おひとりさま向けイベント「ブラックデー」に参加したら開眼した話
●telling,編集部コラム
4月14日はブラックデー
2月14日のバレンタインデーや、3月14日のホワイトデー。恋人がいないみなさんにはちょっぴりバツの悪い日だっただろうか。そんな人たちにスポットを当てた記念日が韓国発祥の「ブラックデー」。
今回私が参加したのは、このブラックデーを広めようと立教大学の学生がゼミの一環で企画したイベント。恵比寿の4店舗のお店を貸し切り、黒ビールと黒いおつまみを嗜みながらシングルのみんなで交流を楽しむというものでした。
恋人もおらず「職場への義理チョコ」もなくTHE・平坦に2月14日と3月14日を過ごした私。「大学生主催」「おひとりさま」に飛び込む30代シングル代表として、ドキドしながら会場のお店へ。
主催の学生の友人を中心とした大学生がわんさか集まり、むわむわと若い熱気がたちこめています。
しかも一人できている人が全然いない。だいたい男女問わず数名のグループで参加しています。ウヒョーめちゃくちゃ恥ずかしいよ〜……。
つまみのメニューが若い
もともとこの日は昼から友人の結婚式があり早朝から美容院へ、明るいうちから酒を飲みフルコースを堪能、文字通りお腹いっぱいのスケジュール。急いで家に帰り、華やかなワンピースから黒い服に着替えて若者の集団に飛び込む。カップルを祝った日に、一人を噛みしめる。なかなかに感情の起伏が大きい。
そこにきて、お店1店舗1店舗で出されるおつまみのメニューが「黒いメンチカツ」「黒いヤンニョムチキン(唐揚げ)」「黒い牛すじ煮込み」「黒いハンバーガー」。
わ、若い!メシが若いよ!黒いエイヒレとか黒いおしんことかがほしいよ。
美味しい黒ビールと一緒にペロリとたいらげるヤングマンたちをよそに、ワタクシもかぶりつき
「食べている写真を撮って欲しい」と声をかけたのをきっかけに何人かの大学生の輪に入れてもらいました。
ニュージェネレーション、優しい
聞けば現役の大学生とのことで、「卒業制作で映画撮ってます」とか「就職決まってます」とかすごいちゃんとしてました。「何学部?」と聞かれ「ぶ、文学部……(2010年卒)」って一瞬答えましたが、さすがに良心が咎めて「ごめんなさい、どちゃくそ大人です」と年齢を自己申告しました。
直後にやってくるであろう冷ややかな空気を予期し「アラサー独身女が混じっちゃったよ〜」とオバハンアピールで先手を打とうと思いきや
「そうなんですね!で、さっきの話の続きですが〜」と、全然意に介さない感じ。むしろ「社会人の方にもこのイベントが広まっているなんて嬉しい」とインスタのストーリーに巻き込んでくれる始末。
ニュージェネレーション、すんげぇフラット!すんげぇ優しい!
恋人?いらないっすね
いろいろなテーブルをはしごしてみると、意外にもこのイベントに「出会い」を求めている人ばかりでないことがわかってきました。
「恋愛してる暇があったら古墳を研究してたいですね」と明るく言い放つ男の子は、自らの学歴コンプレックスを吐露。
一方、出会う気満々で渡り鳥のように各女子テーブルに一人で突撃していた男の子は、「LINEアカウントを聞いたら断られて、女の子が周りからいなくなっちゃいました」と戻ってきて、何と声をかけようかうろたえていたら「いつものことなんで。あ、あっちのテーブルまだ行ってないな」とまた(文字通り)黒山の人だかりに消えていく場面も。
どちらもたくましすぎる。
「いやね、この間もブラックデーみたいなイベントに行ってきたんですよ。“就活”っていうんですけどね」
ほろ酔いで2店舗目へ。するとテーブルにでかめのカラスが鎮座しておりギョッとする!酔いがまわったかと思いきや、人形でした。
持ち主は可愛らしい女性で、有象無象の集団を引き連れて忙しそう。学生団体をやっているそうで、いわゆる「最高学府」に在学している彼女は、自身の自己肯定感と向き合い苦悩し、闇ツイートを世の中に吐き出しているとのこと。連れの男性の中には社会人の方もおり、彼女の恋愛観の話から「東京大学入学式の上野千鶴子さんの祝辞」へと話題は移り……
「おひとりさまイベントだぜ〜うっひっひー!」
みたいなノリとはかけ離れた激論を、静かに聴講させていただきました。。
最終的には大学4年生の彼女の「いやね、この間もブラックデーみたいなイベントに行ってきたんですよ。“就活”っていうんですけどね(ニヤリ)」に完全に一本取られ、勝負あった、という感じでした。
あれだけちゃんと頭の回転が早くておもしろいんだから、そんな風に学生の頃から自分を消費しなくてもいいのになぁと、悩めるミレニアル世代としては身につまされる思いになりました。
(そうしないとこうやって30代になってからも自虐で笑いを取りに行こうとする大人になってしまう。そういう自分にいつも葛藤しているわけで。)
ついに連絡先を聞かれる。その相手は
学生たちからの度重なる人生相談で過ぎゆく時間。そこに「隣いいですかぁ〜!」と声をかけてくれた人が。
振り向くと、めちゃくちゃえびす顔のすごいご機嫌な女性。陽気な関西弁で、なぜか私に異様に食いついてくれる。
「何歳ですか?」「どこ住んでるんですか?」
最寄駅を告げると「え!あの!私めちゃくちゃ引っ越ししたくて。そこめっちゃ憧れてるんですよ!あの、よかったら今度ご飯行きませんか?」
急展開!出会って1分の女性に「引っ越しの相談にのってほしい」という理由でご飯に誘われる。ブラックデー、予測不能が過ぎるゼ!
でも、なんだか予想と違ったイベントを取り巻くパワーにちょっと圧倒されていた所だったのでホッとして、本日初の連絡先交換となりました。
「孤独なおひとりさまの記念日」ではなかった
そんなわけで、それぞれのお店を小一時間ほど楽しみ会場を後に。久しぶりに会話をした大学生たちは「自分、ぼっちなんでw」と卑下するでもなく、かといってこういった「ひとり」を打ち出したイベントに対して抵抗なくカジュアルに楽しんでいてとても気持ちが良かったです。
恋愛を必要としないほど何かに夢中な人もいれば、自分はなぜ好きな人と交際できないのだろうと真剣に悩む人もいる。しかも結構素直に、初対面の人にそういうこと話してくれちゃうのも新鮮でした。
「恋人がいない人が主役になれる日を」というテーマでしたけど、みんなちゃんと自分の人生の主役だったよ。記事のネタ探しのために来た自分が恥ずかしいくらい。
「ひとりであることを自覚する」という文化を、はたしてどれだけの日本人がポジティブに受け取れるのか。でも、今回主催した学生や参加している若い子たちが作りだすパワフルで明るいムーブメントなら乗っかってみてもいいかもなって思いました。
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