鈴木保奈美さんがコロナ禍で再確認した “演じること“との向き合い方

「SUITS」の続編や「35歳の少女」など2020年に話題作への出演が相次いだ鈴木保奈美さん。コロナ禍で撮影の中断も経験し、改めてスタッフへの感謝を再確認したと言います。初のエッセー集「獅子座、A型、丙午。」(中央公論新社)を上梓したばかりの鈴木さんに、仕事への取り組み方や2021年への抱負を聞きました。

撮影中断は「想像以上に落ち込んだ」

――2020年は新型コロナウイルスの感染拡大があり、感染対策をしながらの撮影は苦労があったと思います。

鈴木保奈美(以下、鈴木): 「SUITS」(フジテレビ系)の撮影がいったん止まった春頃は、この先どうなるかわからず、とても不安でした。撮影が再開してからも、マスクやフェイスシールドを付けなければならなかったり、メイクの場所も仕切りが必要だったりと、やらなきゃいけないことが増えました。

とても大変な思いをしているスタッフが、私たちに「すみません」と言ってくれるので、「いや、私たちよりもあなたたちの方が大変だから」と思って。改めて、裏方さんたちの仕事の大変さを考えましたね。とっても感謝の念がわいたし、裏方さんたちの労が報われてほしいという気持ちが強くなりました。私たち表に出る側ががんばることで還元できるものがあれば、少しでもお返ししたい。これまで以上に感じるようになりましたね。

――撮影が中断し、落ち込んだ時期もあったそうですね。

鈴木: 思っている以上にがっかりして、へこみました。こんなにへこむということは、「この仕事がとても好きだったんだな」と逆に気がつきましたね。いまの私には「SUITS」をやることが大事なんだな、と。それは、キャリアという意味でも、好きなことに取り組むという意味でも、人間関係という意味でも、です。「ああ、SUITSの現場は私にとって大切な場なんだ」と思いましたね。

想像を広げて役をリサーチ

――ここ数年、話題を集める作品に出演されてきました。子育てで俳優業をお休みする前と、復帰した後とで、「演じる」ことへの向き合い方に変化はありましたか。

鈴木: 「お芝居をすることが好き」ということを、堂々と表明して良いんだ、みたいな感覚を獲得したかなと思います。自分にとっては、とても面白い職業だと思っています。

――演じる役柄についての取材やリサーチを大切にしているそうですね。

鈴木: 「35歳の少女」(日テレ系)では保険の営業をしている女性の役。実際に保険の外交員の方にお話を聞きました。以前、看護師さんを演じたときは、看護師になる方法が書かれた本を読みました。すると、何年くらい勉強して、どんな難しい試験を受けないといけないかが、わかる。

リサーチするのは、環境が人を作る部分がある、と思うからです。どのように生まれ育ち、どんな勉強をしてきたのか、どう仕事をして、どのような人と関わっているのか――そういったことを想像することで、演じる役柄のディテールがわかる。そういう意味で、材料を集めることは大切だし、なかなか面白い作業です。

いまなお「自分は小僧のつもり」

――年齢を重ねることに対する漠然とした不安は、男性よりも女性の方が持ちやすいのかな、と感じています。鈴木さんの場合はいかがでしょうか。

鈴木: 不安は感じていないですね。逆に自分はまだ「小僧」のつもりなので。先輩として見られると、「あ、そうだったんだ!」と感じちゃう。そこは考え直した方がいいのかも、と思うくらいのもので(笑)。あまり年齢のことを考えていないですね。もともと動き回ることや旅行が好きなので、体力だけは落としたくないとは思っています。

――美容などで心がけていることは。

鈴木: 美容というより健康に気をつけていますね。不健康が美容に悪いと思うので。ただ食事は食べたいものを食べていますし……。でも保湿とか、できることはやっていますよ。あとは眉間に皺を寄せないようには意識していますね。

――telling,の読者層である20代、30代は、結婚や出産、仕事の面で悩みを抱えやすい世代でもあります。経験を踏まえて言えることがあれば、お願いします。

鈴木: やっぱり不安や疑問、違和感を表に出す。一人で悩まず、パートナーや同僚に話せる環境があればいいなと感じます。それができない環境が一番つらいですよね。共有することが大切だと思います。

――2021年、新たに挑戦したいことはありますか。

何かを始めるよりも、「やっていることを新しい気持ちで挑戦したい」という思いが強いです。

これまでも取材を受ける機会は多かったですが、今回、エッセー集を出したことで、お目にかかることのなかった媒体の取材を受けることも。これも私にとっては新たな取り組み。「自分はこう考えているんだな」「ここが足りないな」といった気づきを得られています。

●鈴木保奈美(すずき・ほなみ)さんのプロフィール
1966年生まれ、1986年にデビューし、ドラマ、映画を中心に活動。91年に主演したドラマ「東京ラブストーリー」(フジテレビ系)が大ヒット。98年の結婚後、一時引退するが、2011年に本格復帰。主な作品に「SUITS」(フジテレビ系)、NHK大河ドラマ「江 ~姫たちの戦国~」、「35歳の少女」(日本テレビ系)など。2021年1月8日公開の「おとなの事情 スマホをのぞいたら」にも出演している。

衣装:ASPESI

「獅子座、A型、丙午。」

著者:鈴木保奈美
発行:中央公論新社
定価:1400円(税別)
発売:12月9日

映画「おとなの事情 スマホをのぞいたら」

1月8日、全国公開

監督:光野道夫 
脚本:岡田惠和
出演:東山紀之、常盤貴子、益岡徹、田口浩正、木南晴夏、淵上泰史、鈴木保奈美ほか

記者・編集者。鳥取、神戸、大阪、東京で記事を書いてきました。ジェンダーや働き方・キャリアを取材しています。
カメラマン。1981年新潟生まれ。大学で社会学を学んだのち、写真の道へ。出版社の写真部勤務を経て2009年からフリーランス活動開始。

Pick Up

ピックアップ
【パントビスコ】私35歳、8歳年下との結婚ってどう思いますか?
テリやきテリ世の甘辛LINE相談室
【パントビスコ】私35歳、8歳年下との結婚ってどう思いますか?
ヒント 恋愛
不妊治療を始める前に知っておきたい「特別養子縁組制度」 産むとは、育てるとは
産婦人科医・高尾美穂さん×アクロスジャパン・小川多鶴さん
不妊治療を始める前に知っておきたい「特別養子縁組制度」 産むとは、育てる
家族のかたち 妊活 子育て