「キングオブコント2020」採点徹底分析&ジャルジャル優勝会見レポ。最高得点が伸びない展開が明暗を分けた

プロ・アマ問わず全国の挑戦者たちが"コント"で、熱いガチンコバトルを繰り広げ、"真のコント日本一"を決める夢のお笑いイベント「キングオブコント」。9月26日(土)に第13回大会が開催され、第1回大会から13回連続で出場していた「ジャルジャル」が13代目キングの称号を手にしました。熱い戦いが繰り広げられた13回大会を分析します!
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“コント日本一”を決める『キングオブコント2020』(TBS系列 9月26日放送)、第13代チャンピオンになったのはジャルジャルだった。

数ある芸人のなかで唯一、初回から13年間連続して準決勝に進出し、今回は4回目の決勝となったジャルジャル。「今年は絶対優勝せなあかん」と背水の陣で挑んだ今大会を、採点データを含めて振り返ってみたい。

キングオブコント、第13代チャンピオンはジャルジャル!(左:後藤淳平、右:福徳秀介)

ファイナル3組がほぼ同点!「やじワクチン」が優勝を決めた

キングオブコント(KOC)の審査員はバナナマン、さまぁ~ず、松本人志の5人。100点満点で採点し、ファーストステージ10組から上位3組がファイナルステージに進出する。ファイナルステージでも同様に500点満点で採点し、最終的にファーストステージの合計点が高い組が優勝となる。

『キングオブコント2020』全組の審査結果。審査員がつけた最高点が赤、最低点が青

ファイナルステージの点数を見て驚くのは、空気階段、ニューヨーク、ジャルジャルの3組がほぼ横並びなこと。460点台は優勝レベルの得点であり、この点数でファイナルの組が並ぶなんて初めてのことだ。絶対に笑いが取れるネタを2本揃える力が、この3組にあったということだろう。

その中でも、ジャルジャルの1本目「やじワクチン」の477点がひとつ抜きん出ており、この貯金で優勝が決まったともいえる。これから競艇場で歌う新人歌手を鍛えるため、しつこくヤジを飛ばす練習をする事務所の社長。「誰やねん」「知るか」「下手くそ」のリズムが癖になり、審査員の多くがこの日の最高点をつけた。

 

高水準の点数なのに、最高得点が伸びない展開

昨年どぶろっくが優勝した2019年大会は、ファーストステージの点数が全体的に高く、同点となる組も多かった。実は、今回は前回にも増して得点の水準が高い。審査員の平均点は90~91点で、点数のバラツキを示す標準偏差も過去最低レベルにある。

それなのに、96点以上が付いたのは2回だけ。90点前後に審査員の得点が集中し、全体的に差が付きにくくなってしまった。事実、ファーストステージ3位以下はかなりの混戦になっている(3位:空気階段 458点、4位:ザ・ギース 457点、5位:ニッポンの社長&ジャングルポケット 454点)

ジャルジャルが頭一つ抜けていたものの、わずか数点の差で芸人の運命が左右される展開。そう考えると、5位のニッポンの社長とジャングルポケットに1人だけ厳しめの点数の付けた、さまぁ~ず三村がどうしても目立ってしまう。特にニッポンの社長の審査ではコメントがなかったので、モヤモヤした思いを抱えたままの人もいるだろう。

もちろん、1人だけ評価が違うから悪いということはない。審査基準に多様性を持たせる意味でも、さまざまな意見があっていい。ただ、5人の審査員では1人にかかるウェイトが大きく、「あの人さえいい点をつけてたら」という展開になりがちなのだ。これは審査員を引き受ける引側としてもリスクだろうし、M-1グランプリが審査員に芸歴や芸風が異なる7人を揃えていることを考えると、もっとKOCにも多様な審査があっていいのにな、と思う。

 

もともとボツ案だった「空き巣タンバリン」

ジャルジャル2本目のネタ、「空き巣タンバリン」にも触れておきたい。ジャルジャルの優勝記者会見によると、このネタはもともと10年前にあった”ボツ案”だった。今年の5月になって、YouTubeでネタをアップしてみると、思いのほか好感触だったという。

福徳: YouTubeのコメントもいい反応だったので、キングオブコントに向いているんじゃないかと。見てくれた人の反応を参考にさせてもらったし、そこからNSC(吉本総合芸能学院)の講師にダメ出しをもらったり、先輩のあべこうじさんにも最高のアドバイスをもらいまして。

後藤: YouTubeで1日1本アップしてるのは、まだネタになる前の「ネタのタネ」。お客さんの前でやることを想定してなかったネタが、まさに「種が花開いた」という感じで成長してくれたのが嬉しいですね。

 

改めてYouTubeにアップされている「空き巣するのにタンバリン持ってきた奴」と、KOCで披露されたネタを比べると、ずいぶん変わっていることに驚く。タンバリンをカバンに入れていたり、金庫にさらにタンバリンが入っていたりなど、小道具から展開を作っているし、タンバリンを持つ福徳に可愛げが生まれ、「ただイライラする奴」から「イライラするけど愛すべき奴」へと関係がアップデートしている。

通常、こうしたネタのブラッシュアップは、劇場でお客さんの反応も見ながら行うもの。だが今年はコロナウィルス感染防止のため、劇場やイベント会場の公演中止になることもあった。こうした影響はなかったのだろうか。

