女子アナの立ち位置。

【古谷有美】いまの私を切り取った、はじめての著書。“1620円分の価値”を背負うには

TBSの朝の顔、古谷有美アナ。またの名を「みんみん画伯」。インスタグラムに投稿される、繊細でスタイリッシュなイラストが人気です。テレビとはひと味違う、本音トークが聞けるかも。

●女子アナの立ち位置。

私が書籍を出すって、どういうこと?

7月5日に、はじめての書籍『you & me 女子アナの私、普段のワタシ』(双葉社)を出しました。

最初にご相談をいただいたのは、たしか去年の秋ごろ。「本の話がきてるよ」と言われ、なにかの取材を受けるのかな? と思っていたら、なんと、私が著者!? 歴代アナウンサーに本を出している方はいたけれど、TBS局内ではひさしぶりのオファーだったため、広報部も含めて“きょとん”となったことを覚えています。

私自身も、本を出したいと思ったことはありませんでした。イラストが好きだから、絵本や画集なら、興味もある。だけど「私のライフスタイルブックって……? そんなの、成り立つのかな?」と、不安だったんです。

梅雨空の下でナチュラルな表情を見せるTBSの古谷有美アナウンサー

もうひとつ懸念していたのは、本に“女子アナ”という記号がほしいだけだったら、私には向いていないということ。だってもうご存じのとおり、私、ちっともキラキラしていないんです。

私を見つけてくれた方々に、委ねてみたい

だけど、せっかく私を選んでくださった方がいるのなら、まずはお会いして、お話を聞いてみたいと思いました。

そんな気持ちで迎えた、はじめての打ち合わせ。来てくださった編集の方々はとても素敵で、私のことを“女子アナだから”なんてふうには、まったく見ていません。だから私も「こんな方々がつくる本って、どんな本なんだろう?」と、素直に興味がわいたんです。社内でも「古谷さんのいままで見えていなかった面とか、いいところとかを、新しく引き出してくださるんじゃない?」と言ってもらえて、心が決まりました。

いままでの自分だったらきっと、やらなかった。でも私に才能があるとするならば、それはきっと、自分じゃなくて誰かが見いだしてくれるものです。だからこそ、やさしく扉を開いて手招きしてくれた方々に、すべて委ねてみようと思えました。

ありのままの私を出し続けることに、きっと意味がある

SNSやtelling,のコラムなど、ここ数年で、自分の言葉を発信する機会は増えています。Webに放った言葉は、時間が経っても検索されたり切り取られたりしやすいし、一生消えない「デジタルタトゥー」なんて言葉もあるほど。でも今回はじめて紙の書籍をつくってみると、アナログならではの緊張感に驚いたんです。

書籍はテレビやWebと違って、お客様がわざわざお金を出してその手に取ってくださるものだから、より責任やプレッシャーを感じるのかもしれません。だから、ちょっとした原稿の言い回しやイラストの細かいところまで、妙に気になる……すごく不思議な感覚を味わいました。

本にするならちゃんとしたものをつくらなきゃ、しっかりやり遂げなくちゃ、という気持ちも強いタイプ。とはいえ、私が日ごろ考えていることなんてたいした内容ではないし、大好きなジェーン・スーさんみたいにパンチの効いた言葉も、私からは生まれてきません。

だけど、このゆる~い文章を必要としてくれている人がいるから、Webでの連載を続けてこられて、こんな書籍のお話までいただけた。だったら私は肩肘張らず、ありのままで。“いまの私をそのまま出すこと”だけを心がけて、みなさんのお手元に言葉とイラストを届けたい、と思ったんです。それを読んで共感したり、へぇ~と思ってくださる方がいらっしゃるなら、ちゃんと意味があるはずだと、いまは感じています。

自分の本なのに、自分のアップデートを感じられる

完成した本を読んだときは「なんだか大人になったね~」という気持ち(笑)。こういう失敗もあったな、こんなことに悩んでたときもあったと、以前の私を俯瞰できました。たしかに私から生まれた言葉やイラストなのに、実際に原稿やデザインになったものを見てみると「私、こんなことを考えてたんだ」「いますでに、すこし変わりはじめてるな」って感じたりもして。

最初で最後の書籍にすべてを出し尽くすつもり、だったけれど。できあがってみたら「いまはこんなふうにも思ってる」「ここをもっとアップデートして、また伝えてみたい」なんて、欲張りなことも考えています。半年遅かったり早かったりしたら、きっとまた空気の違う本になっていたはず。つくづくいまの私は、いろんなことが変わったり動いたりしているタイミングなんだな、と再認識できました。

さまざまなプロの方のお力を借りて、とっても素敵な本に仕上げていただいた『you & me 女子アナの私、普段のワタシ』。いまもやっぱり不安はあって「1620円分の価値が出せたかな」なんて思ってしまうけれど……ぜひ、感想を聞かせてください。私たちは普段、カメラの向こうにどんな瞳があるのか、知るよしもありません。でもきっとこの本を通して、その瞳が見えてくることもあるはず。どんな方が手に取ってくださっているのか、どんなふうに読んでいただけているのか……しばらくドキドキしながら、過ごそうと思います。

続きの記事<何かと注目を集めてしまったこの数カ月。乗り越えて見えてきた景色>はこちら

古谷 有美さんの著書、好評発売中です。

you & me 女子アナの私、普段のワタシ

you & me 女子アナの私、普段のワタシ

著:古谷 有美
発行:双葉社 

1988年3月23日生まれ。北海道出身。上智大学卒業後、2011年にTBSテレビ入社。報道や情報など多岐にわたる番組に出演中。特技は絵を描くことと、子どもと仲良くなること。両親の遺伝子からかビールとファッションをこよなく愛す。みんみん画伯として、イラストレーターとしての活動も行う。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。
ライター・編集者 1987年の早生まれ。雑誌『走るひと』副編集長など。パーソナルなインタビューが得意。紙やWeb、媒体やクライアントワークを問わず、取材記事やコピーを執筆しています。趣味はバカンス。好きなバンドはBUMP OF CHICKENです。