「ハンバーグだって同じ経験をしたいわけじゃない」滝沢カレンさんの気まま自由な超感覚レシピとは?
肉じゃがはおかずの長老?
――ハンバーグを焼く過程で、「え、何勝手に洋服羽織ってんの?と思ったら、その驚きを味方にひっくり返してください。茶色のあったかそうな服を着てるはずです」とありますが、滝沢さんにとってハンバーグなどの食材は生きているようなイメージですか?
滝沢カレンさん(以下、滝沢): もちろん心臓ドキドキの生きてるじゃないですけど、野菜たちも思うことがあると思っていて。料理をしているときはこんな感じだったら楽しいなとか、うれしいなって私の頭の中で食材たちのお祭り騒ぎが起きています。それがすごく楽しいんですよ。
――食材がお祭り騒ぎ!
滝沢: お祭り騒ぎをしている食材たちもいれば、冷静に海を見ていたり、山を登ったり、その日作るハンバーグが毎回そうなのかって言ったら絶対人の数だけ思いがあって。ハンバーグだって同じ経験をしたいわけじゃないので、いろいろな景色を見ているだろうし、自分の気分でも全然違いますよね。冬だったら夏祭りしているとは思わないだろうし、スキーかもしれないし、そういうのは私がこう考えた方がいいですよ、というよりは、読んでくれた人が物語をつけてくれた方がうれしいです。
私はハンバーグが大好きで、今まで自分の歳以上、たぶん168回ぐらい作ってますけど、世の中の台所はそれぞれで、いろんな物語がこれからもあると思っています。

――それでいうと肉じゃがは、「台所で長年定番位置を譲らないおかずの長老」とありますが、大御所感がありますか?
滝沢: 昔からある気持ちになってしまうんですね。昔の日本は知らないんですけど。
肉じゃがも長老ですし、ジャガイモ・ニンジン・玉ねぎってカレーと間違えられやすくって、この3つがいっしょになって売っているスーパーもあるくらい。それくらい決まったメンバーで大御所中の大御所で、ここにはシメジも入れないし、マイタケだって入れないっていうビニールで覆われているんですね。それを見ていると、この3人はいっつもくっついてるんだろうなって、そういうことは考えます。
料理は鍋の中での話合い?!
――計量スプーンが出てこないレシピも印象的です。
滝沢: スプーンを使うのが正解なのかわからないし、もちろん私のやり方があっているかもわからないですけど、そもそも実家のときから計量スプーンはなかったです。10代のときは大さじ小さじでバッチリ計っていた時代もあったんですけど、料理が楽しいという気持ちが増えてからの20代は、私の振りまきでどんな味ができているんだろうってワクワクするんです。きっちりやってみたらおいしいかもしれないし、しっかりした味かもしれないです。でもテストに出るわけではないから、私は自分の舌を信じていたいですね。ちょっと濃い味が好きだなって思ったときに、醤油を入れてみようとか、この鶏肉にもつくように入れてみようとか。
自分の台所だから、私がこれを完成させなきゃ誰が完成させるんだって思うので、醤油も鍋の中に急にまくし、お酒も振りまくし、瓶に入っているものはそのまま入れちゃいます。あとは、鍋の中で話合ってた方が料理しているって思えるんです。全部鍋と私の面談のようにやっています。

――今まで料理をしてきた中で、失敗や大変だったと思うことはありますか?
滝沢: 唐揚げの物語が一番強い思い出ですね。私の実家がヘルシーだったから、低カロリー低カロリーで油を使わない家で、実家で揚げ物を食べたことがなかったんです。作り方を携帯で調べようとも思わない時代があって、揚げ方とか小麦粉を使うのも知らなかったし、かと思えば”唐揚げ粉”っていう優しい言葉に惹かれて使ってみたり。IHに揚げ物ボタンがあるんですが、そのボタンを押さないと頑張って温かくしてくれなくて、弱火で揚げてみると、食べたら中がグニョグニョのままだった……。悔しかったし、自分がカッコ悪くてすごく恥ずかしくなった気持ちは今でも覚えています。そこからすぐ成功という優しさもなくて、お互いにらめっこにらめっこが続いて、揚げ物を無事にできることになったのが20歳くらいのときです。
――ちなみにヘルシー実家ではどんなものが食卓に並んでいたのでしょう?
滝沢: しょっぱいホッケとか、お魚がすごく多かったですね。餃子も出たけれど焼き餃子ではなくて水餃子とか、野菜炒めの塩コショウ和えなどホントにヘルシー。カレーの煮込みを出さない家だったし、ハンバーグも外では食べたけれど、家では作れないものだと思ってました。初めて揚げ物を食べたのは実家を出た17歳のときかな。外でフライドポテトやナゲットを食べてこれが揚げ物なんだ!って。

料理は明日の架け橋
――そもそも滝沢さんが料理を始めたきっかけは何ですか?
滝沢: 17歳の頃、お腹が空いてどうしようもなかったからです(笑)。コンビニでレトルトのミートソースを買って、パスタの固いものから茹でたのが最初です。当時は毎日台所と戦っていて、ささくれもできちゃったり、指も切りそうになったり、たくさん失敗もあって味もうまくいかなった。それでも17歳から3年間も料理していると、台所が教えてくれるようになるし、昨日の記憶を辿ってここがダメだったなと思って。どんどんどんどんこれじゃダメだ、あれじゃダメだ、じゃあこうしてみようと、ダメ・ダメ・ダメ・いい・ダメ・いいをずっとやっていたら、だんだんいい・ダメ・いい・いい・いい・いいと、どんどん「いい」が多くなって楽しくなったんです。人はそうですよね。
なので本当に楽しいな、料理が好きで味を変化させたいなって思ったのは20歳くらいのときです。
――台所と滝沢さんの思いが通じあったような?
滝沢: 料理をしているときは、まず、お互い輝いていたいよねっていう気持ちになるので、台所も輝いていて欲しいし、自分も鍋もやっぱ楽しんでないと、料理に伝わっちゃうと思っています。食材を大切にするというか、楽しいから大切に扱ってるんだろうなっていう気持ち。
また、料理は自分が無になって音も何もない世界に入るのが好きです。火の音と換気扇の音と包丁を切る音で奏でる感じ、私そういう音がすごい好きで、グツグツ煮えてきて、ピチピチ踊りだした食材を見るのもすごく好きですし、波の音を聞いてるような貝に耳を突っ込んで音を聞くじゃないですか。ああいうイメージです。
――滝沢さんにとって料理とは?
滝沢: 一生仲間でいられるものだし、一生ついてくるものだと思うんです。私にとって料理は自分で作ったもので未来を作ると思っているので、その橋のようなものですね。すごい疲れちゃったし今日は料理したくないと思う日はあるけれど、でも明日のかけ橋のために栄養をとったら自分はうれしい、今は大変だけど明日はラッキーになる。私は結構先々を見て向き合っていくものだなって思ってます。切っても切れない友達のような、また親友になっちゃったよこの人みたいな(笑)。

●滝沢カレン(たきざわ・かれん)さんのプロフィール
1992年東京生まれ。2008年モデルデビュー。現在はモデル以外にもMC、女優と幅広く活躍。レギュラー出演番組に『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ)、『沸騰ワード10』(日本テレビ)、『伯山カレンの反省だ!!』(テレビ朝日)、『ソクラテスのため息~滝沢カレンのわかるまで教えてください~』(テレビ東京)など。

