【田渕久美子が説く~前編】「出会い」のために、もっとわがままになろう!

朝の連続テレビ小説「さくら」や大河ドラマ「篤姫」(ともにNHK)の脚本などで知られる田渕久美子さんは、女性の生き方を支援する「女塾」も主宰。そんな田渕さんは、20~30代の「出会い」に悩む女性にアドバイスがあるといいます。1都3県に緊急事態宣言が発出されるなど先が見えないコロナ禍――。自粛要請で物理的に“出会えない”今だからこそ、「出会い」について考えを巡らしてみませんか。

若い女性たちからよく聞く言葉に、「出会いがない」というものがあります。素敵な男性に会いたいのにチャンスがない、というもの。さらにこのコロナ禍です。出会いの機会はもっと減っているようで、焦っている人も多いかもしれません。

当たり前が通用しない今 取り戻し、思い出すのは・・・

このご時世、マッチングアプリなど、実は出会いのチャンスは前よりずっと増えている。なのに出会いが少ない、いえ、少ないのではなく、出会えない。もっと言うと、あなたが望む「その人」に会えないのですよね。少し前まではそんな言葉を聞くことはずっと少なかったような気がします。なんだかみんな相手を見つけて、それなりに幸せな人生を送っているように見えた。なのに、なぜ今は、出会いがないのでしょう。

それについてまず私が思うのは、現代人が複雑になったのではないかということ。世の中の進化に合わせて人も進化、多様化し、昔の当たり前がいろいろな意味でもはや通用しなくなったのではないかとも思うのです。

ではどうすればよいの? もちろん方法はあります。でも、その前に、まずは、出会いがないと焦るのをやめてください。このままでは、出会いそのものを楽しむゆとりを失います。

改めて言うまでもなく、誰かと出会うって、とても素晴らしいことです。その人と、人生のひとときを過ごしたり、それが長いつき合いになって、結婚に結びついたり、結婚しないまでも、大切なパートナーになるかもしれません。そういう出会いの不思議をまずは喜ぶ気持ちを取り戻しましょう。幼い頃、誰かと出会うことを夢見たような、そんな純粋な気持ちを思い出してみましょう。私の相手は今どこにいるのだろう、と焦るのではなく、出会いの瞬間をワクワクと思い描いてみましょう。

そして、「出会えない」という口癖は今すぐにやめること。今すぐに、です。「言霊(こと・だま)」という言葉があるように、言葉には力があり、使っている言葉があなたやあなたを取り巻く環境を作ってしまいます。「私は、必ずその人に出会える」と明るい気持ちで信じましょう。いいえ、確信してしまいましょう。だまされたと思ってやってみてください。これは実は効果抜群です。

「出会う」手順は、虫眼鏡を使った実験と同じ!

次に、あなただけの「その人」に出会うための準備その②です。
あなたにお聞きします。
「あなたの好みの男性(女性)とはどんな人ですか?」
そこから? ここから、です。
出会うためには、出会いたい人の姿をはっきりと頭や心に思い描くこと。

小学校の虫眼鏡を使った実験を憶えていますか? いわゆる「集光による火起こし」というもので、虫眼鏡のレンズに太陽の光を集めて黒い紙に焦げ穴を作るというもの。虫眼鏡の角度が悪いと、うまく光が集まらず穴が開かないけれど、光が一点に集まった途端に、ぽっと火がつきます。

つまりあれと同じで、自分がどういう人を求めているのかをはっきりさせないと、その人とは出会いにくいものなのです。

では、改めて……あなたはどんな人が好みですか? 背が高くてやせ型が好き、または筋肉質で毛深い人が好きなんてのもいいけれど、少々浅すぎる。笑顔が素敵な人、ならどんな風に素敵とか、もっともっと細かく、自分の好みを徹底的に洗い出してみるのです。でも、この作業は楽しいようで、実はストレスがたまるものでもあります。理由として、「贅沢を言っている場合じゃないでしょ」とか、「そんな素敵な人が私なんかを好きになってくれるわけがない」なんてことを考えてしまうから。自分のことを棚に上げて、「何様だなんて思われたくない」なんてのもあります。

人の目を気にし、自分を過小評価しないで

私が常々思っていることに、日本の女性は謙虚が過ぎて自分に厳し過ぎる、というものがあります。人の目を気にしすぎという面もある。

究極の王子様のことを考えるのです。遠慮してはいけません。自分の価値を低く見積もって適当なところで手を打とうとしないこと。思い切りわがままになっていいのです。いいえ、ここだけはわがままでなければならないのです。

ちなみに、私の好みははっきりしていました。異性に求めるのは、「誠実さ」と「色気」です。誠実さはわかるけど、「色気」ってなに? 色気は、私にとってはまずは目、そして手やおしりの形、声のトーンとか、いろいろです。それでも、これを満たさない人とはどうもうまくいかないことを若い頃から理解していました。結果、いつもそれだけは外さずにつき合ってきたと断言できます。

さあ、すぐに始めましょう。あなたはどんな人が好きですか? 掘って掘って堀りまくりましょう。少し高価なノートを用意してもいい。あなたの好みの人を描ききりましょう。

ただ、「楽しむ」ゆとりを忘れずに!

次回は、「あなたがその人と出会いたいのはなぜ?」に続きます。

島根県生まれ。脚本家・作家。多数のテレビドラマの他、映画、舞台、ミュージカル、落語、狂言、オペラなども執筆。連続テレビ小説「さくら」(NHK)では橋田壽賀子賞、「冬の運動会」(TBS系)で放送文化基金賞。NHK大河ドラマの「篤姫」が大ヒット、「江~姫たちの戦国」では脚本にくわえ原作も手がけた。近著に『おね』上下巻(NHK出版)など。女性の生き方を支援する「女塾」主宰。講演会、脚本セミナーなど活動は多岐にわたる。2020年5月のNHKスペシャルドラマ「路(ルウ)」(日台合作)では脚本と主題歌を作詞を担当。