

けれど、現地で仲良くなったキューバ人と語り合ったり、人々の様子をよく見ているうちに、「お金はなくてもみんなハッピー」という単純なものではないことも知りました。例えば、お金やモノがないために、好きでもない外国人と結婚して外貨を得たり、国外に出る選択をする人も多いといいます。結局、地球のどこにいても、「愛情、お金、自由……」何を優先するかは人それぞれで、多かれ少なかれ一人ひとりがそれを選択して生きていることを知りました。
この旅の経験から、「全て満たされる楽園」をずっと探し求めるよりも、自分が「ここにいて心地よいと思える場所」を自ら選択していくことが人生なのかなと思うようになりました。

後編もお楽しみに!

平日は激務の広告代理店で働く傍ら、週末で世界中を旅する「リーマントラベラー」。2016年、毎週末海外へ行き3か月で5大陸18か国を制覇し「働きながら世界一周」を達成。地球の歩き方から旅のプロに選ばれる。以降、TVや新聞、雑誌等のメディアにも多数出演。著書『サラリーマン2.0 週末だけで世界一周』(河出書房新社)、『休み方改革』(徳間書店)。YouTube公式チャンネルも大好評更新中。
リーマントラベラー