充実していない人と思われるのが嫌…半数が趣味を聞かれて答えづらいと感じた経験あり!
●#ミレニアルズのモヤモヤ考察10
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豊かな休みの過ごし方
大型イベントの中止や海外渡航の禁止など、コロナ禍で休みの過ごし方がすっかり変わった昨今、趣味を極める機会としておうち時間を活用した人も多いだろう。友達のSNSを見ていると、色鮮やかなセキセイインコや一人暮らし用の漬物キット、カップルで始めた筋トレの動画、日を追うごとに上手くなっていっていくラテアートなどの投稿が並ぶ。
一方私は、徹夜でドラマを観た日もあれば、泥のように眠っていただけの日もあった。部屋の隅に積まれていた本を読んだり、ダンス動画を完コピしてみたりもした。
コロナ禍で会えない友達と画面越しに、「最近何してる?」「韓流ドラマみてる」「私も!」なんていう会話を5回くらい交わした気がする。
久々に会った同僚と休みの日の話になり「そういえば、趣味って何?」と聞かれたときは少し言葉に詰まってしまった。私はいつも、その日・その場の気分で時間を過ごしているだけなので、いい答えがパッと思い浮かばなかったからだ。好きなこと、好きなものはたくさんあるはずなのに。
趣味を聞かれるのは、なんとなく苦手。
男女計200名に、「趣味」に関するアンケートを実施してみた。趣味を聞かれて、困った、もしくは答えづらいと感じた経験がある人は全体の半分にものぼり、女性の6割弱、男性の4割が「ある」と回答。(「よくある」「ときどきある」の合計)
その理由として最も多かったのは「好きなことはあるが、「趣味」と言っていいのか分からないから」というもので、公言することへのハードルを高く感じているようだ。
次いで「趣味がマニアックすぎて、初対面の人には言いにくいから」「特に思いつくものはないから」との回答が多かった。(理由は複数回答可能)
「語れない趣味」は「趣味」と言っていいのか
同僚や友人はどうなのかと思い、20〜30代の男女に聞いてみたところ、
「読書や映画鑑賞は好きだけど『そんなの全員やってることじゃん』と思われそうだから言いたくない」
「趣味=語れるくらいに好きなもの、得意なもの、というイメージ。ハードルが高いので趣味を聞かれるのは苦手」
といった声が聞かれた。
たしかに、月に2〜3冊読む程度で本好きだと言っていいのかイマイチ自信が持てないし、「映画好き」を公言するのはなかなか勇気がいる。その一方で、読書や映画鑑賞は無難でありきたりとも思われそうだ……。
「趣味」という言葉を使わずに休日の過ごし方を聞かれた場合も、答えづらさを感じている人は多かった。
「休日の過ごし方を聞かれるのは苦手。一人で家で映画を観たり近所のカフェで過ごしたりしてるけど、無趣味な人って思われそうで言いたくない」
「週末は何もしてないかも。動画を観ながら家事と育児をして、気がつくと日曜の夕方になってる……」
「久しぶりに会った友人に週末何してるの?って聞かれてフリーズしちゃった。土日は疲れて家で休んでることも多いけど、なんか充実してない人に見えてしまうから言いづらい」
という声が挙がったのだ。
何かしらして過ごしているのだけど、活動や練習とまでは言えない。
趣味や休日の活動は生産的なもの、もしくは“上達”が見込めるものが好ましい……という気持ちが、私たちの中にあるからだろう。
一方で割り切った意見としては
「趣味の質問なんて会話のきっかけ作りに過ぎないから、週末はお酒飲んでるだけですハハハ、くらいに適当に答えてる」
というものも。
また面白かったのは、相手によって返答を変えるというスタイルだ。
友人の27歳の女性は、仕事の場では旅行や温泉の話を、同年代の友人同士では海外ドラマやキャンプの話を、一緒に出かけたいと思った男性には、自己アピールも込めて最近始めたゴルフや車の運転などの話をするという。たとえ始めたばかりの趣味だとしても、会話が盛り上がりそうなテーマを選んで話すらしい。初対面の場において、相手にどう思われたいかというセルフブランディングの意図もあるようだ。
人に話す「趣味」なんて、それくらい柔軟に考えた方がいいのかもしれない。
また、退勤後や休日はもっぱら家でSNSや動画を見ているという人は
「趣味とは言えないかもしれないけど、私にとってSNSも動画鑑賞も大好きな“リラックス法”の一つなの」と答えてくれた。
なるほど、何かをしているとも言えない時間を「リラックスするための時間」と捉えるのはいいかもしれない。個人的な感覚として、とてもしっくりきた。
自分だけの豊かな時間の作りかた
どこにいても気軽にコンテンツが楽しめる今、私たちにとって「趣味」という言葉はいささか高尚で、ハードルが高く感じられる。
10時間も寝て一歩も外に出なかった休日の夜、ああまた時間を有効に使えなかった……と落ち込むときがある。
でももしかすると、そのネガティブな気持ちの元凶は、だらだらと過ごしてしまった時間ではなく、「時間を無駄にしたくない!何か活動しなきゃ!」という強迫観念ではないだろうか。休みの日にはイベントを詰めて楽しい思い出を作るか、計画的に家事や生産的な活動をこなすべき、という自分の中の勝手な理想論があるからだ。
1週間のうちの、ほんのわずかな自分の時間。何をしたいか、どう過ごしたいかは毎回コロコロ変わっていいはずだし、趣味でも特技でもない「何か」を気の向くままゆるく続けた一日も、豊かな時間だったと認めてあげていいはず。
むしろ、人からの評価を気にしたり、誰かと比較したり、自分の中の理想論に囚われたりして「休みの時間」に何か意味や価値を見出そうとやっきになることの方が、さもしく、寂しいように思えてくる。
誰かに趣味や休日の過ごし方を聞く際にも、「趣味は何か」「何をしているのか」と活動そのものを聞くより、「最近はどんな時間が幸せだったか」「休みの日はどんな気分で過ごすのが好きか」と、その人の好きなことを聞いた方が案外相手のことをよく知れるかもしれない。
そして、たいして学びも生産性もないような時間こそ、自分の心と体を支えてくれる大切な時間だと思う。
グラフ出典
●博報堂キャリジョ研 自主調査
2020年10月実施 インターネット調査(全国)、15-79歳男女200名対象
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