正しい洗顔とクレンジングの方法。皮膚科医が勧めるケアで肌本来のバリア機能を守ろう

洗顔の方法を見直すだけで、肌が本来持っている保湿力などが高まり、肌トラブルが防げるかもしれません。正しい洗顔方法や、気を付けるべきポイントなどについて、皮膚科医でシロノクリニック銀座院副院長の笠井美貴子さんに解説してもらいました。

「肌本来のバリア機能」の仕組み

正しい方法で顔を洗えば、肌トラブルを防止できるのをご存じですか?
皮膚の表面には「角質層」という角質のバリアがあり、ホコリや花粉、そして乾燥といった外からの刺激をシャットアウトしています。そして、その表面にある「皮脂膜」が、皮膚内部からの水分の蒸発を防いでいる。皮脂膜の奥には、肌に必要な水分や油分を蓄えている「角質細胞」や「細胞間脂質」があるんですね。ですから角質層は、外から来る刺激から肌を守り、潤いを肌の内側に閉じ込める役割を果たしています。これが、「肌本来のバリア機能」と呼ばれているものの仕組みです。

洗顔のやり方が雑だと、皮脂膜や角質層が傷ついて、内側に保っている水分や油分が蒸発しやすくなり、肌トラブルにつながります。「肌が乾燥する」「敏感肌だ」と感じている人はまず、日々の洗顔の方法を見直してみることがおすすめです。

正しいメイク落としの方法

それではここからは、なるべく肌に負担をかけない、正しいメイク落としの手順を説明します。

①手を洗う

手を、せっけんで洗って清潔にします。

②リムーバーでポイントメイクを落とす

目元や唇は顔の中でも皮膚が薄く、刺激に弱い部分。しかしマスカラや口紅などは落ちにくいので、クレンジングの際に強くこすってしまいがちです。しっかりメイクした日は、ポイントメイク用のリムーバーを使うのがオススメ。クレンジングよりも弱い力でメイクを落とし、肌への負担を軽減できます。
リムーバーをたっぷりしみこませたコットンを、目元や口元に1分くらいあててメイクをなじませてから、優しく拭き取りましょう。ゴシゴシとこすってしまわないように注意してください。
メイクが薄い日は、クレンジングだけで大丈夫です。

③クレンジング洗顔で全体のメイクを落とす

使うのはオイル・ジェル・クリーム・バーム・泡タイプ・・・なんでもかまいません。たっぷり手にとって、くるくると顔全体になじませていきます。手で顔の皮膚をすらないよう弱い力で滑らせるのがポイント。小鼻などファンデーションがたまりがちなところは、指の腹で優しくなじませましょう。あまり長時間クレンジングすると、肌に必要な油分まで取ってしまうので、1分くらいを目安にしてください。

④ぬるま湯ですすぐ

桶などにためた“ぬるま湯”を、手ですくってすすぎます。熱いお湯は肌本来の皮脂まで落としてしまうので、30~33度くらいのぬるま湯で。シャワーを直接顔にあてると、水圧で肌がダメージを受ける場合があるので避けてください。

⑤タオルで拭く

タオルで顔を押さえるようにして、水分を吸い取ります。ゴシゴシ拭くと肌に負担がかかるのでNGです。

注意すべきポイント

洗うときも拭くときも、とにかくゴシゴシこすらないことが大切です。シートでクレンジングできる「ふきとりタイプ」は、あまりオススメできません。摩擦によって角質層が傷つき、バリア機能の低下を招くからです。もし使う場合は、水分でひたひたな状態ものを肌に置き、時間をかけてなじませてから弱い力で拭き取るようにしましょう。

正しい洗顔の方法

では、ここからは正しい洗顔の手順を解説。泡立て方やすすぎ方などポイントも見ていきましょう。

①手を洗う

手を、せっけんで洗って清潔にします。

②泡立てネットを使い、洗顔料を泡立てる

洗顔料に水を加え、ネットなどを使って泡立てましょう。洗顔料に含まれる洗浄成分を水で中和する作用があるからです。十分に泡立っていないと洗浄成分が強くなるため、肌の負担につながります。フワッとした塊になるくらい、しっかりと泡立てるのがポイント。ベチャッとした泡だと洗浄成分が強すぎたり、顔につけた時に手で肌をすってしまったりして、ダメージになります。

