今夜「IPPONグランプリ」ハッシュタグ大喜利の麒麟川島、最年少出場の四千頭身後藤に期待

今夜放送の大喜利バラエティ番組『IPPONグランプリ』。常連のベテラン勢に加えて、今回は初出場の若手、駒場孝(ミルクボーイ)、稲田直樹(アインシュタイン)、後藤拓実(四千頭身)の3人も参戦し、大喜利に「若さ」がどう作用するのかも期待したいところ。そこで放送前に、今回のみどころを紹介します。
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6月13日(土)、芸人たちが大喜利で戦う『IPPONグランプリ』が放送される。

2009年から定期的に特番として放送されている『IPPONグランプリ』も、今回で23回目。毎年春先に放送されているけど、新型コロナウイルスの影響で収録はどうなるやら……と、思いきや、回答席のあいだにロゴ入りのアクリル板を立てるなどした「ソーシャルディスタンス仕様」になっている様子。そういえば普段から、大喜利中に「密」になる場面などないのだった。

今回出場する10名は、優勝経験者が5名、出場経験者が2名、初出場が3名というバランス。いったいどんな戦いになるのか、出場者のラインナップから見どころを伝えたい。

 

四千頭身・後藤の「若さ」に期待

初出場となるのは、駒場孝(ミルクボーイ)、稲田直樹(アインシュタイン)、後藤拓実(四千頭身)。3人の共通点を挙げるなら、それぞれ独特の「空気」を持っていることだろう。

大喜利は「何を答えるか」に加え、「誰が答えるか」「どう答えるか」も笑いにつながるのが面白いところ。なんでもない答えでも、フリップを出すタイミングや、答えるときのトーン、そして本人のキャラクターで爆笑が生まれることも珍しくない。マッチョで言葉少ななミルクボーイ駒場、インパクト抜群な外見とイケメンな内面のアインシュタイン稲田、そしてローテンションで気だるい四千頭身後藤と、三者三様の大喜利が見られそうだ。

なかでも後藤は、史上最年少でのIPPONグランプリ出場。これまで最も若かったのは霜降り明星・粗品の26歳(出場時)だったが、後藤は1997年生まれの23歳。同じブロックで出場する千原ジュニア(46歳)の半分しかない。

その若さはネタ作りにも表れている。四千頭身のネタは全て後藤が作っており、漫才中に動画サイトのように広告を挟む「広告」や、ボケが1人ずつ袖で交代する「ソーシャルディスタンス」など、時流に合わせたネタ作りにも意欲的だ。そもそも「四千頭身」というトリオ名自体も、後藤の大喜利回答から生まれたもの。ボケ担当の石橋と「写真で一言」の練習中、石橋から送られた『ドラゴンボール』の神龍(シェンロン)の画像に「四千頭身」と答えたのがツボにハマったからだという。

強者揃いの『IPPONグランプリ』のなかで、後藤の若さがどう輝くのか。“初出場初優勝”は第8回(2012年11月)のロバート秋山が最後。そろそろジャイアントキリングが見たい。

 

ステイホームで溜まる「大喜利のフラストレーション」

迎え撃つ優勝経験者組は、バカリズム、千原ジュニア、秋山竜次(ロバート)、川島明(麒麟)、そして前回初優勝した大悟(千鳥)の5名。絶対王者・バカリズムはこれで21大会連続22回目の出場である。

麒麟川島は先日『#麒麟川島のタグ大喜利』を出版したばかり。Instagramでコツコツとアップしていた「ハッシュタグ大喜利」が書籍化したものだ。楽屋などで撮影した芸人の顔写真1枚1枚に、何パターンもの「写真で一言」を添えている。

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千鳥ノブくん #二世議員のブログのヘッダー画像 #卒業式で初めてその存在を知った先生 #女性新入社員に何を話しかけてもセクハラととられそうなのでただ黙ってみてたらそれが一番セクハラ扱いされた社員 #金の力で寝返った食パンマン #電信柱に貼ってある尋ね人の写真 #社員だけでやってる地方の企業CMで最後「私達におまかせください」というセリフを棒読みで言う若手 #仮想通貨暴落のニュース以降ツイッターの更新が途絶えてしまった意識高い系青年 #弁護士の年賀状 #伊調馨さんが強くなるために捨てた甘えの部分 #ヒルナンデスで取り上げられてから入手困難になった塩大福 #嘆きの刀で戦う野武士

