2カ月で産休復帰し、沖縄との二拠点生活。「よくできるね?」って言われるけど
●知念美加子の「MY LIFE, MY CLOSET」13
産後2カ月で仕事復帰
2019年8月、第1子となる男の子を出産しました。結婚後は沖縄に住む夫と別居婚を続けながら、雑誌やコレクションのスタイリングやブランドのプロデューサーのお仕事をしていたのですが、7月に本格的な産休に入り、生まれ故郷であり夫が暮らしている沖縄へと帰りました。
産休期間中は、想像していたよりはるかに大変でした。スタイリストとして長年、早朝の撮影仕事からくる寝不足や重い荷物を持つことには慣れていて体力にはかなり自信があったはずなのに……育児に気力と体力を消耗する日々は不安の連続。あれ?こんな咳してたっけ?なんだか呼吸が浅いような……そんな息子のかすかな変化にも一瞬たりとも気を抜けない。離れることが心配で、時にはドアを開けたまま用を足したことも。
記憶の全くない2カ月間はあっという間に過ぎ、当初の予定より1カ月早い10月23日には完全な産休・育休期間を終え、東京で撮影の仕事をしていました。産後2カ月での現場復帰。世間的にはかなり早いかもしれません。現在は月のうち1週間、子どもを沖縄の家にいる夫に託し、東京で仕事をしています。いわゆる二拠点生活です。
周りからは驚かれます。「子どもが心配じゃない?」「えらいね」「旦那さん、協力的だね」等々。
でも、本当に心配じゃないんです。子どもと離れるのが寂しくて家を出るときに泣いちゃうことはあるけど(笑)、私だけの子どもじゃない。産後から仕事復帰するまでの2カ月、夫と一緒にみっちり子育てをし、夫にも「協力」ではなく「自分が育てているんだ」という気持ちでいてもらっているので、心から信頼して仕事に行くことができています。
相手の育児を否定しない
夫とのコミュニケーションで心がけているのは、「どうせあなたにはできないでしょ」というスタンスで物事を頼まないようにすること。それから、育児については2人とも平等に初心者だということを忘れないようにすることです。
妊娠期間を経ている分、女性の方が子どもがいる実感を持つのが早いことは事実。でも、夫の抱いている愛情や彼なりに学んできた育児のやり方を否定しないようにしています。
たとえば子どもを撫でる動作一つとっても、正直ドキッとすることはある。「私ならこうしない」って思うこともある。でも、私のやり方が正解だとは限らないですよね。それは私が学んできた常識にすぎないから。夫も私も親になるのは初めて。彼の気持ちや方法も尊重していくことで、どちらかにだけ育児が偏らないようにするのが我が家のポリシーです。
1カ月検診で夫と病院に行った時のこと。お医者さんがずっと私にばかり話しかけてきたんです。私は意識的に夫に「あなたもこの話聞いていて欲しい」などと言葉をかけて、夫を会話の中に巻き込むようにしたのですが、どうしても先生は「お母さん、お母さん」と。もう少し「母に向けて」だけじゃなく「両親へ向けて」という感覚が社会全体に広がっていって欲しいなぁと思いました。
それでも、私もふとした時に夫に「手伝ってくれて〜」という表現をしてしまい、後からはっとすることもあります。「手伝う」ではなく「一緒に育てていく」というスタンスを共有しているつもりでも、うっかり気持ちとは違う言葉を使ってしまって、自分の心のどこかにまだ「手伝ってもらってる」感覚があったのだと反省したり。
フリーなりの不安
私も夫もフリーで仕事をしているということもあり、会社勤め同士の夫婦とは時間の使い方は少し違うかもしれません。長らく休んでいた会社にフルタイムで戻るのと、自分のペースで少しずつ仕事に復帰していくのとでは、また意気込みや不安も大きく異なると思います。
一方で、保育園の入園希望資料にフリーランスを想定した項目がなかったりと、子どもを持ったことで知る世間の常識との差もあります。ましてやお母さんが二拠点生活なんて!と思う方もいるのかもしれません。
自分たち夫婦がそうした常識とは今のところ外れていることを傍目に感じながらも「これが世の中なんだね」なんて受け入れながら、自分たちらしいやり方を模索している最中です。
産前と同じように働いていけるのかはまだわかりません。難しいかな。
でも新しい働き方、生き方がスタートしていく感じ。
沖縄に3週間、東京に1週間のこの暮らし。ファッションの仕事をしていく上では制約を感じることもあるしネガティブに捉えてしまうこともありました。でも見方を変えたら超VIPなライフスタイルかも(笑)。今はそう言い聞かせて乗り切っています。