福徳: 吉本は本当に劇場が多くて、この状況でもお客さんを減らして通常通り1日3ステージを行ったりしたんです。感染対策もびっくりするくらいすごい。どう考えても利益にならない状況なんですけど、それでも芸人のために最高の環境を用意してくれて、たくさん出番をもらいました。

後藤: 決勝に吉本の芸人が多いのは、まさにそういうところだと思いますね。

ファイナリスト10組のうち、ザ・ギースをのぞく9組が吉本興業所属だ。昨年のエントリー数2431組に対し、今年は1707組と大幅に数が減ったのも、コロナによる環境変化の影響が無視できないだろう。

そんな中、「空き巣タンバリン」はYouTubeのコメントから反応がいいものを選び、さらに劇場でブラッシュアップをして生まれた。YouTubeに1000本以上のネタ動画をアップしてきたジャルジャルと、多くの劇場を持つ吉本興業の地肩の強さが「ネタのタネ」を咲かせたのかもしれない。

 

「ひたむきにコントをやってきた結果、コントの神様が微笑んでくれた」

ジャルジャルの優勝記者会見では、13年にわたって味わった悔しさと、芸歴を重ねることによる苦悩が本人たちの言葉で語られていた。

福徳: 今回初めて、僕たちがファイナリストのなかで一番芸歴が長いコンビで(芸歴17年目)。そもそも若手が輝くべき大会に僕らが出ていいのかと不安もあったんですけど、でも、どうしてもチャンピオンになりたくて。

後藤: 第1回から挑戦して、本当に気が狂いそうになるくらい凹むこともあったんです。準決勝が終わると、みんなの前で決勝進出者が呼ばれるんですけど、8年連続で呼ばれない。敗者コメントを撮るのも嫌で、なんて言ったか記憶にないくらい悔しくて。

福徳: 優勝するまでずっと出続けると宣言はしてたんですけど、今年獲られへんかったらそろそろ芸歴20年近くなるし、なんとしても今年は絶対優勝せなあかんと。「後輩には負けられない」というプライドの戦いでもありました。

後藤: 自分たちを客観的に見て、「いい加減、優勝しろよジャルジャル」と思ってましたね。その客観的な叱咤激励がジャルジャルに届いたんじゃないかって……ふっ(笑) ちょっとややこしい表現ですいません。

 

優勝した瞬間、感極まって涙が出る場面もあった。

福徳: 第1回でバッファロー吾郎さんが優勝したのを目の前で見て、羨ましいなってずっと悔しい思いして……で、優勝したんや、って実感が出てきて。なんかぐっと来ましたね。なぜか浜田さんには思いっきりどつかれましたけど。「なんで泣いてんねん!」って。

後藤: 優勝したからや。

福徳: 理由はわかるはずやな。

後藤: 僕は、M-1グランプリのときに福徳の悔し涙を見てるので、嬉し涙を流している福徳は……これはホントに絶景でしたね。高校時代、ラグビー部の最後の引退試合でも泣かなかった男なんで、その福徳が泣くのはなかなかのことです。

 

優勝の喜びを誰に伝えたいか尋ねると、2人とも揃って「家族」という答えが返ってきた。

後藤: 今日もテレビの前で応援してくれたと思うんですけど。家を出るときは、子供から「がんばって」「優勝してきてね」と言葉をもらいましたし、妻はなぜか泣いていて。家族の期待を力にできたかなと。家族全員に感謝しています。

福徳: 実家ではもう、家族がずっと応援してくれて。毎回「ジャルジャルが一番面白かった」って、親馬鹿かもしれないですけど言ってくれて。それに、一緒に仕事してくれる吉本社員の方、構成作家、スタッフの皆さん、応援してくれるファンの方々にも、心の底からありがとうと言いたいです。

後藤: 奥さんは? 新婚やろ?(※福徳さんは9月13日に結婚を発表しています)

福徳: いやええがな。

後藤: 「妻です」って。

福徳: 家に帰って言うから。

後藤: 言うといたらええがな。「妻にも感謝してます」って

福徳: いや結婚って思ったよりハズくて……。「一人の女性愛しました」って宣言してるようなもんやから。

後藤: そらそうや。

福徳: それが恥ずかしい。「好きな人できました!」って言うてるようなもんやで。

後藤: ええやんか素敵なことやん。

福徳: いやいやいや……(小声で)どうもすんませんね。

ようやく13年越しの悲願を達成したジャルジャル。今後はなにを目標にするのだろうか。

福徳: ホントにめちゃくちゃあるんですけど……。すごいでっかい目標もありまして。それは後藤に言ってもらうとして。

後藤: アレを言うんか。

福徳: そうそう、アレしかないから。……ホントにあの、いっぱい全国ツアーしたいし、たくさん単独ライブしたいし、ジャルジャルに興味がある方に僕らを見てもらって、今後もたくさんネタを作って。とにかくコントをやり続けるのが、僕の今後の目標です。

後藤: えー、宇宙空間でコントをしたいです。……これやろ?

福徳: そう。

後藤: 海外公演という「横」もいいけど、「上」もいいんちゃう? ということで、「無重力空間でコントをやる初めての芸人になりたい」というのが大きな目標です。ひたむきにコントをやってきた結果、コントの神様が微笑んでくれたので、これからもひたむきにコントをやるのは変わらないですね。

1975年宮城県生まれ。ライター。Web媒体でテレビ番組レビューや体験レポートなど執筆するほか、元SEの経歴を活かしコーポレートサイトや企業広報も担当。また「路線図マニア」としてイベント登壇やメディア出演も。共著書に『たのしい路線図』『日本の路線図』。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。

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