女性用風俗で働くホスト「性のミスマッチがおきている」

出張ホストにはまった後、ホストクラブに頻繁に通うようになったユカさん(35)。彼女の体験を通じて、女性の孤独や生きづらさを考えてきましたが、そんな女性たちと出張ホストとしてデートする男性は、彼女たちをどのように見ているのでしょうか。最終回は、ハルトさん(23)へのインタビューを通して、女性たちが抱える孤独の正体や生きづらさを考えます。

出張ホストは昨年の6月ごろから始めました。都心から離れた大学に通っているので、外の人と話す機会がなくて、せっかく東京にいるのにもったいないなと思ったんです。効率良く、おもしろい人と仲良くなれる方法はないかなと始めたのが女性用風俗でした。お金ももらえるし、時間の融通も利く。とは言っても人気商売なので、自分にできるか不安でした。女性の扱いに自信があったわけでもありません。言われたことをやる、ただそれだけの気持ちでした。

はじめに講習がありました。社長、無料モニターの女性、僕を含め試験を受ける男性3人の計5人でホテルに行きました。社長が1時間くらい手本を見せてくれて「じゃあ次はテスト」って。試験項目は、指圧、オイル、性感マッサージ、次も指名したいと思いますか、育てたいと思いますか、パッと見の印象はどうですか――など細かいチェック項目がありました。女性の感情を理解したり、ことばでどのようにコミュニケーションするか、などは教えてもらってないですし、テストでも問われなかったですね。
実技のテストを5回受けて、80点以上を3回とれれば合格。僕は3回受けてすぐ合格しました。ほとんどの人が落ちていたようでした。

僕のお客さんは20~30代前半が多いです。僕にとってのいいお客さんですか?おもしろいかどうかしかないです。かわいかったらなお良しって感じですかね。
この仕事への罪悪感はないです。女性の素の部分が丸出しになる面白さがある。僕は誰も傷つけていないし、裸の付き合いをするからこそ見えてくる人間の本性、みたいなものを見たいのかもしれません。

これまで40人近くの女性と会いました。会話だけって言う人もいますが、ほぼ全員とホテルに行く。たくさんの女性と体を重ねて思うのは、案外、世の中ってうまくマッチングされていないんだなってこと。友達なら「類は友を呼ぶ」ってできるんだろうけど、性的なことはうまくマッチングされていない。自分がどのように悩んでるか、つらいのかといった深い話をすることは少ないけど、既婚者や彼氏持ちの人が利用している現実を見ると、不満を抱えている女性が多いんだなって思います。

嫌な目に遭ったこともありますよ。家が汚い女性と会ったことがありました。ちょっと思い出したくもないくらい。ゴミもたまってるし、水場も汚い。夫と別居中で娘とは疎遠状態で……みたいな。よくこんな汚い家に他人をあげられるなって。社会の闇をみた気がしました。

彼女ができたら辞める

お客の半分くらいはそういう「外れ」の人です。デブもブスも嫌い。会話がまともにできない人はいちばんいやですね。それでもなんで辞めないのかって?続けたい、というよりは辞める理由がない感じ。なんか、予想の範囲内なんですよね。予想外のことが起きてほしいって思っているのに。

お金はほしいけど、それが1番の目的ではないです。お金だけなら、居酒屋の夜勤の方が稼げる気がします。出張ホストは90分でお客さんは15000円を支払うけど、僕は顔出ししていないので、手元に入るのは6割だけ。会話に気を使ったり、営業メールをしたりすることを考えるとコスパはよくないと思います。月に100万円稼いだ人もいますけど、僕は30万円くらいが最高ですね。

辞めるのは、彼女ができたときかな。彼女が嫌がるだろうし、僕も彼女以外とやりたくないですし。もう2年くらい、彼女がいないんですけどね。

【取材後記】
自身とのプライベートな時間を、お金を介して提供するホストの男性と、心に沈む寂しさを「性」で埋めてほしい利用客の女性。今回取材した2人は対等に、“ギブアンドテイク”しているようにみえたけれど、ユカさんの孤独は、ホストにはまる前から変わっていないような気がする。世間的には金銭的にも物質的にも満たされている女性たちが、どうやって孤独を埋めるのか、私には結局、答えらしきものは見つからなかった。

telling,の妹媒体?「かがみよかがみ」編集長。telling,に立ち上げからかかわる初期メン。2009年朝日新聞入社。「全ての人を満足させようと思ったら、一人も熱狂させられない」という感じで生きていこうと思っています。
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