コロナ時代の働き方と不妊治療。「2人目の子どもがほしい」は不要不急か?

新型コロナウイルスによって、働く意識や価値観の変化を実感している人は多いことでしょう。仕事だけでなく、恋愛や結婚、妊娠・出産について先が見えにくくなったという声も。2年半前telling,で仕事と妊活について語ってくれた会社員の女性に、今の状況を聞きました。

女性は、都内に住む会社員のNさん。先日、夫と1歳の長男と一緒に36歳の誕生日を過ごしました。「家族で笑っていられることに心が満たされ、今までで一番幸せな誕生日でした」と落ち着いた様子で話してくれました。
そんなNさんですが、「2人目の子どもがほしい」と妊活を続けています。コロナ流行のなか、一時は先が読めない日々に悩まされたそうです。

2人目の妊活中、コロナが流行

Nさんは、不妊治療などを経て34歳で長男を出産、今年4月に職場復帰する予定でした。
一般的に30代後半になると妊娠しづらくなると言われていることから、1年半取得した育休中に自然妊娠での妊活をしてきました。
しかし、妊娠しないまま、職場復帰の時期が近づいてきました。

Nさんの会社では、復帰直前に決まる配属により、勤務するオフィスが変わります。自然妊娠ができなかったため、「勤務地が決まったら、通いやすい病院を探して体の状態をみてもらおう」と考えていました。
しかし、そこでコロナの流行が始まりました。長男の保育園入園が先送りになり、職場復帰も見合わせることになったのです。

「2人目は不要不急か」悩んだ自粛期間

緊急事態宣言が出されている間、Nさんも家にこもる日々が続きました。仕事の再開時期や配属もわからず、先が見えない時期を過ごしたと言います。
でも、自分の体は妊娠できる状態なのかを、まず知りたい。年齢的にも妊娠しづらくなっていくので、医師のすすめがあれば体外受精も考えたい――そう思い、病院に行きたい気持ちは募るばかりでした。
ただ、勤務地が決まらない限りは病院も決められません。それに、不要不急の外出を控えるよう呼びかけられるなか、不妊治療のための通院で外に出てよいものか悩みました。

Nさんが2人目の子どもがほしい理由は、NさんもNさんの夫も一人っ子だから。「兄弟がいれば、支え合って生きていける」と考えているそうです。
しかし、不妊で1人目の子どもにさえ恵まれない人がいるなか、2人目がほしいというのは贅沢な気もしました。自身も長男を産む前、不妊に悩んだため「特に1人目の不妊治療をしている人から、『2人目を望むことは不要不急だ』と思われるような気がして、ストレスに感じます」。

「それでも年齢を考えると急いだ方がよくて・・・。私にとっては必要なことなんです。焦りもあるけど、感染リスクのある中で通院することにも抵抗があって・・・。何を優先すべきなのかわからなくなっていました」

不妊治療再開は半年後?

緊急事態宣言が全面解除されて以降、希望すればいつでも職場に復帰できる状態になったNさんは、7月中旬に復帰することに決めました。
妊活については「仕事を再開してから、早くても半年後以降」と予想しています。
「まず新しい職場環境、そして育児と仕事の両立に慣れること。また、妊娠期間を考えたら、1年後の社会状況を考えて妊活をスタートした方がいいと思いました」

妊婦がコロナに感染した場合、母体や胎児へどのような影響が出るかわかっていないため、「コロナ流行中に妊娠して良いのか」と一時は後ろ向きになっていたNさんですが、いまは前向きになれたそう。
妊娠した場合、感染リスクを避けるために在宅などといった働き方の変更を会社に申し出たり、仕事を辞めたりすることも視野に入れるようになったからです。
「一番守るべきものは自分と家族の命」。そう考えるようになったと言います。

コロナで在宅勤務が浸透、不妊退職が減る?

Nさんは「コロナがもたらした変化は悪いことばかりではない」とも感じています。コロナの感染拡大を防ごうと、この春、多くの企業が在宅勤務を取り入れました。働き方の変化によって不妊治療と仕事の両立がしやすくなると、Nさんは期待しています。

不妊治療は排卵のタイミングに合わせて病院に通う必要があり、排卵が遅れていれば、1~2日後に再び病院に行かなければなりません。
1人目を授かる前に治療をした際には、百貨店のカウンター業務をしながら通院していたNさん。急にクリニックに行かなければならなくなった時に、仕事の調整がつかず苦労した経験がありました。
「体の調子次第で突然通院が必要になります。急なので職場で代わりをお願いしにくい。でも、チャンスを逃したくない」

柔軟な働き方が定着すれば、不妊に悩む人が必要な時に治療に通いやすくなるかもしれない――。Nさんは、「不妊治療で急な通院が必要になった場合も、穴を開けることなく仕事ができるようになれば」と今後、多様な働き方が広がることを期待しています。

(参考)
厚生労働省:「妊婦の方々などに向けた新型コロナウイルス感染症対策」をとりまとめました

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女性向け雑誌編集部、企画制作会社等を経て、フリーランスの編集者・ライター。広報誌、雑誌、書籍、ウェブサイトなどを担当。不妊体験者を支援するNPO法人Fineスタッフ。