【田渕久美子が説く~後編】素敵なその人と出会うための究極の方法とは?

朝の連続テレビ小説「さくら」や大河ドラマ「篤姫」(ともにNHK)の脚本などで知られる田渕久美子さんは、女性の生き方を支援する「女塾」も主宰しています。前編に続き、そんな田渕さんから20~30代の「出会い」に悩む女性へのアドバイスです。緊急事態宣言の対象が追加されるなど、コロナ禍の収束はまったく見通せません。外出自粛で“出会えない”今だからこそ、「出会い」について静かに考えてみましょう。

“なぜ、出会いたい?”から考えよう!

前回は、あなたの特別な「その人」に出会うため、自分の好みをはっきりさせましょう、というお話しをしました。そして、今回はここからです。「あなたはなぜその人と出会いたいのですか? その目的は?」

会いたい、に理由や目的があるの? もちろんです。ただ、多くの人が思っているかもしれません。「素敵な人に出会って結婚し、子どもを産んで一生添い遂げたい」と。

でも、ここで少し考えてみませんか? 世の中の価値観は多様化しています。出会いに際して求めるものが変わっていくのも自然なことのように思えるのです。

結婚もいい、でも、出会いにひとときの安らぎを求めるだけでもいい。親友のような関係でもいい。もちろんそれを求めた上での結婚もいいでしょう。でも、だからといって一緒に暮らす必要がある? 別居婚は? もっというと、籍を入れる必要がある? 事実婚でもいいのでは? 子どもが欲しいから結婚を望む? でも、少しハードルは上がるかもしれないけれど、結婚はせずに子どもを産み、シングルマザーとして生きる道を選んでもよいのでは?

私の周囲にも、事実婚を続けるカップルもいるし、若いうちは独身で仕事に集中し、50歳くらいでゆっくりとパートナーを見つけたいという人もいます。子どもだけが欲しいので、精子バンクのことを調べている女性もいます。子どもは欲しいけれど、自分の子である必要はない、と感じている人もいる、本当にいろいろです。

ちなみに、私の場合は、若い頃から、とにかく子どもが欲しいと思っていました。そして結婚もしたかった。脚本家である私は、どこかでいろいろな経験をしたいという気持ちが働くのかもしれません。そして、私は32歳で結婚。翌年、連続ドラマの仕事をしながらの妊娠で息子を出産。その4年後に、またも連続ドラマ執筆中に、妊娠、娘を出産。そのひと月後にはもう新しい連続ドラマに取りかかり、と超多忙の中で子育てをしました。

願いをはっきりさせれば、「目的は達しやすい」

そして、下の子が3歳の時に離婚。夫とは、共に生きていく上での考え方が合わなくなっていました。しかし、夫は近くに住み、協力し合いながら子どもを育てました。そして、離婚して8年後、大河ドラマの執筆が決まり、子育てと仕事に明け暮れた末、心から安らげる人との出会いを求めたところ、まさにそういう男性と巡り合い、子どもたちの強い後押しもあって再婚。別れた夫にも素敵なパートナーがいて、互いに行き来するほどの関係が今も続いています。

そんなうまい話があるの? でも、前回の虫眼鏡を使った「集光による火起こし」の実験を思い出してください。虫眼鏡を太陽に向け、角度がぴたりと合うと、紙に火がつくというあれ、です。

つまり、願いをはっきりさせればさせるほど、目的は達しやすいのです。

ただ、ひとつ気をつけなければならないことがあります。女性とは「共感力」が強い生き物です。共感力とは人のことを自分のことのように感じる素晴らしい能力のこと。ただ、それが強く働きすぎると、自分の気持ちよりも、親や周囲の気持ちに応えようとしたり、世間の常識を読みすぎて流されてしまったりして、本来の自分を見失ってしまうことにもなりかねません。

でも、ここは、そうした雑音(あえて雑音と言います!)は忘れて、まずは自分の心を見つめましょう。自分の「本音」と徹底的に向き合うのです。

結果、「やっぱり普通に結婚したい」というあなた。もちろんそれでいいのです。ならば、結婚後の生活を思い描いてみましょう。あなたは彼とどんな夫婦になりたい? 子どもは持つ? 持たない? どこに住みたい? どんな風に暮らしたい?などなど、自分の好みや気持ちをはっきりさせてみるのです。

出会うべきなのは、素敵なその人?それとも・・・

なぜそこまで、と思うかもしれません。でもこれは実は、「自分自身との出会い」のためなのです。そう。つまり、私が最も言いたいのは、自分の外側に「特別なその人」を求めるなら、まずは自分自身と出会ってみませんか? ということなのです。

考えてもみてください。あなたは誰と一番長くつき合っていますか? 親や兄弟、親友? これから出会うその人でしょうか? いいえ、あなたが最も長く関わるのは、あなた自身です。おぎゃあと生まれた時から、この世を去るその瞬間まで、あなたはあなたという存在と共に生きていくのです。その自分のことをよく知らないなんてとても残念なこと。いえ、それでは自分らしい人生を生きることはできません。

「自分との出会い」の利点は挙げれば切りがありませんが、なかでも大きなひとつが、「直観(直感)が鋭くなる」ということです。

直観とは、頭ではない別のところから来る感覚で、なんとなくそんな気がするとか、ピンと来るなんて表現されるものです。「女のカン」なんて言葉もありますよね。たとえばこの直感を使えば、誰かに会った時、「あっ、この人とは縁があるかも」とか、なんとなく行きたくなった先で、運命の人との出会いがあったなんてこと、聞いたことはありませんか?

そして、イキイキと直観を使って生きている女性は輝いているし、人を惹きつけやすくもなり、良いとこずくめです。

まとめましょう。このコロナ禍だからこそ、焦らずゆっくり、自分との出会いを楽しんでみませんか? 少し遠回りに思えるかもしれません。でも、あなたはあなたを知った分だけ、あなたにぴったりのまさに「その人」と、まさに絶妙なタイミングで出会うことになります。

それだけは、私が保証します。

島根県生まれ。脚本家・作家。多数のテレビドラマの他、映画、舞台、ミュージカル、落語、狂言、オペラなども執筆。連続テレビ小説「さくら」(NHK)では橋田壽賀子賞、「冬の運動会」(TBS系)で放送文化基金賞。NHK大河ドラマの「篤姫」が大ヒット、「江~姫たちの戦国」では脚本にくわえ原作も手がけた。近著に『おね』上下巻(NHK出版)など。女性の生き方を支援する「女塾」主宰。講演会、脚本セミナーなど活動は多岐にわたる。2020年5月のNHKスペシャルドラマ「路(ルウ)」(日台合作)では脚本と主題歌を作詞を担当。