ウィズコロナの時代が到来! ウイルスとの共存ってどんな生活?

新型コロナウイルス感染症の感染拡大がとどまるところを知りません。ウィズコロナの時代とはいうけれど、いったい私たちはどのように、この新しいウイルスと共生すべきなのでしょうか。今回は、telling,でもおなじみの工学博士であり生粋の理系男子である“尾池博士”がウイルスとの共存方法について解説してくれました。

「ウィズコロナ」っていうけれど

新型コロナウイルスとの戦いが「共存」ステージに移りました。

これまでは「防止」ステージで、守っているのは私たちではなく、病院でした。医療崩壊をいかに防ぐか。それが第一ステージのゴールでした。しかしこれからの第二ステージで守るのは正真正銘、自分です。経済が待ったなしですので、リスクを抱えながらの日常生活に突入します。

そして専門家が指摘している通り、1年以上の長期戦です。もともとワクチンとは5~10年かけて開発するものですから、いくら急いだとしても1年以上かかることは間違いありません。長期戦を戦い抜く覚悟が必要です。

とはいえ、そもそもウイルスとの共存というもの自体がピンときません。相手は見えないし、対話できるわけでもありませんし。

ウイルスとの共存とはいったいどういう生活のことなのでしょうか。危険なウイルスについて調べていくと、危険な人との共通点が見えてきました。

危険なウイルスと人の共通点①「予測のつかなさ」

私たちが怖さを感じるものと言えば、暗闇とか、年金とか、いじめとか。これらに共通するのは「予測のつかなさ」です。

暗闇は先が見えないし、年金は先行きが不安です。いじめは加害者が誇示している力よりも、とにかく何をするか分からないから怖いです。

この「予測のつかなさ」が、新型ウイルスに対して最初に感じる怖さです。

私たちはすでに腸内や肌の上の100兆個以上の菌やウイルスと共存していますから、ウイルスとの共存自体はたいして新しい生活ではありません。

共存相手とのトラブルも日常茶飯事です。普段はうまくいっているヘルペスウイルスやアクネ菌も、体調の変化で疱疹やニキビの原因になったりします。それでも彼らを過剰に怖がったりしません。「予測がつくから」です。

しかし新型ウイルスは初対面すぎて予測がつきません。そのため専門家は新しく出現するウイルスを「エマージングウイルス」と呼び、特別に怖がっています。新型ウイルス出現の報告の遅れを問題視したり、PCR検査の不十分さを問題にするのは、できるだけ早くウイルスの動きを「予測したい」からです。

幸い、新型コロナウイルスのことはだいたい分かってきました。無症状期間が長いこと。短時間に肺炎が重症化することがあること。プラスチック表面での生存期間が長いことなどが分かり、手洗い、うがい、マスク、社会的距離によって防御できることが分かりました。万一感染者が出ても、人工心肺装置による迅速な対処や、濃厚接触者への通知や追跡によって救命率が上がることがわかりました。

かつて人類を恐怖に陥れたエイズウイルスも、発症を大幅に遅らせる新薬のおかげで何とか共存できるようになりました。

しかし予測がついたとしても怖いものもいます。文字にするだけでも怖いですが、エボラウイルス、マールブルグウイルス、狂犬病ウイルスなどです。

これらに共通する特徴は私たちの生命に一切配慮しない凶暴さです。それはいじめや、従業員の生命に一切配慮しないブラック企業に酷似しています。

危険なウイルスと人の共通点②「配慮のなさ」

ウイルスに対する素朴な疑問に「なぜ宿主を殺すのか」というものがあります。細菌と違いウイルスは自己増殖できません。宿主を殺せば自分自身も死にます。なのになぜ宿主を殺すのでしょうか。

これは telling,の記事「人間の弱さ、ウイルスの強さ」でも触れましたが、一人に注目しすぎることによる誤解です。たとえその人が死んだとしても、死ぬ前に他の人に感染できる感染力と増殖速度を持っていれば、全体としては増えることができるので戦略としては間違っていません。

そこに、宿主への「配慮」は皆無です。

エボラウイルスの凶暴さは、あまりにも高い毒性で患者が遠距離を移動する前に死亡するほどで、それによって逆に流行が抑えられています。第一の防御法は近づかないこと。社会的距離をとることです。

日本は感染症を危険性が高い順に1類から5類に分類していますが、1類の感染症はすべて国内からは駆逐し、空港などの検疫によって水際対策しています。それは同時に、凶暴なウイルスに対する注意や免疫や治療体制が不十分になることも意味します。

ウイルスとの共存方法、危険な人の対処法

新型コロナウイルスの集団免疫はあまり期待できないかもしれません。スペインの7万人を対象にした調査では陽性者の14%が3回目の検査で陰性となり、最終的な抗体保有者は5%にすぎませんでした。新型コロナウイルスは集団免疫が獲得できないタイプである可能性があります。ますます長期戦濃厚です。

そして、予測がつき、配慮することが共存の条件なら、当然私たち自身も他の生物にとって予測でき、配慮できる生物になる必要があります。

危険なウイルスを想定したとき、最初に「配慮のある」相手かどうか見極めることになると思います。もし配慮のない相手であれば共存不可能ですから、天然痘のように全力で根絶させることになります。これはまさに、人間関係と同じです。ブラック企業やいじめも全力で根絶させたいところですが、まずは全力で社会的距離をとらなければなりません。

そして次に「予測」です。
ウイルスが存在している状態のまま生活するわけですから、むしろこれまで以上の防御が必要です。特別な作業というより、「手洗い、うがい、マスク、社会的距離を取る」が、日常の一部として体が勝手に動くくらいにまで体に沁みついた自然体の防御が必要になります。

新型ウイルスの出現は人類が乱開発によって他の生物の生活を脅かし、自らウイルスをもらいに行っていることが原因のひとつです。怖い話ですが、人類は「配慮がなく、予測もできない生物」として根絶されかかっているのかもしれません。全人類一丸となって他の生物に共存ラブコールを送り、本当の気持ちを分かってもらう必要があります。好きすぎておかしな行動をとってしまい怒らせてしまった恋人に謝りに行くように。

工学博士/1972年生まれ。九州工業大学卒。FILTOM研究所長。FLOWRATE代表。2007年、ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞受賞。2009年、PD膜分離技術開発に参画。2014年、北九州学術研究都市にてFILTOM設立。2018年、常温常圧海水淡水化技術開発のためFLOWRATE.org設立。
イラストレーター・エディター。新潟県生まれ。緩いイラストと「プロの初心者」をモットーに記事を書くライターも。情緒的でありつつ詳細な旅ブログが口コミで広がり、カナダ観光局オーロラ王国ブロガー観光大使、チェコ親善アンバサダー2018を務める。神社検定3級、日本酒ナビゲーター、日本旅のペンクラブ会員。