真船佳奈×医師・山本佳奈 「生理との上手な付き合い方とは?」あなたの悩みにお答えします!【後編】
どんな症状があったら、病院へ?
真船佳奈(以下真船)真船: 今回、Twitterで「お医者さんに聞いてみたいことありますか」って募集したら、「排卵のタイミングで胃が痛くなります」という質問が来ました。生理痛がある方は多いと思うんですが、排卵期に不調が起きることはあるんですか?
山本佳奈(以下山本): 排卵日特有の症状として排卵痛というのがあります。卵子が排出されるときに、卵胞が破れる、つまり卵子が入っている膜が破れて血液などが流れだすことで、腹膜が刺激されるんです。胃は下腹部とだいぶ距離があるので何とも言えないですが、「胃が痛む」と感じる方はいらっしゃるかもしれません。
真船: 「胃腸の調子が悪いかも」と思って、トイレ行って「胃腸じゃない!生理痛だ!」みたいなときは私もあるなぁ。
続いて生理関連の質問です。生理でどういう症状があったときに病院に行くべきですか。生理痛があること自体は、すごい痛みじゃなければ異常ではないのかな、と思っているんですが、度を越した頭痛・腹痛があった場合には?
山本: 病院に行った方がいいと思います。そもそも人によって感じ方は違うので、Aさんの痛みをBさんが感じることって無理ですよね。少なくとも「生理痛がつらくて仕事できない」や「何かしら予定をキャンセルしちゃう」とか、私もそうだったんですが「トイレから出られなくて寝込んじゃう」みたいな場合も病院へ。「ちょっと痛いな」くらいでも毎回だったら一度は行ってみても悪くはない。「ここまでは我慢してください」という基準はありません。
真船: 生活に支障があるなら、積極的に病院に行った方がいいですよね。生理中に体温が上がることもあると思うんですけど、ほぼ風邪みたいな状態まで発熱する人もいるようで。実際にどうなんでしょうか。
生理不順の基準、教えてください!
山本: PMS(月経前症候群)ってありますよね。症状は生理前のイライラとかです。発熱することもあるので、ひどい場合は病院に行ってもいいかもしれない。ホルモンのバランスの崩れによって体温が上がることもあります。
ちなみに気分の落ち込みなどのPMSの症状に対して、即効性があるのはピルだと思います。
真船: 経血がすごく多い人はいかがですか。例えば、4日目なのに1日目と同じ量出てる場合もとか。
山本: 病気が隠れている可能性は高いですよね。
例えば子宮筋腫。若い人の場合は子宮腺筋症や子宮内膜症、ポリープができてる場合もあります。これらは良性疾患。月経がだらだら続いちゃう場合は癌を疑う場合もあります。
ただ、出血量って人と比べることが難しい。多くても「こんなの当然でしょ」と思っている人もいますから。目安としては例えば塊で、レバーみたいな色で出るとかですね。
真船: レバーみたいなのが、出るときあります。
山本: サラサラでないと、病気が隠れている可能性はあるのかなと。ただドス黒いなど色だけで病気の兆候というのは、医学的には聞いたことはありません。
真船: 生理不順の大体の基準みたいなものがあれば教えてください。
山本: 月経周期については、教科書的には28日が理想とされています。40日以内なら正常の範囲内で、40日以上間隔があくとちょっと遅いかな。3か月以上こない場合は「無月経」。逆に2週間~3週間周期だと早いですね。
真船: 生理がすぐ終わっちゃうみたいなこともありますよね。私も4日くらいで「ほぼ今回の生理終わったな」みたいな時があります。生理が最初から軽過ぎて、すぐ終わった場合は別の出血だった可能性もあるのかな。「不正出血だったのか、それとも生理だったのかな」みたいな感覚があったことも。病院に相談したほうがいいんですかね。
山本: 極端に少ない場合は、過小月経というのが疾患名としてはあるんですよね。無月経まではいかないけど、月経が不十分という。やはりホルモンがうまく分泌しない。その状態が続くと、妊娠できないから、治療が必要です。
「日本は産むのも産まないのも、すごいお金かかる」
真船: ピルについても聞いていいですか。低容量ピルって値段が高いから、ハードルも高いですよね。しかも病院によって価格が違うじゃないですか。日本で産婦人科で低用量ピルを買おうと思ったら、診察まで1時間待って、3ヶ月分で1万円近い金額を支払って…。
