小泉進次郎の育休宣言で注目。「男の育休義務化」論にフリーランスがモヤる理由
小泉進次郎氏の育休取得、7割強が支持
今年1月、第1子が誕生した環境大臣の小泉進次郎氏(38)。出産から3カ月の中で、2週間分の育児休業をとると宣言しました。現役閣僚の育休取得が史上初ということもあり、賛否両論を巻き起こして注目を集めています。小泉氏は自身のブログで育休取得を決断した経緯や葛藤を説明し、「私なりの育休を実践していきます」と綴っています。
保険相談サービス「ほけんROOM」がインターネット上で小学生以下の子どもを持つ親1178人を対象に行った調査では、小泉氏の育休取得に肯定的な印象を持つ人が約75%という結果が出ています。
理由としては「育児は女の人だけがするものではないから。政治家が積極的に見せることで、一般企業もとれるように広めてほしい」など、国会議員が率先して行動することが支持されているようです。
男性の育休取得率は6%という現実
一方、同調査の「現在、男性の育休はとりやすい環境だと思いますか?」という質問に対しては、約83%が「思わない」と回答しています。
実際、厚生労働省の調べ(「平成 30 年度雇用均等基本調査」)では、男性の育休取得率(※)は約6%。前回の調査より取得率は1.02ポイントほど上がっているものの、いまだ男性が育休をとりづらい社会なのが現実です。政府は2020年に男性の育休取得率を13%に引き上げる目標を掲げていますが、このままのペースでは達成は難しいでしょう
※(2016年10月1日~2017年9月末までの1年間に配偶者が出産した男性のうち2018年10月1日までに育児休業を開始した人)
なかなか変わらない現状に対して、ついに、男性の育休取得を「義務化」すべきだという議論も出てきました。
2019年6月には、男性の育休義務化を目指す議員連盟が発足し、安倍晋三首相に提言を出しました。男性社員からの申請がなくても、企業側が育休をとらせることを法律で定める、というものです。その背景には、企業や労働者側の自主性に任せているだけでは、なかなか取得率が向上しない、という考え方があるのでしょう。
男性の育休取得の義務化、賛成は半数以上
果たして、人々は男性の育休義務化を望んでいるのでしょうか。人材サービス「しゅふJOB」が運営する「しゅふJOB総合研究所」が働く主婦層を対象に行った調査では、「男性の育休取得を義務化すべきだと思うか」という質問に対して、約52%が「思う(賛成)」、約28%が「思わない(反対)」と回答しました。
ここで注目すべきなのは、世代や家庭収入の支え手が誰かによって賛否が異なる傾向にある点です。
まず世代別に見ると、若い人ほど、義務化に積極的なようです。共働き世代の30代以下では、男性の育休義務化に「賛成」は約61%ですが、50代以上は過半数割れの約48%という結果になりました。
家庭収入の主な支え手の違いで見てみると、家計を主に支えているのが女性の場合は約60%、配偶者またはパートナー(男性)の場合は約52%が「賛成」となっています。
共働きなどで稼ぎ頭が妻の場合は、夫が育休をとる経済的な余地があるため賛成派が多くなる一方、専業主婦など家計を支えているのが男性である場合は世帯収入が減ってしまうため、男性が育休を取得することに否定的なことが見て取れます。
賛成派からは「(男性の育休は)とりたくてもとれない人も多く、その場合は国が介入し、ある程度法律にしないと難しいのかな(30代:派遣社員)」、反対派からは「育休をとることで、復帰した時に降格とかしたり、これ以上給料が減るのは困る(40代:パート/アルバイト)」などの声が上がっています。
「旦那さん、育休とらないの?」という質問にモヤモヤ
こうした調査結果は、フリーランスで仕事をしている筆者の実感とも重なります。
筆者は昨年5月に第1子を出産しました。フリーランスのため、会社員など健康保険や雇用保険の加入者ならば支給される「出産手当金」や「育児休業給付金」はありません。仕事をしない=収入ゼロ、となるため世帯収入は半減しました。
周りから「旦那さん、育休とらないの?」と聞かれるたびにモヤモヤした気持ちになるのは、この「出産によって世帯収入が半減する」という現実があるからです。会社員の夫に育休制度について聞いたところ、「とろうと思えばとれる」とのこと。ただ、仮に夫が育休をとると、その間の収入は7割程度に落ち、さらに世帯収入が減ります。
筆者が会社員だったら、手当金があり、社会保険も免除となるため、迷いなく夫の育休取得を後押しし、男性の育休取得義務化にも「賛成!」を唱えたと思います。
男性の育休取得を義務化することで、日本社会が大きく前進するであろうことは理解しています。それを踏まえたうえで、あえて言いたいことは、人にはそれぞれ事情があるということ。そして、「男女問わず、育休をとりたい人がとれる社会」になってほしいということです。