水川あさみさん「個人事務所に独立後、自分で選んだ仕事に後悔はありません」
――小学校5年のときにテレビドラマ「家なき子」を見て、女優を目指されたそうですね。夢を実現するために、続けてきたことや意識してきたことはあったのでしょうか。
水川 :年齢や状況によって意識もどんどん変わってきたので、強い気持ちを持ち続けていたという感じではないんです。
「家なき子」で家庭内暴力や貧困に苦しむ主人公を演じた安達祐実さんが泣いたり笑ったりしているのを見た小学生のころ、「自分もお芝居がしたい」って思いました。デビューした中学時代は、何もわからないまま芸能界に飛び込んだ感じ。活動も地元で、部活の延長みたいなものでしたね。「みんなとちょっと違って特別で楽しいこと」くらいの気持ちで携わっていました。そのあと上京して本格的に仕事をするようになって、一つひとつの役への責任は重くなったように感じましたし、女優という職業への思いも年齢とともに変わってきました。
――納得のいく演技ができないなどと、女優として悩まれた時期はありましたか?
水川 :時期というか、作品によってですね。いまだって納得がいくお芝居ができずに悩むことはありますよ。常に満足しているわけではないですし、満足することがいいことだとも思っていないですね。
まわりの人が「いいね」って言ってくれても、自分が納得できないときもある。そのまた逆もあります。お芝居って正解がなくて難しいからこそ、面白いんです。
――30歳を前に、結婚や出産、キャリアアップなどについて焦りを感じることを「29歳問題」と言います。水川さんはどんな29歳でしたか?
水川 :私は 30代になることが楽しみで仕方なかったですね。
私にとっての28歳、29歳は、自分が役者としてどういう方向性でやっていきたいのか、真剣に考え始めた時期。その時はすごく悩んでいたけれど、いま振り返ると「自分が今後どう生きたいのか」を模索する楽しい時間だったのだと思います。「これからきっと何かが変わるのだろう」という期待感もありました。
私は年を重ねるごとに人生が楽しくなっています。30代は女性が一番輝く時期とも言われているので、30歳になると、きっともっと楽しくなるんじゃないかな。
――いま、36歳の水川さん。女性として女優として、今後どうなりたいですか。
水川 :お芝居を続けること。そして、一つの枠に捕らわれないよう常に新しいことにチャレンジしていきたいですね。これからも「携わりたい」と思える作品に出会い、それを一生懸命作り上げていける役者でありたいなって思います。
人としては、色々なことを面白がって生きていける人でいたいです。この2020年は、コロナ騒動や色々なことがありました。世の中で起きていることを、自分なりにどう解釈し、楽しんで生きていけるか。そういう時こそ人間力が試されると思っています。
――telling,読者は20~30代の女性です。「やりたいことがわからない」と悩む女性たちにメッセージをいただけないでしょうか。
水川 :まわりの人と自分を比べるから、悩むのではないでしょうか。
例えば「みんなこのくらいの年齢で結婚している」ということを気にするから、「私も結婚しなきゃいけないのかな」って感じるわけですよね。
世の中の模範解答を気にして、悩まされる必要はないですよ。
仕事をしていて恋人がいないなら仕事を頑張ればいいし、結婚したい恋人がいるなら、その人とどう一緒になり、添い遂げるか考えればいい。
水川 :自分はなんのために生きているのか、どういう人生を送りたいのか、自分の頭でよく考えてほしい。悩んでいる人には、「人生、そんなに時間はないですよ!」と言いたい(笑)。
私は2016年に独立して個人事務所を設立してからは、少ないスタッフと一緒に自分で考えて仕事をしてきたので、失敗しても悔いはないです。すべて自分が選んだことだと、後悔することってないんですよね。
それは私自身が自分と向き合ってきたからこそ実現できたこと。とことん自分の生き方について、考えることが大事だと思います。
●水川あさみさんプロフィール
1983年生まれ、大阪府茨木市出身。今年は映画「グッドバイ〜嘘からはじまる人生喜劇」に出演のほか、hulu「住住(2020)」、Paravi「love⇄distance」が配信中。また「喜劇 愛妻物語」(9月11日公開)、「滑走路」(今秋公開)に出演。