初産で無痛分娩。本当に痛くない?安全性に不安はなかった?体験談を聞きました

麻酔を使って陣痛の痛みを和らげる「無痛分娩」。フランスやアメリカでは主流の出産方法で、日本でも徐々に広まりつつあります。将来子どもが欲しい女性は、興味がある人も多いでしょう。でも、本当に痛くないの?安全性とか、不安じゃない?第1子を無痛分娩で産んだ都内在住のスポーツメーカーに勤める会社員女性(30)に、体験を話してもらいました。

無痛分娩を選んだ理由

病院で進められて

今年1月6日に無痛分娩で第1子を産みました。
昨年5月、通っていた病院で妊娠が判明し、出産の日をあらかじめ決められる計画分娩をすることに決めました。そのとき、「無痛分娩にしますか?」と当然のことのように聞かれました。
なんとなく「お産なのに痛くないなんて、大丈夫なのかな・・・」と不安な気持ちになったけど、とりあえず「そうします」と返事をしました。
私が行った病院では、あとから普通の分娩にすることもできるし、直前に無痛分娩にすることもできるそう。陣痛が起きてから痛みに耐えきれなくて無痛に切り替える人もいるとのことでした。

なので、私の場合は無痛分娩を希望していたわけではなく、通っていた病院がたまたま得意としていたため無痛で産むことにしたのです。

死亡事故知り、不安に。とことん調べた

ただ、なんとなく不安だったので、家に帰ってからネットで調べました。そのときに、過去に死亡例があることを知りました。

※厚生労働省の調査によると、2011年~17年、無痛分娩を行った際に母子が死亡したり、麻酔を誤った部分に注入されて重い障害が残ったりした事案が計7件報道されたそうです。

母親からは「死亡事故のニュースがあったのに、本当に大丈夫なの?」とも言われて、やっぱり無痛はやめた方がいいのかなって、悩みましたね。

無痛分娩を経験した人や、私が通っている病院で無痛分娩した人のブログなどをたくさん読んで評判を調べました。いい評価ばかりではありませんでしたが、ほとんどが「無痛にしてよかった」というものだったため安心して任せられそうだという印象を持ちました。
友人から私と同じ病院で無痛分娩をした人がいると聞いたり、知人から「あの病院は有名だから大丈夫だよ」と言われたりしたこともあって、不安はなくなりました。無痛分娩で知られる病院ということが大きかったかもしれません。

病院の説明会にも参加しました。説明会は3回。過去に別の施設で起きた重大事故などについて、話を聞きました。事故が起きた原因と、自分たちの病院としてどのような対策をしているのかなど、説明してくれました。
「小さな診療所など産科医がワンオペでお産をしていると、お母さんの容体が急変した場合に対応できません。だから自分たちの病院では3~4人の看護師が付き添うことで、不測の事態にも対応できる態勢を整えている」などと説明されました。病院側の話をきくことで、納得して決めることができました。

前日から入院して準備したこと

経産婦だと予定日当日でいいらしいのですが、私は初産だったの前日から入院。ベッド一つにいすが四つ並ぶ小さな個室の分娩予備室でした。白を基調としていて清潔感があります。

病院に着いてから、着替えや浣腸をすませ、陣痛促進剤を入れるための点滴をしました。
ここでいよいよ、無痛分娩に必要な「硬膜外腔麻酔」の細い管を背骨付近に入れます。

※「硬膜外麻酔」は、背骨の脊髄の付近にある「硬膜外腔」に細い管を通じて局所麻酔薬を注入する方法。痛みを脳に伝える知覚神経をまひさせる一方で、運動神経はまひさせないため、いきむことができます。

ベッドに座って猫背になるように腰を丸め、背骨の隙間を開かせます。お腹が大きいので丸くなるのが結構大変です。痛みはほとんどなくて、ものの3分くらいで終わりました
管を入れてもらったあとは、右側を下にして横になり5分、左側5分・・・という感じで麻酔が効くように身体を動かします。太ももの内側や会陰部をとがった棒で押されて、効いているかチェック。このとき、押されている感覚はあるけど、痛みは感じませんでした。

