自分に自信がない、自堕落沼から抜けられない……「今のままではいけないな」と思う人に勇気をくれる映画3選

2020年は自分をリセットして前向きに生きたい――。そう思っているみなさんへオススメの映画を3作品選んでみました。自分に合いそうな作品を、ネット配信で選んでみて下さい。

「今のままではいけないな」と思いながらも、日々の忙しさに追われて結局何も行動できないまま一年が過ぎてしまった、という方も多いのではないでしょうか? そんな方にオススメの「新しい年に新しいことを始める勇気をくれる映画」3作品をご紹介します。 

『メリッサ・マッカーシー in ザ・ボス 世界で一番お金が好き!』 

最初にご紹介するのは『メリッサ・マッカーシー in ザ・ボス 世界で一番お金が好き!(2016)です。(DVD 動画配信:Netflixamazon prime video You Tube Google Play) 

絵:亀石みゆき

主人公のミシェル・ダーネルは「私は全米で47番目に裕福な女」と豪語するほど、ビジネスの世界で成功をおさめていました。ところが、元恋人からインサイダー取引を密告されて服役することに。出所後、無一文になったミシェルは元部下のクレアの家に転がり込みます。そこでクレアの焼くブラウニーの美味しさに目をつけ、ブラウニー会社を設立して再起を図ろうとするストーリーです。 

ミシェルの言動は一見「お金のことばかり主張して下品だ」と思われがちですが、例えばこんなふうに置き換えて考えてみたらどうでしょうか。 

私の場合、子どもを産んだ後、急に「ママさんイラストレーター」とか「育児の合間のお小遣い稼ぎ」などと言われて仕事を安く見積もられることが多くなりました。子どもの幼稚園や学校のバザーで作ったハンドメイド品が「愛情」や「優しさ」という言葉にコーティングされ、「労力」の部分をそっくり無視された値段をつけられることもありました。そんなモヤモヤが、そのままこの作品の中の「ブラウニー」という商品や「ダンデライオン」という女子のボランティア組織に象徴されていることに気付きました。 

ミシェルの「え? それっておかしくない?」というストレートな疑問とパワフルな行動力は、今まで自分を抑圧していた自信のなさや固定観念を打ち破って「やっぱりそれっておかしいよね!」と言える勇気をもらえたように思います。 

「新しいことを始める」という時、「やったことがないことを始めよう」と思いがちですが、クレアの焼くブラウニーのように「今まで自分がやってきたことを新しい手段でさらに発展させる」というのも一つの方法だと思いました。 

ミシェルの教えを胸に抱き、自分もダーネルズ・ダーリン社の一員になったつもりで拳を振り上げると心の底からフツフツと行動する力が湧き出てくる、そんなパワーを持つ作品です。 

『ジュリー&ジュリア』

 次にご紹介するのは『ジュリー&ジュリア』(2009)です。(DVD  動画配信:Netflixamazon prime video You Tube Google Play) 

絵:亀石みゆき

これは実話をもとに作られた作品で、1949年のパリに暮らすジュリアと2002年のニューヨークに暮らすジュリーという二人の女性の人生を「料理」を通じてシンクロさせながら物語は進みます。

 夫の赴任先のパリで何もすることがないジュリアは「何かやりたい」と、帽子作り教室やブリッジ教室に通ってみるもののどれもピンと来ません。

 狭いデスクで一日中クレームの電話を受けているジュリーも友人に触発されて「ブログを始めよう」と思うものの、何を書いたらいいのかわかりません。

 そこで2人は「自分が本当に好きなのは何?」ということを自分自身に問いかけます。ジュリアは「食べること」が好きで、ジュリーは「料理をすること」が好きだと気付き、それが人生を大きく変えるきっかけとなるのです。

 このように「何かやりたい」という気持ちはあるものの「何をすればいいのかがわからない」という人は多いのではないでしょうか? そういう時には「自分が本当に好きなことは何?」と自分の心に聞いてみましょう。

 私の場合、「講師の方のファンで一度お会いしてみたい」というだけの気持ちで通い始めたライティング講座を受けているうちに「あ、私、本当は文章を書くのが好きだったんだった」と気付くことができました。それをきっかけに文章を書くのが楽しくなり、リトルプレスを作ったり文章を書くお仕事をいただいたりと確実に世界が広がりました。

 「ただ好きなだけで上手じゃないから」などと遠慮せずに、自分の中の「好き」のパワーを信じて動いてみると、ジュリーとジュリアのようにきっと新しい世界が広がることと思います。

 『百円の恋』

 最後にご紹介するのは『百円の恋』(2014)です。(DVDBlu-ray  動画配信:Netflixamazon prime video You Tube Google Play) 

絵:亀石みゆき

短大を卒業後、仕事もせずに実家でひたすら自堕落でだらしない生活を送っている主人公の一子。離婚して実家に戻ってきた妹の二三子と大喧嘩をした勢いで、一子は家を出て一人暮らしを始めます。近所の100円コンビニでバイトを始めた一子はある事件をきっかけにボクシングを習い始め、そこから自分も周りも少しずつ変化していく、というストーリーです。

 この作品は、とにかく一子役の安藤サクラさんの演技が素晴らしいのです。前半の投げやりで無気力でダルダルな姿から、後半のボクシングに没頭して鋭い表情になっていきます。「一子という人物はあくまでも安藤サクラという俳優さんが映画の役として演じているのであって、ドキュメンタリー作品ではないのだ」と頭で十分わかっているのに、「人はこんなにも変われるものなのだ」と気付かされます。

 実は私もある時期、実家で一子のような生活を送っていたことがありました。「このままではいけない」と思いながらもズブズブと自堕落沼にはまって抜けられなくなっている一子の焦りと絶望が入り混じったイライラがものすごくわかります。同時に、自分がそこから抜け出したきっかけも、一子と同じようにどうしようもなくネガティブで衝動的なことだったな、人生が変わる時って案外そういうものかもしれないな、とこの作品を通じて改めて思い知らされました。

 ポジティブで楽しいという種類の作品ではありません。ラストに流れるクリープハイプの「百円の恋」の曲も合わせて「自分を変えるとはどういうことなのか」ということを考えるきっかけになる、そんな作品です。

 踏み出すタイミングは自分のタイミングで

 3作品を観て「どんなに小さなことでも最初の一歩を踏み出すことによって必ず見える景色が変わるのだ」ということを改めて感じました。

 読者の方の中には「どんな作品を観ても踏み出す気になれない」という方もいらっしゃると思います。そういう時には無理に変わろうとせずに「今は踏み出すタイミングではないのだな」と、ゆったりと過ごすこともまた大切なことだと思います。

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大学卒業、広告代理店勤務を経てイラストレーター・ライターとして独立。 好きな映画の感想を文章とイラストて綴るzine『CINEMA TALK』を発行。 女性の人生やシスターフッドを描いた作品が好き。