「地獄の2月」が終わってた！
●編集部コラム
芸能事務所のマネージャー＝大変な仕事？
芸能事務所でマネージャーをしていた頃、職業を言うと99%「大変そうだねぇ」という返事が返ってきた、多分他のどのマネージャーもそうなのではないかと思います。
マネージャーの仕事というと、みなさんはどんな業務を思い浮かべるだろう。
スケジュール管理？付き人のような現場フォロー？寝れないんじゃない？タレントのワガママに付き合わされるんじゃ……。
美談を連ねてもあまりおもしろくないかもしれないけれど、そうした「一般的なマネージャーって大変そう」のイメージは私に関していうとあまり当てはまりませんでした。
スケジュールといっても10人も20人もの管理をするわけではないし、マネージャーは付き人さんとは違うので、日常的なケアについては、程度はあれどこちらの負担になるほどすることはあまりない。
（私がいた事務所では、結構な認知度のタレントさんも電車で現場までやってきたし、「この部屋、寒いわよ！キー！！」なんてなる人もいなかった）
番組制作の仕事と違い、タレントの出番が終わればひとまず現場からは帰ることのできる私たちは徹夜もほぼ皆無。
そして「ワガママ」。これ、今振り返ってみると、ほとんどが「その人たちなりのパフォーマンスへのこだわり」だったんだと、思えることばっかりでした。（またいつか、そういう話も書いてみたいと思います）
大変だったのは「2月を乗り越えること」
じゃあ、何が大変だったか。
マネージャー生活での一番の恐怖、それは毎年やってくる「2月」でした。
私の担当していたタレントさんは主にバラエティ番組や情報系の番組にレギュラーで出演したり、定期的にゲストで呼ばれる方々でした。
そうした、「これからもっと仕事をとってこなくては！」という立ち位置のタレントさんのマネージメントで多くの時間を割くのは「営業」と呼ばれる、各局へのセールス。
「こんな専門分野で活躍しています」「この子、実はこんなスリムな体型で超大食いなんです！」
タレントさんのまだ世の中では知られていないキャラクターを引き出し、時には資料にまとめ、様々なメディア媒体へと売り込みにいくのです。
「営業」が空振りする毎日
収録や撮影の合間にこうした作業を行うのは数打ちゃ当たるというモンでもなく、心折れることもなかなかに多かったりするのですが、2月は、特別にそれがうまくいかない。
業界用語で「改編期」と呼ばれるその時期、4月に向けて番組が終了したり、新しくはじまる企画の準備をはじめるのがこの2月になります。
ゴールデン番組のリニューアルやヒット番組を連発するプロデューサーの新番組立ち上げ、朝の情報番組のコメンテーターのメンバーチェンジ。
様々な作業が水面下で動くのを、事務所の同僚たちとともに探りに行くのです。
どの人にアプローチすればよいのか、どんな番組ができるのか、いち現場マネージャーが手に入れられる情報はわずかで、それでも動かなくっちゃ仕事はとれないので、連日足を使って情報収拾。
一度は自分のタレントを出してみたい！と思っていた人気番組のスタッフに資料を持っていったのに、一週間後に「番組終了」をネットニュースで知る…。名刺を渡した時の冷ややかな反応を思い出して恥ずかしくなったり。思い返しても胃が痛い。
オフィス街の厳しいビル風で髪の毛を振り乱しながら「今日も仕事が見つからなかった」と意気消沈で会社に戻ることなんてザラ。本当に、2月って毎年「地獄の月」だったんですよね。
3月、毎日少しずつ天気予報で見る平均気温が上がってくるにつれ、それこそ寒波のごとく厳しかったスタッフさんが急に「そのタレントさんいいですね、今度やる企画でね……」なんて心を開いてくれたりする。
大昔に渡しておいた資料を見てくれたのか、新しく始まる番組のレギュラーの話が舞い込んでくる。
去年より少しだけ忙しくなるかもしれない新年度に期待して、自分の心もあったかくなっていく。
2月が辛い分、新しい仕事の依頼はそれはもう、喜びはひとしおだった記憶があります。
転職してはじめての「2月」は昨日まで。例年、毎日ヒーヒーいっていたことをすっかり忘れてのほほんとしているうちに過ぎていたことにふと気付き、あぁ、私、自分の中のカレンダー、張り替えたんだなぁとしみじみしたのでした。
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