麻酔が効いていることが確認できたところで、子宮口の開きを確認するバルーンを入れます。痛みはありませんでした。

※胎児が出てくる道をつくるために、陣痛が始まると子宮口は10センチ開きます。麻酔薬を早く入れると分娩が順調にいかない可能性があるため、無痛分娩では、子宮口が5センチ開いた頃を目安に注入するのが一般的です。バルーンは、子宮口の開きを確認するために入れるもので、5センチ開いたらとれるようになっています。陣痛の周期が安定している場合は医師の判断により、早めに麻酔薬を入れる場合も。

午後5時前くらいに処置を終え、いったん麻酔薬を入れるのを辞めます。バルーンが下腹部を圧迫するような鈍痛あり、麻酔薬が切れたんだなと思いました。チューブは外しますが、点滴針と麻酔管は翌日までそのままです。

午後6時半ごろの夕食は、緊張のせいかほとんど食べることができませんでした。
点滴針が留め置かれた腕やバルーンが入っている子宮口が痛んで、全然眠ることもできなかったです。赤ちゃんが下腹部を圧迫しているので、2時間に1回くらいの頻度でトイレに行きたくなります。でも、動くたびに点滴針がズキズキ痛んでつらかったです。寝付いたのは多分午前1時くらいだったと思います。

出産当日、子宮口が早く開いて

子宮口5センチまでの激痛

朝5時、看護師さんに起こされて朝ご飯を食べないまま準備に入ります。
点滴と麻酔を再開して、人工破水します。痛みは全くなく、パシャッと水の音がしてすぐに終わりました。
ここから陣痛促進剤を入れていくのですが、麻酔薬の注入は、子宮口が5センチ開くまで止めます。

「子宮口5センチ開くまでは普通に痛いですからね」と事前に言われていたので、覚悟はしていました。やっぱり本当の「無痛」ってないんだなぁって思いましたね。
順調にいけば午後3時くらいに子宮口が5センチ開いて、産まれるのが午後5時~午後8時との説明を受けました。なので、「結構時間あるなー」と思いながら、ベッドで横になって待ちました。
午前8時くらいまで、重たい鉛が子宮の上に乗っかっているような、生理痛に似た痛みがありました。初めは「ちょっと痛いな」くらいだったのですが、だんだんひどくなっていって。午前9時くらいに急にぎゅーっと締め付けられるような強い痛みに襲われました。下腹部を重たいもので潰されているようなイメージです。痛すぎて声も出なくて、点滴や麻酔があるから自由に動くこともできません。

看護師さんが頻繁に様子を見に来てくれていたので、「めちゃくちゃ痛いんですけど、これ本当にずっと続くんですか?」って言って見てもらいました。
そしたら、もうすでにバルーンが外れて、子宮口が5センチ開いていたんです。普通より私は子宮口の開きが早かったようでした。「急がないと産まれますね」って言われて、慌てて家族に連絡しました。ここが一番痛かったところですね。

産む直前、眠くなるくらい痛くない

看護師さんが急いで麻酔薬を入れてくれて、徐々に痛みは落ち着いていきました。午前11時くらいには、もういきんだら産まれるような状態になっていました。

「いま、陣痛がマックスに来ていますよ~」って看護師さんに声をかけられたけど、「へぇー、そうなのか」って感じで、痛みはゼロ。さっきまでの想像を絶する痛みはうそのよう。このまま寝てしまいそうなくらいでした(笑)。でも下半身に力は入るので、いきむことはできるんです。現代の医療ってスゴイ。

産むタイミングは、助産師が陣痛の波を見ながら「はい、いきんでくださいね~」って教えてくれました。言われた通りに分娩台の手すりを握って、思いっきり腹筋に力を入れます。イメージ的には、お股からドラゴンボールの「かめはめ波」を出すような感じ(笑)。
3回息んで、産まれたのが昼の12時40分ごろ。産む瞬間も全く痛みはなかったけど、骨盤を内側からぐーっと押されるような感覚はありましたね。

