佐藤玲さん「自由に演じていい」バカリズムさんにかけられたひと言が演技の幅を広げた
映画化で喜びに溢れた再会。「続編があるといいね」が現実に。
――ずっと続くような気がしたドラマ『架空OL日記』が終わってしまい、続編を期待していました。佐藤さんは映画化のお話を聞いた時、どう思われましたか?
佐藤玲さん(以下、佐藤): 「またみんなに会える」と嬉しい気持ちが一番にありました! ドラマが終わる時、みんなで「続編があるといいね」と話していたんです。そうしたらドラマではなく映画化。正直、映画になったらどんな感じになるの?と予想がつかなかったのですが(笑)。
最初は、久しぶりの再会にちょっとどぎまぎしていましたが、すぐに打ち解け、ドラマと同じ世界観、ドラマの時と変わらない現場の雰囲気に。同じメンバーと一緒に続編ができて本当に嬉しいです。
背中を押してくれた「佐藤さんの思うように演じて」というバカリズムさんの言葉。
――OL経験はない佐藤さんですが、演じる上でOLの役作りや、意識したポイントはありますか?
佐藤: OL経験はないですが、思い出したのは「部活」。中学の3年間バスケットボール部で、先輩や後輩がいて、その中のやり取りや雰囲気に近い部分があり自然に演じることができました。環境は違っても女性同士の人間関係ってそうは変わらないものですよね。
――映画もドラマも、女性からするととてもリアリティーがあり、なかでも佐藤さん演じる年下後輩OLのサエちゃんのリアリティーは抜群でした。バカリズムさんからはアドバイスや演技指導などはありましたか?
佐藤: 特に升野さん(バカリズム)からそういう指示はありませんでしたが、原作のブログに登場するサエちゃんと、映像化されるサエちゃんには容姿やキャラクターに違う点があって、そのギャップをどうしたらいいのか悩み、升野さんに相談したことがあります。升野さんは「そこにとらわれず、佐藤さんのサエちゃんを自由に演じてください」と、思うようにやっていいよと後押ししてくれました。
――アドリブも多いのでは?と感じたのですが、実際は?
佐藤: 基本的には台本通りです。でも、一部ナレーションのシーンでは「カット掛かるまで、そのまま繋げて」と升野さんがおっしゃり、アドリブで話し続けたことも。それで「今の声のトーンいいね」、「今のおもしろかったからストーリーに取り入れよう」と拾ってくださり、現場ならではの作品づくりもありました。
映画の撮影では、OL更衣室のスタジオセットのすぐ前に長机を置いて、そこでみんなでご飯を食べてそのままセットに戻ったり、時には更衣室のセット内で食べたことも(笑)。更衣室と机を行ったり来たりしていたので、その日常感が映画版にはさらに反映されていると思います。
――バカリズムさんも、OLキャストの1人として自然に馴染んでいたのですか?
佐藤: はい、ナチュラルに。升野さんって独特で不思議な雰囲気のある方で、もちろん男性なんですけれど中性的というか。もう性別を超えた「升野さん」という存在として、私も男性だとか意識せずに接していました。
プライベートも共有する、仲間のような存在と出会えた特別な作品に。
――映画の撮影で、一番印象に残っている出来事やエピソードを教えてください。
佐藤: 撮影中だったのか、それ以外だったのか区別がつかなくて思い出せない……。そのくらい楽しい現場で、その後プライベートでもグループラインを作って、みんなでちょこちょこ食事に行くほど仲良くなれたことですかね。
あの5人で集まると、本当に撮影と変わらない空気感でごはんを食べて話して、絶妙なバランスなんです。それぞれ役とは性格も違うのに、仲間としての関係性は現実にも引き継がれていて。みなさんいろいろな経験を経て来られた先輩ですから、教えてもらうこともたくさんあります。私は27歳なので、20代後半の女性の悩みをお姉さんたちに聞いてもらうなんてことも。
――それ、気になります。20代後半女性の悩み、具体的には?
佐藤: 私自身は全然、全く予定はないのですが(笑)、仕事とプライベートのバランスや、結婚や人生設計などについて、少し前にご結婚された臼田あさ美さんに聞いたり。私にとっては、心強い仲間のような人たちとの出会いに恵まれた、大切な作品になりました。
人生で1度は「バンジージャンプ」。度胸をつけてアクティブで幅の広い30代を目指したい。
――27歳というと、OL界では「中堅」という立場にもなる年齢ですが、20代でやっておきたいことや、これからこんな30代になりたいという目標などを聞かせてください。
佐藤: 今の仕事は10代からやりたくてやってきた仕事で、最近やっと「職業は?」と聞かれたら「女優です」と言える、それらしき肩書きがついてきたと思えるようになりました。その目標ラインに何とか届いたので、次は……と考え始めたところです。
――佐藤さんは舞台のお仕事からスタートされていますよね。
佐藤: はい、15歳から20歳まで舞台中心、映像作品に関わったのは21歳からなので、映像の方が挑戦という感覚があります。でもいざ舞台に戻ると、こちらもまた、ただただ挑戦。それぞれのおもしろさがあるので、「雑食」の精神でいろいろなジャンルのお仕事をしていきたい。ナレーションや旅番組なんかもやってみたいです。
――旅行がお好きなんですか?
佐藤: 実は私インドア派で、旅番組を観て「いつかクロアチアに行ってみたい」と思いつつ、もう何年も過ぎています……。少し慎重な性格なので、度胸と覚悟をつけるために、20代のうちにバンジージャンプかドドンパに乗ろうと思っているんです(笑)。
――じゃあ、クロアチアでバンジージャンプとか。
佐藤: それですね!ジャンルも世界も横断できる、アクティブな30代を目指したいです!
●佐藤玲(さとう・りょう)さんのプロフィール
1992年、東京都生まれ。蜷川幸雄演出舞台『日の浦姫物語』の娘役でデビュー。2012年には、映画『おばけ』で若手のクリエイターの映画祭ムージックラボで主演女優賞を受賞した。2017年に、ドラマ版『架空OL日記』にレギュラー出演。高い演技力が評価され、多数のドラマや舞台、CMで活躍している。
『架空OL日記』
原作:バカリズム「架空OL日記」(小学館文庫)
監督:住田 崇 脚本:バカリズム
出演:バカリズム、夏帆、臼田あさ美、佐藤玲、山田真歩、三浦透子、シム・ウンギョン、石橋菜津美、志田未来、坂井真紀
https://www.kaku-ol.jp/