女子アナの立ち位置。

心のバランスを崩さずに、ニュースとうまく付き合うコツ。【古谷有美】

ミレニアル世代ど真ん中のアナウンサー・TBS古谷有美さんによる、テレビとはひと味違う本音トーク。今回はテレビという報道の最前線の場にいる古谷さんからみなさんへ、ニュースとの付き合い方をお話します。

●女子アナの立ち位置。

ニュースを取捨選択して、うまく付き合う

連日更新される、新型コロナウイルス関連のニュース。あまりにたくさんの情報を浴びすぎて、心が重たくなっている方はいらっしゃいませんか?

私たちはいま、よくもわるくも、ほしいだけ情報を得られる世界に生きています。すべてのニュースを、シャワーのごとく全身で受け止めているけれど、それでは疲れてしまうことも……。

世界じゅうから同じ話題の新情報が飛び込んでくるいまだからこそ、ニュースの取捨選択が、とても大切です。とくにインターネットは、荒ぶる情報の海。いまにはじまったことではないけれど、スマホからなんにでもアクセスできることの怖さを、ひしひしと感じています。

現代において、テレビや新聞のニュースと、インターネットメディアや個人のSNSから発信されるニュースは、ある意味でフラット。どんなソースの情報も、もしかしたら同じくらいの重みで、同じくらい正確なものとして、受け止められてしまいます。でも、本当の信ぴょう性は、どうなのでしょうか?

ネットは速い。テレビは遅い?

たとえば個人のSNSやブログから発信される情報は、とても生々しいし、スピーディーです。速報性や流動性、迫力においては、群を抜いているでしょう。

それに比べれば、テレビのニュースは遅いかもしれない。けれどそのぶん、さまざまな角度から丹念に情報を精査しています。ひとつの事実に対してしっかりと裏をとり、どれだけのエビデンスがあるのかを調査してから、ようやくお茶の間に届けているんです。オンエアを見て「そんなの、とっくに知ってるよ」と思う方もいらっしゃるでしょう。でも、情報の精度を最大限に上げるためには、少々時間がかかるのだ……と、理解していただけたらうれしいです。
速報性では勝てないけれど、だからこそ確実な情報を。一つひとつわかりやすく、なるべく多くの人に届けたいと思っています。

だから、もしよろしければ。インターネットの“めちゃくちゃ速いニュース”だけでなく、テレビの“ほんのちょっと遅くても確かな情報”を、合わせて受け取ってください。とくに、さまざまな場所からの情報を集めて配信するニュースサイトやキュレーションメディアを活用している方は、そのニュースがどこから発信されたものなのか、ソースを確認するのもおすすめです。

むやみに「油断」も「安心」もさせちゃだめ。報道のバランス

報道に携わる者として、私は情報の真偽だけでなく、伝え方にも気をつけています。

たとえば、むやみに危機感をあおったり、誰かを批判したりすることって、すごく簡単。反対に、とにかくポジティブな情報を引っ張ってきて、のんきに安心してもらうこともできます。でも、どちらも正しくはありません。

テレビの天気予報で、気象予報士さんが「明日は、雪が降るかもしれません。お気をつけください」などとおっしゃいますよね。降ってもたいしたことはないだろうし、積もらないはずだとわかっていても、そうは言いません。「大変なのかも」と思っておいてもらったほうが、安全だから。
すこしだけ慎重に行動していただくように、警鐘を鳴らすのは私たちの役割です。だから、油断させず、でも必要以上に恐怖をあおらないようなバランスを、いつも模索しています。こうした危機的状況や災害時は、なおさらです。

それから必ず思っているのは、いままさに新型コロナウイルスと闘っている現場のこと。各々のフィールドで寝ずに頑張ってくださっている方々に、感謝を込めて、私は私の仕事をまっとうしています。

「批判・非難をすべてやめるデー」の効能

それから、情報を受け取ったあとの行動も、いまこそ気をつけたいなぁと思っています。
長引く自粛ムードのなかで、誰かに対してつい「自粛要請が出てるのに何をしてるんだ」とか「そんなことしているから感染するんだよ」と思ってしまう瞬間が、あるかもしれません。たしかに個人の責任が大きいこともあるとはいえ、誰かを責め立ててばかりいても、事態はよくならないんですよね。だからって、能天気に楽しいことばかり話そう、というのも違います。

ただでさえ暗い気持ちになりやすいいま、誰も非難合戦がしたい訳ではないでしょう。この状況では、どれだけ気を付けていても、誰だって感染する可能性がある。ウイルスへの感染はもちろん、わたしは、マイナスな考えや批判的な思いに自分の心が蝕まれてしまう事が怖いです。物理的な距離は離れていても、誰かを助け、支え合うためにこのエネルギーを使いたいものです。目を閉じて、誰かの顔を思い浮かべて、想うだけ。それだけでも、今はいいと思うのです。

誰も経験したことのない状況の中で、うまくいかないことがあるのは当たり前です。
悪者は、新型コロナウイルス。どんな立場であれ、みんな自分なりの闘いを必死でしている最中です。その中で、自分にとって本当に必要なものとは、大切にしたいこととは、日本で生きる選挙権のある大人として、この先の自分や家族の未来をこの国とどうやって生きていきたいか。生きるということや守るということを自分の問題として考えて、守られているということも、生かされているんだということも、今までよりぐっと鋭い感覚で考えている毎日です。

そういえば私は、3月末くらいに「否定することを一切やめる」という日をつくりました。自分のことも周りのことも、なにがあっても否定しない。自分の価値観では理解できない他人の言動だって、受け入れる。ひどいことを言われても「こんなこと言っちゃうなんて、この人、大胆ですごいなぁ」というように(笑)。

そうしたら、その日は一日、気持ちよく過ごせました。毎日だと別のストレスが溜まってしまうかもしれないけれど、たまにはそんな日をつくってみてもいいかもしれません。まだ続く自粛生活、心やすらかに頑張りましょう!

古谷有美へのご質問、募集いたします

いつもこのコラムを読んでくださっている皆様、ありがとうございます!
そんな皆様から、私へのご質問を募集させてください。

この記事の下の方にある「コメント欄」にて受け付けます。
いただいたご質問には、次回以降のコラムでお答えしていければと思います。
アナウンサーというお仕事のこと、わたし個人のこと、他愛ない質問まで、どんどんお寄せくださいませ。

1988年3月23日生まれ。北海道出身。上智大学卒業後、2011年にTBSテレビ入社。報道や情報など多岐にわたる番組に出演中。特技は絵を描くことと、子どもと仲良くなること。両親の遺伝子からかビールとファッションをこよなく愛す。みんみん画伯として、イラストレーターとしての活動も行う。
ライター・編集者 1987年の早生まれ。雑誌『走るひと』副編集長など。パーソナルなインタビューが得意。紙やWeb、媒体やクライアントワークを問わず、取材記事やコピーを執筆しています。趣味はバカンス。好きなバンドはBUMP OF CHICKENです。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。

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