エッセイスト・スイスイさん「脱メンヘラのために。余計な世間のノイズは取っ払いましょう」

『すべての女子はメンヘラである』を刊行したエッセイストのスイスイさん。ドがつくほどのメンヘラで波乱万丈な人生を送ってきた彼女は、さまざまな方法で自分を見つめ直し、今では「ハッピーリア充」になったそう。今回は脱メンヘラ大作戦を成功させた秘訣をうかがいました。

「メンヘラ」が武器になるってホント?!

「メンヘラ」という言葉を聞くと、どんなことを想像しますか? 恋愛に夢中になって相手を振り回し、自分の情緒も不安定に……すぐに「病む」、そして時に激しく感情を爆発させる。なかなか取り扱い注意なシロモノだと思う人も多いでしょう。

『すべての女子はメンヘラである』(飛鳥新社)を刊行したスイスイさんもかつては典型的な「メンヘラ女子」のひとりだったそう。彼氏に毎日そばにいてほしいあまり、手首を切り、裸足で国道に飛び込んだ過去も。
しかし、そんな「ザ・メンヘラ」だったスイスイさんは、自分の心をコントロールすることで、その情熱的なエネルギーを別の方向に向かわせることに成功し、現在は自らをハッピーリア充と称するほど、充実した毎日を送っています。

「メンヘラが武器になるってホント?」今回はそんな疑問に答えていただきました。

――スイスイさんがメンヘラだと自覚したきっかけについて教えてください。

スイスイさん(以下、スイスイ): 私が20代前半の頃は、まだメンヘラという言葉は主流ではなくて、私はただのイタい人として扱われていました。それから5年ほど経って、友人から「あなたってメンヘラだったよね」と初めて言われたんです。「メンヘラ」の言葉の意味を検索してみると、調べれば調べるほど、私にあてはまっていて……。

――ひとりの人やひとつのことに夢中になると制御が効かない、そんな「メンヘラ力」を、スイスイさんは新卒の営業職でのクライアントへの熱意や、その後数回の異業種への大胆な転職など、仕事の分野に活かすことでブレイクスルーしています。同じように「私ってメンヘラかも?」と思う人に、メンヘラ力を活かすコツを教えていただけますか?

スイスイ: まず、自分が全力を出せる環境を選ぶことが大事です。本当に合わないところだと、やってもやっても時間も気力も無駄になってしまうので。
では、そんな場所をどうやって探すのか。書籍にも書いたのですが「やりたいこと100」のリストを作るんです。
私の場合は、そのリストの最初に書いたのが「アエラに載りたい」でした。
次に、どういう成果を出したらそこにたどり着けるのか、自分が一番好きな自分でいられるかを具体的に考えていきます。
ゴールまでの道のりが想像できない職業だったら、今すぐ変えた方がいいと思いますね。

――漠然と「輝きたい!」と躍起になっていてもダメなんですね。

スイスイ: 年収何百万円を超える、理想の彼氏を作る、メディアにバンバン出る仕事をする、上司に認められて大抜擢される……「輝く」とひと言で言っても、それぞれの心の中にある定義はさまざま。それは自分にしかわからないことです。だからまずは、自分の中にある本当の気持ちを知ることからはじめてみるのがいいと思います。
でも、その気持ちを吐き出そうとした時、どこかで“ブレーキ”がかかってしまうことがあります。

――ブレーキですか?

スイスイ: 「こうなりたい!」「こうしたい!」と自分の心を掘り下げる時に「どうせ無理」とノイズが聞こえてきてしまうんです。それは取っ払いましょう。
実はこの「やりたいこと100」を初めて書こうとした時に一緒に書いた友人の夢が本当に壮大で。「あぁ、こんな風に自分のこと、制限しないでいてもいいんだ」ととっても影響を受けたんです。だから私も「アエラに載りたい!」ということから書けたんですよね。ノイズを排除して走り続けられたので、実際3年前にその願望も叶えることができました。

――恋愛で暴走しがちな「ザ・メンヘラ」だけでなく、日々原因が曖昧な悩みにもやもやしてしまう全ての人の気持ちがストンと楽になるようなメッセージを書籍に込めているように感じました。

スイスイ: そうですね。感情のコントロールができないことによる悩みを持つ人を「メンヘラ気質」と呼んでいるのかもしれません。そういうメンヘラ気質に対して、感情の整理さえできれば答えは出てきますよ、とお伝えしている一冊だと思います。
悩みって、自分の現状と何をしたいかという理想をめちゃくちゃ明確にしてそこまでの乖離を埋めたら解決すると思うのです。
でも、嫉妬にまみれて自分の本心がつかめなくなっていたり、世間からの目を気にして周りが見えなくなって、ちゃんと感情を整理してコントロールすることができなくなってる人が多いと感じます。