この大変さが普通かと思っていたんですが、タイに行ったらピルが1ケ月分数百円~売られていて、驚いたんです。しかも、産婦人科医に行く必要なく、街の薬局で買える。「なんだ、この違いは」と思いました。タイの人からも「日本は産むのも産まないのも、すごいお金かかるから大変だ」と言われて。
最近では日本でも緊急避妊用のアフターピルに限ってですが、薬局で買えるようになる方向での検討が、政府で行われています。お医者さんの立場と山本さんの個人的な体験も踏まえて、この変化についてご意見を聞きたいです。
山本: 先進国の日本の薬局で買えないというのが、私も疑問です。値段も高すぎるから、ピルを使うとすごくお金がかかる。日本ではコンドームはすぐに購入できるのに、女性が避妊具を買うのは大変。その差はすごく腹立たしい。1カ月分のピルは2500円前後ですから、結構な出費です。大学生の頃は、痛い出費でした‥。
安全だから薬局で売っている国も多いのに、なぜ危険とされているのかが分からないです。さらに医師の診察と処方箋が必要なので1時間以上待つこともあるって…。飲みたくても「もういいや」ってなっちゃう。しかも病院がやっている時間って、仕事の時間とかぶるから、働く女性は行きづらい。これでは必要な人にピルが届かないですよね。
例えばアフターピルを処方された女性が、「日常的にピルを飲もうかな」と思っても結局続かなくて、アフターピルを再度求めて来る。そういう例は結構あります。ただ、値段が18000円とすごく高額。最近ジェネリックが出てきましたが、それでも1万円弱で、高いですね。
アフターピルの薬局での販売について議論がなされていますが、日本産婦人科医会が反対しているので、アフターピルの薬局での販売が本当になされるのか、そしていくらで購入できるのかは、注目ですね。
大切なのは自分の身体に対して意識を高く持つこと!
真船: 個人的にはアフターピルくらいは薬局で買える世の中になってほしい。「病院が開いてないから、間に合わなかった」みたいなのがないといいな。
最後に働き盛りの20代や30代の女性に対して、山本さんから、アドバイスがあれば。
山本: 子どもを産みたいと思っている女性に伝えたいのは、「妊娠したい」って思ってから、スタートすると遅くなる。男女問わず、仕事で一番頑張るとき、頑張りたいときって20代後半から40歳くらいだと聞いています。そうなると、落ち着いてからだと間に合わない場合がある。だから果たして自分が「子どもが欲しいなら、いつまで産めるのか」とか「何歳になれば妊娠の可能性が下がるのか」を知ることが重要です。
気付かないうちに感染症になり、放置して不妊症になるケースも多いので、年に一回は検査したり、ケアを含めてメンテナンスしたり。自分の身体に対して意識を高く持つことは大切なのではないかなと思っています。
私もそうなのですが、子どもを産まないという選択をした女性にも、きちんと自分の体に向き合うという意味で、気になることがあったらぜひとも病院に行って欲しいと思います。
真船: 私も「自分の身体は大丈夫だ」と思いこんじゃっていたので、おっしゃる通りだと思います。ちゃんとライフプランとの関係で、自分の体のことを考えたことがなかったので、知識もちゃんと手に入れにいかないといけないですね。自分の体をメンテナンスしてチェックするっていうのが、女性にはきっと必要なんだろうなっていう風に思います。
- 山本佳奈先生が登場する、真船さんの連載「生理の“壁”」はこちら
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●真船佳奈(まふね・かな)さんのプロフィール
1989年生まれ。テレビ東京社員(現在BSテレ東出向中)。AD時代の経験談を『オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組作ってます』(朝日新聞出版)にまとめ、2017年に漫画家デビュー。テレビマン・漫画家という兼業生活を送り、番組内の挿絵やキャラクターデザインも手がけている。
●山本佳奈(やまもと・かな)さんのプロフィール
1989年生まれ、滋賀県出身。2015年、滋賀医科大学医学部医学科卒業。ナビタスクリニック(立川・新宿)に勤務し、医療ガバナンス研究所研究員も務める。女性の健康問題に関わりたいと、高校生の時に産婦人科医を目指し、現在は内科、女性内科を担当。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。
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