ニューヨークの朝ごはん「食べ方は、生き方だ。」

ボーイフレンドとゆったり楽しむ朝食&ブランチで心豊かに―食べ方は、生き方だ。05

ご飯の食べ方を聞いたら、その人の人生への向き合い方もなんとなく分かるもの。ニューヨークに住むミレニアル女性のある日の朝ごはんを通して、ニューヨークの文化や女性たちの生き方を見つめます。

●食べ方は、生き方だ。05 ーニューヨークの朝ごはんー

会社勤務(29)
本日の朝ごはん:スクランブルエッグ、サニーサイドアップ、ベーコン、トースト、フルーツ、ヨーグルト、紅茶

ふたりでつくって、ふたりで食べる

大きな窓のある明るいキッチンで、AとボーイフレンドのMがブランチの準備に取りかかる。今日は料理が得意なMがメインシェフ。オーブンでベーコンをカリカリに焼いている間、フライパンで卵3つをサニーサイドアップに。

黄身がとろりとなる頃合いで火から下ろすと、今度はAが卵2つでスクランブルエッグを用意する。ネットで見つけた2つのレシピを合わせた彼女のオリジナルレシピ。
「こうすると蒸気が閉じ込められてフワフワになるんですよ」(レシピ参照)

本日の朝ごはん:スクランブルエッグ、サニーサイドアップ、ベーコン、トースト、フルーツ、ヨーグルト、紅茶

窓からブルックリンのダウンタウンが一望できるテーブルにお皿を並べ、紅茶をカップに注ぐとブランチが始まった。日本語も堪能で、京都に住んでいたこともあるAのお気に入りの柚子ジャムも、テーブルの上に用意されている。

「週末は朝11時ごろゆっくり起きてあさごはんを準備し、1時間くらいかけてブランチを楽しみます。リラックスしてちょっと贅沢に」

いっしょにいる時間を大切に

出会いは、ハロウィンの友人宅でのパーティーだった。「会ったばかりなのにすぐに意気投合して、3時間くらいずっと話していたのよね」とふたりは顔を見合わせる。いっしょにMのアパートで暮らすようになって半年。いずれは結婚するつもりだ。

ふたりの関係がうまくいっているのは、価値観やコミュニケーションのスタイルが似ているからだという。Aは大学で数学を専攻して、保険会社で保険数理士として働いており、一方のMはコンピュータープログラマー。そのためか、ふたりとも論理的、合理的に考えることが身についている。たとえ誤解が生じても、自分の感情と問題を切り離して考えたり、きちんと説明して相手の理解を得るように心がけているので、冷静に解決することができる。

また、いっしょにいる時間を大切にしたいという点でもふたりは同じ考え。Mは、以前はアパートに仕事を持ち帰ることもあったが、今はしない。Aも何か用事があるときは、退社後アパートに戻る前に片付け、アパートに戻ったらいっしょの時間を過ごせるようにしている。

「彼といると自分の一番好きなところが出てきます。『こんな自分って好きだな』とか、『私ってこんな面白いところがあったんだ』とか、発見があるんです」

ドレスアップしてバレエを観るのが共通の趣味

似た者どうしのふたりだが、極め付けはドレスアップしてバレエ鑑賞するという共通の趣味。ニューヨークは秋から春にかけてバレエのシーズン。この時期になると、ふたりは毎週のようにリンカーンセンターにバレエを観に行く。平日にショーがある場合は、Aは仕事が終わるとドレスに着替えて会社を出る。

「同僚は私がバレエが好きなことを知っているので、『まあ、プリティなドレス!バレエを楽しんでらっしゃい』と声をかけてくれます」

Mの職場ではジーンズにTシャツ姿で働く同僚がほとんど。ボタンダウンのシャツを着ているMはそれだけでも目立つが、バレエの日はAをエスコートするためにスーツ姿でオフィスに現れる。
「みんな僕のスーツを見ると、『おー、エンジョイバレエ』と言ってくれるよ」

ドレスアップして行くことでバレエ観賞はいっそう楽しくなる。Aのインスタグラムには、毎回違うドレスに身を包んだAとスタイリッシュにスーツを着こなしたMの笑顔の写真がたくさん並んでいる。

  • 【NYの暮らしについて教えて!】
  • ◎30歳までに結婚したいと思う?
    高校の頃はそんなふうに考えていましたが、26、27歳くらいになると、もうそういう考えはなくなりました。結婚したいほど好きな人がいなかったときは、「まあ、いいか」と思っていたし、29歳になった今も、「早く結婚しなきゃ」とは思いません。
    結婚式は華美にする必要はないけれど、私は伝統的なことが好きなので、家族や友人に祝福されて、ドレスアップして結婚式をしたいと思っています。

  • ◎レンタルドレスサービスをどんなふうに利用している?
    バレエ鑑賞のためにドレスのレンタルサービスを使うようになりました。私が使っているサービスは1ヶ月159ドルで、1回4着まで借りることができます。シーズンになると15〜20回くらいバレエを観に行きますが、毎回違うドレスを着て行けるので、豊かな気持ちになりますね。バレエの演目によってテーマを決めてドレスを選ぶのも楽しいです。「白鳥の湖」のときは、湖のイメージでダークブルーのドレスを選びました。

ふわふわスクランブルエッグの作り方

〈材料〉
卵……2個
ミルク……大さじ1
塩・こしょう……少々
バター……大さじ1/2

〈作り方〉
① ボウルに卵を割り入れ、ミルク、塩、コショーを入れてよくかき混ぜる。
② ①を10〜15分ほどねかせる。あらかじめ塩を加えてねかせておくと、火を通したあともしっとり感が保たれる。
③ フライパンを中火で温め、バターを入れて溶かし、フライパン全体になじませる。
④ バターが泡立ったら、①を入れてすぐに1箇所によせ、高い山を作る。卵の山を作ることで蒸気が卵の中に閉じ込められ、ふわふわの食感になる。山を高くするのがコツ。
⑤ 10秒ほどすると卵の底に火が通って固まるので、弱火にして数回ひっくり返す。卵のどの部分もフライパンの底に長くつかせないようにする。
⑥ 好みの固さになったら皿に移す。卵をフライパンに入れてから取り出すまで1分以内で終わらせる。

ライター。東京での雑誌などの取材・インタビュー・原稿執筆などの仕事を経て、2000年に仕事と生活の場をニューヨークに移す。
食べ方は、生き方だ。