産まれてからは看護師さんから「女の子ですね~」「胎盤見ますか~」みたいな感じで、和やかでした。痛みによるダメージがないので、初対面のときに冷静でいられてよかったです。

産後につらかったこと

産まれたあとすぐに、先生が裂けた会陰部を縫ってくれました。ここで麻酔薬を入れるのをやめておしまいです。
6時間は歩いちゃだめと言われていたので、分娩予備室のベッドで横になって待ちます。
夕方くらいには麻酔が切れてきて、縫ってもらった会陰部がどんどん痛くなりました。
6時間後に看護師さんの付き添いのもと、立って歩けるか確認。ここでようやく点滴針と麻酔の管を抜いてもらいました。
産後つらかったのは、縫ったお股がとにかく痛かったことです。鎮痛剤を飲んだり、冷たいナプキンで冷やしたりするのですが、それでも眠れないくらい痛くて。産んでから数日は痛みに耐えながら生活していました。座ると傷口が椅子に当たって痛むので、院内では産後の人が円座クッションを持ち歩いていました。
無痛分娩の人は、この傷口の痛みを感じやすいのだとか。自然分娩の場合は、産むときの痛みが大きいので、「たいしたことない」と感じるそうです。

無痛分娩を振り返って

「無痛」と言うけどやっぱり痛い

ここまで無痛分娩の経緯についてお話しさせてもらいました。
「無痛と言うからには痛くないだろう」と思っている人もいるかもしれませんが、実際は痛みを感じる場面がいくつかありました。正直ここまで痛いとは思っていなかったので、痛みについて簡単にまとめます。
① 陣痛促進剤を入れる点滴針を刺すとき
人に寄るのでしょうが、私の場合は痛かったです。無痛に関係なく、計画分娩などで避けられない痛みです。針が結構太くてズキズキしました。
②麻酔が切れたあとのバルーン、点滴針
鈍痛とのたたかいで眠れぬ夜になりました。
② 子宮口5センチ開くまで
無痛分娩でも初めから無痛ということはなく、5センチくらいまでは耐えなければなりません
④麻酔が切れた後のお股の傷口
これも無痛とは直接関係ありません。手術後傷口を縫った痛みです。まるで痔の人のごとく、円座なくして座れなくなります。

それでも無痛を選んでよかったと、私は思っています。子宮口5センチ開くまであれだけ痛いんだから、自然分娩で10センチ開くときの痛みは想像もできません。無痛なら「産む瞬間」という一番の痛みの山場を感じなくて済みます。痛みによるダメージが少ないぶん、麻酔が効いているうちは友達に連絡したり家族と話したりする余裕もありました。

「愛情が薄くなる」のか?

無痛を選んだことについては、周りから結構色々なことを言われました。
先輩の男性社員から「女の人しか経験できない痛みなんだから経験した方がいいんじゃない?」とか、「痛みを経験してこそ母親になれるから、自然分娩の方がいいよ」とか。「男のお前が言うなよ!」と、嫌な気持ちになりましたし、「母親たるものこういうもんだ」みたいな考えの人がいることに驚きました。一方で、夫は「感じなくて良い痛みなら、そんなの感じる必要はないよ」と言ってくれましたね。
「そんなの出産じゃない」とか「愛情が薄くなる」とか無責任に言う人がいるかもしれませんが、まわりの人の言うことは気にしなくていいと思います

納得のいく選択を

安全性に不安がある人もいると思います。
もちろん自分でネットや人の話を聞いて調べることも必要だけど、最後に自分の体を守ってくれるのは病院です。特に出産のときの態勢については、よく確認する必要があると思います。不安なことは先生ときちんと話し合って、納得のいく選択してください。

無痛分娩で産まれた女の子
1989年、東京生まれ。不登校・高校中退から高卒認定を取得し大学へ。新聞の記者・編集者を経て、2020年3月からtelling,編集部。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理。