水川あさみさん「草彅さんがどう演じるか、興味引かれた」育児放棄する母親役で出演、映画『ミッドナイトスワン』
――監督・脚本は、Netflixのオリジナルドラマ『全裸監督』を手がけた内田英治監督です。東京・新宿でショーパブのステージに立つ凪沙と、その家に身を寄せる一果を軸にしたストーリーです。脚本を読んだとき、どう思いましたか?
水川あさみさん(以下、水川):草彅さんが凪沙をどう演じるのかということに強く興味を引かれ、ぜひ一緒にこの映画をつくりたいと思いました。今回の映画は監督が脚本を書き自ら撮るという完全なオリジナル映画で、メインで描くのはトランスジェンダー。とてもチャレンジングなテーマだと感じましたね。
――水川さんが演じたのは、夜の仕事で泥酔し、一果に暴言を吐く母親・早織でした。役のイメージを教えてください。
水川:すごく不器用な人だと思います。早織は娘がいるわけですから、当然母性もあるし、愛することの意味も分かっているはず。それなのに愛の表現の仕方がすごく下手くそ。本当は一果を愛しているし、自分なりには頑張っているんです。でも、100点満点をもらえるような愛し方ができない。早織自身も悩んでいるし、葛藤を抱えています。すごく生きづらいだろうし、かわいそうな人だなって思います。
――ご自身と早織の共通点はありましたか?
水川:共通点はないです。というか、私は役に自分と共通する部分や相違する部分を見いだして演じるわけではないので、考えたことがないですね。
――役作りをするうえで意識したことはありましたか?
水川:役が決まってから撮影まで、あまり時間がありませんでした。髪の毛を金髪に染めて見た目を変えたり、方言を覚えたりして、できる限りのことをしましたね。
早織は気性が荒く、時に乱暴な役。内田監督からは実在したアメリカの元娼婦の連続殺人を描いた『モンスター』という映画をイメージし、「水川あさみだと分からないようにしてほしい」と言われました。なので、全くの別人になりきるような気持ちで演じました。
――初めは理解し合えなかった凪沙と一果は、少しずつ距離を縮めていく。一方で、早織はそのふたりにいらだち、凪沙を「化け物」とののしりツバを吐きます。出演したことで、トランスジェンダーについて認識の変化はありましたか。
水川:監督や草彅さんは、今回の映画のために勉強されたようですが、私にはトランスジェンダーの友人がいるので、もともと身近なテーマでした。なので、映画に出演したために認識が変わるということはありませんでした。
そもそも早織は、凪沙に対して理解がない役だったんですけどね。
――映画を通じて伝えたいことを教えてください。
水川:一果から凪沙、凪沙から一果、そして早織から一果、一果から早織というように、映画の中には、それぞれに違う愛のかたちが出てきます。
人間として生きていくうえで、愛することは当たり前に付随してくるもの。でも、「愛って何?」と聞かれたら、答えるのはむずかしいですよね。だから、自分なりの「愛する」ということや、「愛してもらう」ということを考えるきっかけにしてもらえたらいいなって思います。
●水川あさみさんプロフィール
1983年生まれ、大阪府茨木市出身。今年は映画「グッドバイ〜嘘からはじまる人生喜劇」に出演のほか、hulu「住住(2020)」、Paravi「love⇄distance」が配信中。また「喜劇 愛妻物語」(9月11日公開)、「滑走路」(今秋公開)に出演。