ニューヨークの朝ごはん「食べ方は、生き方だ。」

本日2度目のあさごはんはセントラルパークで―食べ方は、生き方だ。06

ご飯の食べ方を聞いたら、その人の人生への向き合い方もなんとなく分かるもの。ニューヨークに住むミレニアル女性のある日の朝ごはんを通して、ニューヨークの文化や女性たちの生き方を見つめます。

●食べ方は、生き方だ。06 ーニューヨークの朝ごはんー

ピラティス・インストラクター(35)
本日のあさごはん:スナック・バー、アボカドと卵のオープンサンドイッチ、コーヒー

本日のあさごはん:スナック・バー、アボカドと卵のオープンサンドイッチ、コーヒー

「午前8時前だと、革ひもを解かれた犬たちがたくさん公園内を駆け回っているんです。それを見ているのが大好き」

セントラルパークで、ピラティス・インストラクターのKが本日2度目の朝食をとる。時間はその日のスケジュールによって変わる。今日は少し遅めで10時半。天気がいいので、散歩したりベンチでくつろいでいる人も多い。この時間になると、犬たちは革ひもに繋がれて行儀よくしている。

あさごはんは公園内のカフェで買った、卵とアボカドのオープンサンドイッチとコーヒー。サンドイッチは12ドル(約1300円)なり。マンハッタンは物価が高いが、Kが働くアッパーイーストサイドは特に高い。このあと、1日の仕事が終わる前にサラダなどの軽いランチもとるので、食事代がばかにならない。

「パンにピーナッツバターのような簡単なものでも、何か持ってくると節約になっていいんだけど、時間がなくて……」

Kの朝は早い。5時半に起きて手早く支度を整えると即1度目の朝食。ヨーグルトですませることもあれば、シリアルのスナック・バーを手にアパートを出ることも。向かう先はマンハッタン、アッパーイーストサイド。平日の朝は、2歳の子どもの世話と犬の散歩は夫の担当だ。「私の仕事は午前中に集中するんです。クライアントは50〜80代がほとんど。最高齢は92歳です。健康維持のためにピラティスを取り入れている方が大半で、運動が好きというわけではないし、午後になると疲れてやる気がなくなってしまうので、長続きさせるには早い時間帯がいいんです」

クライアントの自宅に出向いてピラティスのセッションを行うので、Kはクライアントの家族関係、健康状態や病気のことなどプライバシーを知る立場にある。中には往年の銀幕スターもいるが、有名人であろうとなかろうとプライバシーは厳守だ。

移動手段は自転車。クライアントの住居はアッパーイーストサイドの高級住宅街に集中しているので、仕事がある日は、南は62丁目から北は90丁目まで、セントラルパーク沿いにアパートからアパートへ自転車で移動する。そして、仕事の合い間にセントラルパークに立ち寄って2度目の朝食をとるというわけ。

Kのピラティス・インストラクター歴は15年。以前はスタジオに勤務していたが、2015年に独立した。現在は週4日働いている。土日は家族と過ごす日、月曜日は息子と遊びに出かける日と位置づけ、この日は息子と公園や博物館に行ったりするのだとか。

「ほかの人より仕事と私生活のバランスはいいんじゃないかな。自分でスケジュールを決めて働けるので、今の働き方にとても満足しています」

【NYの暮らしについて教えて!】

◎予約がキャンセルになって時間が空いてしまったら?
仕事の合い間の空き時間は楽しい時間です。アッパーイーストサイドのセントラルパーク沿いは別名「ミュージアム・マイル」。メトロポリタン美術館やグッゲンハイム美術館などすばらしい美術館がたくさんあるので、時間が空いたら、美術館で過ごすことが多いですね。一般的に入館料は高いのですが、ニューヨーク市民なら安く入れるところもあるので気軽にアートを楽しんでいます。夫がこの近くの美術館で働いているので、そこを訪ねたり、ときどきセントラルパークで一緒にランチをとったりすることも。

◎仕事で大切にしていることは?
コミュニケーションです。クライアントの体に触れるので、気持ちよくセッションを受けていただけるように。言葉づかいにも気をつけています。また、ゆったりした気持ちでクライアントに接するようにしています。次のセッションの時間が気になって、クライアントとの話を急いで切り上げなければなかったり、時間を気にしながら次のクライアントのお宅に大急ぎで駆けつけなければならなくなったりすると、気持ちが慌ただしくなりますね。それが嫌なので、そういう状況を作らないように心がけています。

ライター。東京での雑誌などの取材・インタビュー・原稿執筆などの仕事を経て、2000年に仕事と生活の場をニューヨークに移す。
食べ方は、生き方だ。