“生理最多時代”を生きる女性たちに知っておいてほしいこと

人類史上最多の生理を経験している現代女性には、自分の体や性について正しい知識を身につけてほしい――。令和2年の新成人女性を中心にしたトークイベントが11日、大丸梅田店(大阪市)が運営する女性の性や健康に関する新たなゾーン「michi kake」(ミチカケ)で開かれました。登壇した産婦人科の医師は、「知識をつねにアップデートしてほしい」と呼びかけました。

「現代の女性は生涯に何回くらい生理を経験するでしょう?」

イベントの冒頭、こんな質問が参加者に投げかけられました。

答えは、400~450回。

一般に、12歳ごろに初潮を迎え、50歳過ぎに閉経するとして数えた時の数です。大昔の女性は多産であったことなどから平均すると50回程度に過ぎなかったそうですから、何と9倍もの開きがあります。

生理の回数が増えたということは、生理痛やPMS(月経前症候群)が頻繁にやってくるということ。排卵前の1週間程度を除き、常に何らかの不快感やモヤモヤにさらされる女性が少なくありません。生理が日常に支障を来すほどの“困りごと“になっている「月経困難症」の潜在的な患者数は、国内で約800万人。生理がある女性の3人に1人が何らかの症状に苦しんでいる計算になります。

一方で、この日登壇した産婦人科医の甲賀かをり東京大准教授によれば、若い世代の女性患者たちの中には、生理周期や前回の生理日を尋ねても答えられない人が少なくないと言います。「メイクや髪形を気にするほどには、生理に注意を向けていない。オープンに語るべきではないとタブー視され、正しくない情報が都市伝説化している」と嘆きます。

売り場では期間限定で「生理ちゃん」のキャラクターショップを展開した

生理は人からうつるってホント?

「生理は人からうつる」というのもその一つ。「ネズミは一緒に過ごしていると生理周期が一緒になりがちとの研究結果もあるけれど、人間にはエビデンスがありません」と甲賀さんはきっぱり。

「生理中のセックスは妊娠しない」というのも、”正しくない情報”の一つと言えます。イベントの中で、「生理中のセックスは妊娠しないと思っている人?」と会場に問いかけると、ちらほらと手があがりました。甲賀さんは「生理中は妊娠しづらいのは事実ですが、絶対妊娠しないという時期はありません。そもそも生理と思い込んでいたら、実際は排卵による出血で、むしろ妊娠しやすいということもあり得ます」と強調しました。

さらに、甲賀さんが参加者に「婦人科のかかりつけ医はいますか?」と訪ねたところ、今度は挙手した人は0人でした。ひどい生理痛の背後には、子宮筋腫や子宮内膜症といった病気が潜んでいることもあります。「生理痛に悩む人は自己判断で鎮痛剤を飲んでやり過ごすのではなく、婦人科の診断を受けてほしい」と甲賀さん。「婦人科は『妊娠したら行くところ』ではありません。生理不順、PMS、生理痛……薬も治療法も提示できるので、ぜひ気軽に産婦人科やレディースクリニックにかかってほしい」

低用量ピルも一つの「解」に

生理との付き合い方の一つとして甲賀さんが提案するのが、低用量ピルの服用です。ピルの服用で排卵を抑制することにより、生理痛や経血量が抑えられ、負担感の軽減につながります。ところが避妊目的のイメージが強く、セックスと結びつけて考えられがちなことが、若い世代への普及を妨げてきたと指摘します。

血栓症や肌荒れといった副作用を心配する声もありますが、「低用量ピルが認可され、リスクは軽減しています。種類も豊富なので、より自分に合うものを選べるようになっています」と甲賀さん。月経困難症の治療目的であれば保険適用となり、ジェネリックを選べば1カ月の負担額を千円以内に抑えることも可能だと言います。

イベント終盤、甲賀さんは参加した女性たちにこう呼びかけました。「生理に振り回されて、毎月、仕事や学校を休まざるを得ないのはばかばかしいこと。上手に付き合う方法を大人のたしなみとして身につけてください。正しい知識は自分を助けます。知識を常にアップデートし続けてください」。

参加した20歳の短大生の女性は、「重い生理痛に悩んでいました。ピルは副作用が心配だったけど、今日の話を聞いて検討してみようかなと思いました」と話していました。

会場は、昨年11月に大丸梅田店内にオープンした、女性の性や健康に関する新たなゾーン「michi kake(ミチカケ)」の一角です。女性の“リズム”に寄り添うことをコンセプトにした売り場には、最先端の生理用品や女性用のアダルトグッズも並び、注目を集めています。

今回のイベントは、michi kakeのメディアパートナーで、生理や排卵予定日を案内する健康情報サービス「ルナルナ」が主催。ルナルナを運営するエムティーアイ広報の小林礼さんは「生理をテーマとするセミナーを百貨店というオープンな場所で開いたのは初めて。生理をもっと当たり前のこととして発信していきたいです」と語っていました。

朝日新聞記者。主な担当領域はファッションとセックス。夕刊紙面で女性の性に関する本音をつづる「オトナの保健室」の取材メンバー。4歳の息子への性教育を模索中。趣味はイヤリング収集(そしてすぐ紛失する)。