telling,編集部コラム

女芸人が自身のセクハラを告発するライブに行ってみたら……。

telling,編集スタッフが今、考えていることや日々のできごとを綴る連載コラム。今回は、お笑いライブに行ったのに、笑うよりなんかもやもや考えてしまった件について、です。

●telling,編集部コラム

センセーショナルなタイトルのお笑いライブ

「女芸人に男芸人から受けた数々のセクハラの話を聞いて、MCの男性芸人が罰を背負うライブ」というのをネットで見つけて、観に行ってきた。

お笑いライブには学生の頃からちょこちょこ足を運んでいたのだけど最近はご無沙汰だった。久々に入った薄暗いライブハウスの客席は男性のお客さんでいっぱいで、そうだ、忘れてたけど女芸人さんが多く出るお笑いライブってこんな感じだったなぁと。

ライブの趣旨としてはタイトルそのままで、6名の女芸人が過去に芸人から受けたセクハラを「本当にそれはセクハラなのか」MCがヒアリング。客席にもジャッジを仰ぎ、MCの男性芸人が代わりに「罰」(お笑いっぽい過酷なおしおき)を受けるというもの。

「お前はセクハラなんてされたことないだろ!」

ライブの冒頭から、出てきた女芸人さんの一人に「お前はセクハラなんてされたことないだろ」と男性芸人さんが言って、お客さんもウケていた。もうそれだけで「あ、今日ちょっと思ってた感じのライブじゃないかも」と思った。

ボーイッシュな女芸人の方が「芸人を始めた頃はまだ“女が抜けてなくて”いろいろセクハラに遭ったのでこんな感じのキャラクターに変えて回避するようになりました」と言っていたり、「身体を触られて……」なんてエピソードに「それはボケでやったんやろ」と言いくるめられてしまったり、真面目に受け止めると割と悲しい場面もいくつかあった。

最終的に、MCの男性が下ネタ的罰ゲームを受けて、女芸人さんたちがキャーキャー言っていて、お客さんの男性たちが各自お気に入りの出演者にズームをあててバシャバシャその光景を写真に撮りまくっていて結構カオスだった。
怖いなって思ったのが「セクハラ」エピソードに対しては「ひどい!」と、男性のお客さんは言うんだけど、その人たちは一心不乱に女芸人さんの写真を撮りまくっているっていう構図。「舞台の上にあるもの」に対してのジャッジメントと実態が乖離している感覚があった。

でも、それは自分も同じで、普段は女性の生き方の多様性について考えたりしているけど、「舞台の上にある」ブラックジョークや女性の自虐ネタに爆笑してしまうこともある。
自分が掲げているものと、実際に反射的にしてしまう行動との折り合いのつかず、苦しくなる。

そもそも女芸人さんたちが「おもしろいもの」として話してくれているセクハラエピソードに、ひとり一緒になって腹を立ててること自体、「お笑いのお作法」的にどうなんだろうとも思った。彼女たちからしたら「商売あがったりだよ!笑ってくれよ!」ってなもんかもしれない。

ライブは特に客席のリアクションがダイレクトに出演者に伝わるし、お客さんが空気をつくる一旦を担ってもいる。「お笑い」を観に来ている以上、しかめ面で舞台を睨みつけているより、ゲラゲラ笑ってくれるお客さんのが正解だろう。

大好きなエンターテイメントを楽しめなくなってくる

エンターテイメントが大好きだけど、時々わからなくなる。
ちゃんと「あり」「なし」を選別していきたい気持ちと、それによって好きだったものを楽しめなくなっていくさびしい感覚に抗いたい気持ち。
漫画の中のステレオタイプな恋愛や、雑誌の世界で「正解」とされるモテ服、演劇の中で前提とされる極端な思想とか、映画でしか見れない過激なシーンとか。
昔から見慣れて「そういうものだ」と思い「そういうものだと思う」から楽しめていたものが、自分の中に入っていかなくなっていく。それが嫌だから、そのちくっとした感覚は一回、忘れるように努めてしまったり。

時代を変えようとしている人にエールを

でも。思い返してみる。テレビでの「女芸人」さんの立ち位置はここ10年ほどでかなり変化した。「女を捨てて男と同等に体を張る」系の人たちと「可愛いのにベシャリが立つ」系の人たちくらいだった頃に比べると、グラデーションはかなり豊かになった。時代を変えたのはいつも、女芸人さんたち自身だった。
誰かがずっと続けてきた「ここ、笑っておいたほうがいい」「ここ、女だから抑えておいたほうがいい」を立ち止まって、戦ってきたのは彼女たち自身。観てるお客はいつだって彼女たちのイケてる姿に、「いいね!」してきただけ。
ならば。
「セクハラ告発ライブ」といいながら、まだまだやっぱりちょっとマッチョだった瞬間に客席から中指を立ててもよかったかもしれない。

エンターテイメントが好き。その世界で頑張ってる人たちが本当に好き。めちゃくちゃバリバリ活躍してもらうために、観てる私たちにできることがあるように思う。

現在肩書き無し。30歳の夏、港区での彼氏との同棲を解消、同時に8年マネージャーとして勤務した芸能事務所を退社する。ライター業ではお笑いやサブカルチャーに関するコラムをwebサイトに寄稿など。