新居日南恵さん「人生は『スパイダーソリティア』。他人のヒントに頼って生きるとゲームオーバー」

家族を取り巻く良い環境をつくるために大学時代に起業した「manma」社長の新居日南恵さん(25)。国際会議やテレビのコメンテーターなどでも活躍する新居さんは最近、大きな決意をしたそう。ご自身の家族観なども含め、幅広くお話をうかがいました。

自分の家族観を確立する「家族留学」

――大学生などの若者が子育て家族の元へ1日訪問し、そのあり方に触れる「家族留学」を行う「manma」を立ち上げられました。きっかけを教えてください。

新居日南恵(以下、新居): 任意団体として「manma」を立ち上げたのは19歳の大学1年生の時ですね。高校が女子校だった私は当時、摂食障害や交際相手からDVを受けている子たちと出会いました。そこで自分自身の存在を肯定し、ハッピーに生きられる手助けをしたいと思い、教育の世界や臨床心理士といった道に進むことを考えました。しかし、本を読んだりなど勉強を進めていくうちに、「自己肯定感」には家族の存在が大きく関わっているという考えにたどり着いたんですね。

現在、日本の離婚率は30%を超えています。ということは、実際に「離婚したい」と心の中で思っている人はそれ以上かもしれない。そんな環境の中で、子どもたちが家庭の中で葛藤を抱えるのは自然な流れ。
だから家族の課題に携わりたいと思うようになりました。

――日本の家族にはどんな課題がありますか。

新居: 結婚して家庭を築いていく際に、どんな心構えが必要かを知る機会が極端に少ないことが挙げられます。
「高収入、高身長のステキな人」といった相手に求めるステレオタイプな理想以外で、自分が家族をつくっていく上で、大切にしたいと思える価値観は何か――。特定の家庭に文字通り「留学」する機会を提供すると見えてくるのでは、と考えて家族留学の「manma」を始めました。

就職活動をする際、希望の会社のOBやOGを訪問するように、「結婚する前にいろんな“事例”を知りたい」と、私自身が誰より強く感じていましたしね。特に私は「良い事例」が知りたかった。
日本では「うちの家族はこんな風にお互いを支え合い、幸せです」と表立ってアナウンスする文化がないですよね。
「夫についての愚痴」や「妻への文句」・・・。知らず知らずのうちにネガティブなものにばかり触れてきたことで、結婚後も無意識に自分たちのマイナスな部分にばかり目がいく”負のループ”はもったいない。

家族はプロジェクトチームです

――そして、起業されました。

新居: 任意団体としての3年の活動後、2017年に法人化しました。「学生のうちに起業したい」という思いをずっと持っていたわけではありません。
当時はまだ、大きな利益も出せていませんでしたが、好きなことを続けるためには事業化してお金にしなくてはいけないと考えるようになったのです。5万円でも、10万円でもいいから、と協賛してくれる企業を獲得するために奔走しました。

次第に事業として成立するようになりましたが、その要因は「若いうちから結婚・出産を身近に感じ、最適な将来設計を立てていく」というコンセプトに共感してくださる企業や行政、個人の方々がいたからですね。特に30代半ばまで仕事に全力を注いだ後に結婚し、子どもを授かった人からは、若いうちから自分の家族観を確立できる点を評価してもらいました。

――新居さん自身の結婚観は「manma」の活動を通して変わりましたか?

新居: 大きく変わりましたね。「旦那さんについていくお母さんと、その2人の庇護のもとに育つ子ども」というのが、かつての私が抱いていた家族のイメージ。
でも様々な家族のあり方を知っていくにつれて、変化しました。今は「家族は一つのプロジェクトチーム、より良い“組織”にしていくためにチーム一丸でプロジェクトを楽しもう」という考え方が一番しっくりくる。

実際、「manma」の受け入れ家庭の人に「結婚したいと思ったら、世間一般の適齢期を待つな」と言われて、ついこの前までは「高校の頃から付き合っていた人と23歳で結婚して子どもを産みたい」と思っていました。20代後半のいわゆる適齢期に交際している人と“結婚の時期”だからするのではなく、若かろうと、学生だろうと、好きな人と結婚して子どもを産み、そこからキャリアを積む――。
結果的にはそうならず、今はまた別の人生設計を持っています。そこには、「世間の目」や「一般的な恋愛の常識」はもう、ありません。

人生は「スパイダーソリティア」

――様々な活動をされる中で、多くの人からアドバイスを受けることも多いのですか?

新居: 学生の頃、PCの「スパイダーソリティア」というゲームにハマっていました。これは次の手を誘導してくれる「ヒント」通りに進めると、ゲームオーバーになるんです。「これって人生に似てる!」と思いました。
「起業したなら、ただひたすら会社を大きくするべきだ」「海外に行った方がいい」などと、色んな人が様々なヒントをくれました。でもそれらは、その人にとっての人生の正解にすぎないんですよね。
アドバイスに従った先の責任をとるのは、他人ではなく私。
もちろん助言をくださるのはありがたいし、悩んで判断がつかない際に助けになったこともある。それでも、もらったヒントに対しては「でも、私の人生は・・・」と、立ち止まって考えることが大事だと思っています。

――新居さんの今後について教えてください。

新居: この先は、人生の選択肢を広げるために、「manma」の代表を続けるのではなく、どこかの企業に勤めることを考えています。それを話すと「何年間も“表舞台”から消えて、自由な世界に戻れるの?」なんて言い方をされることもあります。会社員になることは地中に潜ることなのでしょうか?
数年後、「manma」に戻りたくなったり、起業をしたくなったりすれば、またその道での歩みを進めればいいだけの話だ、と私は思っています。

学生で起業し、その後は大学院と会社の二足のわらじ……。はたから見れば自由に生きていると思われるかもしれませんが、一方で転職活動などをすると、その経歴が「かせ」になる。保守的な日本の大企業などでは受け入れてもらえないこともあるんですね。
自由に生きてきたからこそ、出来ないことがすでにもう、出てきている。
でも、「○○歳だから、〜〜をしなくてはいけない・〜〜をしてはいけない」といった固定観念で人生の選択肢を狭めることはしたくない。そう感じている人が多いからこそ、行動を起こすことでチャンスも得やすいはずです。
新たな挑戦はリスクも伴うし、孤独を感じることもあると思いますが、できないことはない!心から思っています。

●新居日南恵(におり・ひなえ)さんのプロフィール
1994年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了。慶応大の学部生だった2014年に「manma」を設立。「国際女性会議WAW!」でアドバイザーを務めたり、テレビでコメンテーターをしたりなど幅広く活躍している。「Forbes JAPAN WOMEN AWARD2017」ではルーキー賞。

現在肩書き無し。30歳の夏、港区での彼氏との同棲を解消、同時に8年マネージャーとして勤務した芸能事務所を退社する。ライター業ではお笑いやサブカルチャーに関するコラムをwebサイトに寄稿など。
1989年東京生まれ、神奈川育ち。写真学校卒業後、出版社カメラマンとして勤務。現在フリーランス。