③顔に泡をのせ、優しく洗う

皮脂の分泌が多いTゾーンに泡をのせます。手のひらを使って、くるくると広げていきましょう。頰は乾燥しやすいので最後にします。手と顔の皮膚の間にたっぷりの泡があり、直接すらないことが理想。ひととおり広げたら、泡を顔の上で転がすようなイメージで滑らせ、汚れを落とします。黒ずみや皮脂などが気になっても、ゴシゴシこするのはNGです。長時間洗顔料を顔にのせていると、必要な油分まで取ってしまうので、1分くらいを目安にしてください。

④ぬるま湯ですすぐ

桶などにためたぬるま湯を手にとってすすぎます。熱いお湯は肌本来の皮脂まで落としてしまうので、30~33度くらいがよいでしょう。シャワーを顔に直接あてると、水圧で肌がダメージを受ける場合もあるので避けてください。

⑤タオルで拭く

タオルで顔を押さえるようにして、水分を吸い取ります。ゴシゴシ拭くと肌に負担がかかるのでNGです。

洗顔の回数、一日何回が理想?

一般的には、朝と夜の1日2回程度、洗顔料を使って洗うとよいでしょう。ニキビや毛穴のつまりが起きやすい人は特に、古くなった角質や余分な皮脂を洗い流して清潔に保つことが重要です。一方で肌が乾燥しやすい人は、朝は洗顔料を使わず、ぬるま湯で洗うだけでOK。このときも温度は30~33度で、優しく洗うようにしてくださいね。肌質は人それぞれですので、自分の肌に合わせて洗顔の頻度も変えましょう。

洗顔をすることによるメリット

①清潔に保ち、肌トラブルを防ぐ

皮膚は常に新陳代謝を繰り返しています。古くなった角質や油分はアカのようなもので、放っておくと毛穴の詰まりを起こし、ニキビなどの原因になります。これらを定期的に洗い流して肌を清潔に保てば、肌トラブルを予防することができます。

②スキンケアの浸透がよくなる

いらなくなった古い角質を落とすことで、スキンケアの浸透がよくなります。洗顔したら、なるべく早めに保湿するとよいでしょう。

これはやっちゃダメ!洗顔のNG

①ゴシゴシと強い力でこする

摩擦によって傷ついた肌は、水分や油分が蒸発しやすく、結果的に肌荒れを招きます。また、こすることによって肌が厚くなったり、シミや“くすみ”ができたりすることも。できるだけ摩擦を避け、弱い力で洗うことを心がけてください。

②40度以上の熱いお湯で流す

お風呂で「温かい」と感じるような温度で顔を洗うのはNG。肌の表面にある必要な油分まで奪ってしまうため、水の温度は30~33度が理想です。

③シャワーを直接顔にあてる

水圧は肌を傷つける原因になりますし、体に浴びているシャワーを顔にかけると、どうしても温度が高くなりがち。なるべく桶などにためた水で洗いましょう。

④クレンジングや洗顔料を1分以上つける

マッサージなどが好きで、リンパまでしっかりケアする人もいるかもしれません。しかし肌を守るためには、クレンジングや洗顔料などは早く流した方がよいでしょう。

⑤1日3回以上顔を洗う

頻繁に洗顔をすると、必要な油分まで奪ってしまいます。洗顔は1日2回までにしましょう。

正しい洗顔で肌トラブルを改善しよう

正しい洗顔方法について、お伝えしてきました。顔を洗ったり、拭いたりする時に、ゴシゴシとこすっている人は意外と多いもの。診療で患者さんに洗顔方法を指導することもあります。毎日の洗顔を見直すだけで、乾燥やシミ、毛穴の汚れといった肌トラブルが改善するかもしれません。ぜひ試してみてくださいね。

笠井美貴子さんのプロフィール
皮膚科医(シロノクリニック銀座院副院長)。サーマクール認定医、ウルセラ認定医。サーマクールやウルセラに、頬の下垂へのヒアルロン酸注入などをあわせて複合的に行う、たるみ治療が得意。

●取材協力:シロノクリニック

1989年、東京生まれ。2013年に入社後、記者・紙面編集者・telling,編集部を経て2022年4月から看護学生。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理、銭湯。