telling,の取材に答えた伊沢拓司さん。右はYouTubeのチャンネル登録者数100万人突破の記念に送られた金の盾

クイズ王・伊沢拓司「自分らしくクイズで輝く。あくまでアイドルではありません」

「東大生クイズ王」として名をはせたクイズプレーヤー・伊沢拓司さん(25歳)。「東大王」(TBS)などでの活躍に加え、2016年に立ち上げたクイズメディア「QuizKnock」は2019年にYoutubeのチャンネル登録者数が100万人を突破するなど、エンターテイメントとしてのクイズの可能性を広げ続けています。ミレニアル女性のファンも多いという伊沢さんに、クイズにかける思いをうかがいました。

負けを認めないのが一番ダサい

――いま、伊沢さんのTwitterのハンドルネームが「欅坂46にクイズで負けた伊沢拓司」になっていて、インパクト大です。テレビ番組で欅坂46に敗れて、事前の約束を守って変えられてたんですよね。「クイズ王」として、負けを認めたくない気持ちはないんですか?

伊沢拓司さん(以下、伊沢): 欅坂46ともすごくいい勝負をしたので、負けてもすがすがしいくらいの気持ちですよ。純粋に相手が強かったんだと思います。

「クイズ王」なんだから負けちゃいけない、という気持ちは全て捨てましたね。そもそも万能な人間なんていないんです。「クイズ王なのにこんなことも知らないの?」という批判を自分の中で全部シャットアウトできるようになったことが、今の自分の活動を支えているとも思っています。

――なぜそこまで潔く思えるようになったのでしょうか。

伊沢: クイズ番組に出演しはじめた中学生のころから、たくさん間違えて、大量に負けてきた経験があるからでしょうか。その結果、負けを恥ずかしがったり、負けても実力を認めないのが一番ダサいと思えるようになりました。

負けに慣れる必要はないですが、実力通りやって負けたのならしょうがない。それに、仮に知らない問題が出ても「知らない!!」と言いきってトークを面白くする方法を考えたり、「修行不足ですね」と自分の弱さを認める方が、自分には合っていると思っています。

僕にとっての一番のプライオリティは、「クイズの美学」を崩さないこと。僕は自分でもプライドが高いとは思いますが、だからこそ、負けは負けと認める。それがもっとも論理的だと思います。

telling,の取材に答える元東大生クイズ王でQuizKnock代表の伊沢拓司さん

――QuizKnookのメンバーは若い女性にも人気ですが、アイドルのように見られることに対してどう思いますか。

伊沢: これはメンバーの中でも意見が分かれるところで、そう見られることが好きな人もいれば、違和感を感じる人がいるのも確か。ただ、僕たちらしく好きなように発信しているし、受け手側も自由に見てもらっていいのかなと思います。

僕自身もテレビに出ている影響か、アイドル扱いされるようなこともありますが、自らそこに寄せていく気はさらさらないですね。歌手デビューしなさいとか、ステージで踊れと言われても全力で断るでしょう。僕たちは「クイズを使って学びを伝える」ことに関しては最強だしオンリーワンだという自負がある。そういう意味では高級なブランドの服を着たりするのも何か違うし、自分達らしくキラキラ出来る場面はたくさんあるので、最低限、軸がブレないように輝こうと思っています。

休日は時間単位。「予定はパッツンパッツン」が最高

――お休みの日はどうやって過ごしていますか?そもそも休日はありますか?

伊沢: 2019年は丸々一日休みだった日は一日もなかったですね。4時間休とか、時間単位の休み方はしましたが。

僕は空き時間はどんどん埋めていきたいタイプ。4時間休があれば買い物に行ったり、ご飯を食べるために遠出したり、ジムに行ったり、社内でフットサルをしたりと、常に動き回っています。

telling,の取材に答える元東大生クイズ王でQuizKnock代表の伊沢拓司さん

――プライベートはメンバー以外の友人と会ったりするのでしょうか。

伊沢: そういう日もありますが、僕は基本的に一人でいるのが好きなんです。人と飲みに行くより、一人で予定をぎっしり詰めてキツキツで動くのが好き。忙しい方が終わったときに達成感を感じるし、一人でせわしなく生きていきたい。なるべく効率的に、そのときにやりたいことをやりたいんです。