人の悩みのほとんどは承認欲求からくるもの

――スイスイさんのメソッドだと、とにかくリストアップして、ひとつひとつクリアにしていくことで乗り越えていくんですね。すごく建設的。書籍の中で「(うじうじとしているだけで)悩みを解決する気がない人というのがいる」という指摘をされていましたが、イタイところを突かれたなと思いました。

スイスイ: 人の悩みのほとんどって承認欲求なんじゃないか、とも書きました。「あの雑誌に載りたい」「ああなりたい」「こうなりたい」私の場合考えてみると全部、元カレに認められたいというところからきていたんですよ。それが自分の中で腑に落ちてから、やることが明確になっていきました。でも、誰にでもそういうことがあるのではないでしょうか。例えば、「学生時代大嫌いだったあの子を見返したい」とか。

――なんとなく今のご時世、そうした「他人軸」よりも、「自分軸」を持つことだったり、他人に振り回されないようにしようといった考えが自分らしく生きるための健全な考え方とされてはいませんか?

スイスイ: 本当にそれに関しては強く思うことがあるのですが、それこそが“ノイズ”なんです。流行りの考え方ではなくても、自分の考え方というのはちゃんとあって、元カレのために生きているのが私らしい生き方。それが例え「インスタ映え」しない生き方だとしても、自分を認めてあげるうえで仕方がないと思っています。
ほかにも、「あえて困難な道を選べ」みたい名言や格言もありますよね。あれも大嫌い(笑)。誰が責任をとってくれるのよ、と。
自分の中にある「流行りじゃない考え方」を受け入れるのを恐れない方がいいと思います。

私も20代の頃は、ちょっと無理をして、自分の気持ちに嘘をつくような部分がありました。でも、無理をしていることに気づいた時、無理をさせている友人関係にも疑問を持つようになって、付き合う人も変わっていきました。そうすることで、自分の気持ちに素直になっていきました。

――自分の中にある本音を認めてあげたという感じでしょうか。

スイスイ: それでも昔は、ひとつのことに固執して止まらなくなる自分がすごく恥ずかしかったんです。もっと客観的に自分を見られて、自分に合うものがわかっているダサくない生き方をしている人に憧れていた。
でも、こんな性格だからこそ、できたことがいっぱいあったんだと20代後半で気づけて、今はこれでよかったんだと思っています。

――かつてのスイスイさんと同じように、今の自分が恥ずかしい、どうにかしたいけれど、どうすることもできない方にアドバイスはありますか?

スイスイ: がむしゃらに夢中になれる馬力があるなら、まずはふんだんにそれを使い切ってほしいです。変に自分の気持ちをストップさせないで。
30代半ば以降、出せる馬力が本当に減ってくる。私でさえ、20代、もっとやれたと思い返すことがあります。
20代から30代になる時、すごく焦っていた記憶があります。その焦りから、「30歳までにどうにか形にする!」と、いろいろな仕事に手をだしまくっていました。

――「30歳までに」と決めつけてしまっていいのでしょうか?

スイスイ: 30歳に近づくにつれ、同年代で結果を出している人を横目で見ていたので。もちろん周りと自分を比べないというのも素敵な考え方だと思うのですが、私の場合は悔しい気持ちを力に変えるというスタイルが合っていました。いい意味で30代に向けて、自分を焦らせてさまざまなことにチャレンジしました。
どんなことで成功するかなんてわからないからこそ、やれる時に、がむしゃらにやることはいいことだと思います。それこそ、メンヘラ力で突破してしまう。そうすることで、充実した未来が待っていると思います。

■スイスイさんのプロフィール
エッセイスト。1985年名古屋生まれ。大手広告会社での営業を経て、コピーライター・CMプランナーに。2015年cakesクリエイターコンテストで入賞し『メンヘラ・ハッピー・ホーム』でエッセイストデビュー。プライベートではメンヘラを経て100%リア充になり、現在2児の母。

「すべての女子はメンヘラである」

著者:スイスイ
発行:飛鳥新社
価格:1,320円(税込)

現在肩書き無し。30歳の夏、港区での彼氏との同棲を解消、同時に8年マネージャーとして勤務した芸能事務所を退社する。ライター業ではお笑いやサブカルチャーに関するコラムをwebサイトに寄稿など。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。