【ふかわりょう】 遠吠え
●ふかわりょうの連載エッセイ「プリズム」44
遠吠え
数多ある記念日の中で私が好きなそれは、ショートケーキの日。毎月22日なのですが、上に「15」つまり「イチゴ」があるから。群を抜いてお洒落でキュート。それに比べて巷に溢れる記念日は、本当にしょうもない語呂合わせばかり。この世に誕生した日ならともかく、ダジャレの延長のよう。電話番号の語呂合わせは覚えてもらうという大義があるからいいのですが、単なる語呂合わせには価値は見出せません。「いい夫婦」の日なんて最たる例で、「いい夫婦?もういい加減にしてくれ」なんて思っていたら、なんなんですか、この結婚ラッシュ。めちゃめちゃ意味あるじゃないですか。
きっと、しばらく続くでしょう。かつては、芸能人の結婚というのは大々的に取り上げられ、テレビ中継まであるほど。それがいつの間にかあまり取り上げて欲しくないケースが増え、入籍のみの報告へ。そんな、ひっそりと進めたい芸能人カップルはこの日を狙うと、木を森へ隠すように、単体への関心や話題が薄れ、アイドル系は集中しそうです。もはや合同結婚式。紅白のように、初出場や、3回目なんていう表記もされて。豊作の年もあれば不作の年もあるかもしれませんが、ジューンブライダルを超える勢いです。私も然るべき時が来たら、あえて狙うかわかりませんが、きっと選択肢の一つにはなるのでしょう。
気がつくと45歳。あんなにかけっこが速かったのに。宿題もすぐに提出していたのに。二十歳で下積みもなく世にでることができたのに。人生というのはバランスよくできているのでしょうか。いまや所属事務所で最年長の独身。実家に帰れば「そろそろ身を固めろ」と言われたものですが、今では誰も触れなくなりました。まるで不発弾。私自身も周囲に気をつかわせてしまうので、ご迷惑をおかけして申し訳ない気持ち。子育ての悩みや、子どもの写真を見せ合ったりしている周囲に遠慮されるのも嫌だし、気を使われなさすぎてもなんだか。
ただ、これだけは言わせてください。もう「結婚できない」と言う表現はやめましょう。
私が言うと負け犬の遠吠えに聞こえるのでしょうが、構いません。結婚は、できるかどうか、ではなく、するかしないか。「能力」とは関係ない。それなのに、相変わらずテレビから聞こえてくると、時代錯誤な表現に落胆してしまいます。
「Can you speak English?」
このような質問が推奨されないのは、「英語を話しますか?」はいいけれど、「英語を話せますか?」は失礼にあたるから。「できるかどうか」の「can」ではなく、「Do you speak English?」。これと同じように、結婚も「できる」「できない」ではありません。
結婚は素敵なことだとは思いますが、結婚で幸せを享受する人と、そうとは限らない人がいるのも事実。万人に当てはまるシステムではありません。二人の距離も千差万別。この年齢で独身なのは、きっと難があるからだろうと思われるのも仕方ないですし、きっとそうだろうと思いますが、既婚者で不倫などしている人の方がよほど覚悟がないと思っています。つべこべ言わずさっさとしろと言われそうですし、こういうこと言ってるから、「できないんだ」と思われるのでしょう。遠吠えが聞こえなくなる日まで。
タイトル写真:坂脇卓也