たとえば、買い物に行っても、途中でギター練習のスタジオに行って、スタジオの中ではどう動いたら効率が良いか考え、また買い物に戻り、この時間はサッカーの試合見て、ここは本屋に行って、ここは図書館で2時間作業、みたいな。パッツンパッツンになっているのが最高!風呂に入ってもお湯につかってボーっとしているのが苦手で、常に携帯をいじってますね。

――聞いているだけでとてもパワフル!それは子どもの頃からですか?

伊沢: そうでしたね。塾の時間ギリギリまでグラウンドで遊んでいるのが好きでした。大人になった今でも、ゆったり何かしようというのがない。朝起きて夜寝る直前まで何か続けていますね。毎日きっちり8時間以上働きたいし、毎日極限まで働いて極限まで遊びたいと思っています。

「知る」と「楽しい」のループを届けたい

――QuizKnock では、日々新しいクイズが発信されていますが、どのように企画を考えているんですか?

伊沢: 企画については、いくつかのルールを決めています。たとえば、「予想通り」×「予想外」の組み合わせにあてはめるという発想法。「予想通り」×「予想通り」ではファンが飽きて離れてしまうし、「予想外」×「予想外」だと視聴者はついてこられない。QuizKnockで人気だった企画のひとつに、東大生がバカ田大学(=赤塚不二夫の漫画「天才バカボン」に登場する架空の大学)の入試問題を解く、というものがあります。東大生が受験に挑戦するのは「予想通り」ですが、日本一バカな大学に挑戦するのは「予想外」で、「予想通り」x「予想外」のルールに沿っているわけです。

――10月に発売された書籍『QuizKnockファンブック』の販売も好調で、Amazonと紀伊国屋書店で総合ランキング1位を獲得し、2カ月で4回の重版になっているとのこと。YouTubeチャンネルの登録者数も昨年100万人を突破しました。幅広い層に受け入れられているのはなぜだと思いますか。

伊沢: クイズには「知識を得て」「楽しむ」という2段階の流れがありますが、「知識を得る」作業のハードルが高いと思って敬遠している人もたくさんいると思います。そこでQuizKnockが力を入れているのは、「楽しむ」と「知る」を同時に提供すること。一度クイズの楽しさを知った人は、自然とクイズを解きたくて、知識を増やすことのハードルが下がります。それでこれまで解けなかった問題が解けたらもっと楽しくなって、もっとハードルが下がる。楽しさのループにはまって、クイズファンになっていくわけです。

『QuizKnockファンブック』を手にとる元東大生クイズ王でQuizKnock代表の伊沢拓司さん

クイズの楽しさを知ってもらうために、僕たちもプールに入りながらクイズを解いてみたり、google本社の前まで行ってgoogle社の入社問題を解いてみたりと、さまざまなシチュエーションを取り入れながら楽しめるコンテンツをつくっています。常に新しいものを取り入れようと頑張ってきた結果が、今につながっているのではないかと思っています。

●伊沢拓司(いざわ・たくし)さんのプロフィール
1994年茨城県生まれ。クイズプレーヤー、YouTuber、起業家、タレント。開成中学校・高等学校を経て、東京大学経済学部を卒業。高校時代に日本テレビのクイズ番組「全国高等学校クイズ選手権」を2連覇。「東大王」(TBS)では東大生チームの主将を務めるなど、クイズ番組などで活躍。2016年にクイズを題材としたウェブメディア「QuizKnock」を立ち上げ、編集長を務める。

『QuizKnockファンブック』

著者:QuizKnock 出版社:クラーケン

クイズ王・伊沢拓司さんが率いるQuizKnockの公式本第2弾。彼らのこれまでと現在をオールカラーで記録したクイズ&データブック(写真&イラスト多数)。

東京生まれ。千葉育ち。理学療法士として医療現場で10数年以上働いたのち、フリーライターとして活動。WEBメディアを中心に、医療、ライフスタイル、恋愛婚活、エンタメ記事を執筆。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。