川島 明(麒麟)(@kirinkawashima0203)がシェアした投稿 -

時に人に、時に物に、時に「甘えの部分」といった概念にと、自由自在に例えを繰り出す川島の大喜利は、丁寧な「絵作り」で成り立っていることに気づく。千鳥ノブは「食パンマン」ではなく「金の力で寝返った食パンマン」であり、「意識高い系青年」ではなく「仮想通貨暴落のニュース以降ツイッターの更新が途絶えてしまった意識高い系青年」でなくてはならない。独創的ディテールに彩られた回答はIPPONグランプリでも健在で、しかもあの「エエ声」で読み上げられるのだからたまらない。

『#麒麟川島のタグ大喜利』の「終わりに」では、当初の予定よりハッシュタグがかなり増えたことが明かされている。執筆のタイミングでステイホームを余儀なくされたため、考える時間ができたのだ。仕事ができない不安もあったが、ハッシュタグを考えているときだけは「いつもと変わらずお笑いと向き合える時間だった」と川島は感謝の言葉を綴っている。

舞台に立てず、自宅で悶々とした時間を過ごしていたのは他の芸人たちも同じ。溜まりに溜まった大喜利のフラストレーションを、スタジオで爆発させるかもしれない。

『#麒麟川島のタグ大喜利』川島明/宝島社 

千鳥大悟&ハリウッドザコシショウ「大クセ」な2人

大喜利にはそれぞれのスタイルがある。緻密なコントロールを得意とする川島に対し、剛速球を投げ込むスタイルなのが前回優勝者の大悟だろう。

間をたっぷり取り、短いフレーズにセンスと世界観を詰め込む大悟。過去には「『1m2cm』これ何の長さ?」というお題で「殿様献上オオウナギ」「昔のゑ」、「キアヌ・リーヴスと小籔千豊の共通点を教えてください」には「しその使い方」でIPPONを取っている。文字にするとなんでもないフレーズも、大悟がフリップに書いて出すと笑いに生まれ変わるから不思議だ。

……そういえば大悟以上に「大クセ」な出場者がいた。R-1ぐらんぷり2016王者、IPPONグランプリ2回目の出場となるハリウッドザコシショウである。

前回出場した際は回答ボタンの連打が異常に早く、他の出場者がつけいる隙を与えずナンセンスな答えを畳みかけていた。さっきのキアヌ・リーヴスのお題に対しても「2人ともキンケシの立ち方」「出囃子がマリック」「下半身たこ足」「足に根が生えている」「アレがアレでアレだな?と一日中言っている」という具合である。普段のネタ同様、ずっと聞いているとクセになる。自分ペースに巻き込むと強いザコシショウ、今回も光の速さの連打が見られるか。

気になる予選の組み合わせは、Aブロック:麒麟川島、アンガールズ田中、バカリズム、ザコシショウ、アインシュタイン稲田。Bブロック:ロバート秋山、千鳥大悟、千原ジュニア、四千頭身後藤、ミルクボーイ駒場。若手の活躍も、常連の横綱相撲も、ザコシショウvs大悟の大クセ対決だって見たい。リモートの導入が著しいテレビ業界で、生の大喜利対決が見られるだけでも嬉しいのだった。

 

「IPPONグランプリ」(フジテレビ)
2020年6月13日21:00~
大会チェアマン:松本人志
出場者:秋山竜次(ロバート)、稲田直樹(アインシュタイン)、川島明(麒麟)、後藤拓実(四千頭身)、駒場孝(ミルクボーイ)、大悟(千鳥)、田中卓志(アンガールズ)、千原ジュニア(千原兄弟)、バカリズム、ハリウッドザコシショウ
観覧ゲスト:青山テルマ、尾上右近、Creepy Nuts(DJ松永、R-指定)、JO1(川西拓実、白岩瑠姫、鶴房汐恩)、Chuning Candy
https://www.fujitv.co.jp/ippon/

1975年宮城県生まれ。ライター。Web媒体でテレビ番組レビューや体験レポートなど執筆するほか、元SEの経歴を活かしコーポレートサイトや企業広報も担当。また「路線図マニア」としてイベント登壇やメディア出演も。共著書に『たのしい路線図』『日本の路線図』。
フリーイラストレーター。ドラマ・バラエティなどテレビ番組のイラストレビューの他、和文化に関する記事制作・編集も行う。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。

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