編集部コラム

日本の女を3種類に分けて、最近の女性向け表現問題を考えてみた

telling,編集部のいぬい(35)です。今回は、最近よく話題になる女性向け広告に関する意見について考えてみました。

●編集部コラム

日本には3種類の女が存在していると思う。
「ルールに無自覚な女」と「ルールを攻略する女」と「ルールを変えようとする女」だ。

その1 ルールに無自覚な女

仕事をバリバリやっている女友達と、飲みながら仕事について愚痴り合ってた時の話。
「こないだ、お客さんと2人で飲んでたらさ、”僕とエッチな関係になってくれませんか!?”って。こっちは受注側だから何でも言うこと聞くと思ってんのかねー。にしても、誘い方ウケると思わない?」
と言って、彼女は爆笑した。

なにそれ、私は笑えないぞ。
いたたまれなくなった私は、「え、それキツすぎ。ブチ切れて先方の会社訴えてもいいレベルでしょ。我慢しなくていいんだよ」と言った。

いつも最高に明るい彼女が、普段は見せないちょっと神妙な表情になった。ひと呼吸置いたあと、前のめり気味に私の肩をつかんで、「いぬいは、そういうのもっと文章にして世の中に発表してった方がいいよ」と言った。

彼女はルールに無自覚な女だった。

その2 ルールを攻略する女

私は恋愛指南をする本やブログが大好きだ。
「男はこう扱いましょう」と恋愛指南をする女性の多くは、ルールを攻略する女だ。
日本全体にどことなく、でも確実に存在している男尊女卑なルール、そんなすぐには変わらない。
だったら、今の人生で自分が最大限楽しむために、男を操る方法を身につければいい。自分が楽に生きていく考え方を身につければいい。

彼女たちの発信しているメッセージからは、今の不均衡を利用してやろう!くらいの気概を感じる。そういうサバイブの方法だってある。

その3 ルールを変えようとする女

ルールを変えようとする女は、「今の世の中はおかしい!」と声を上げ、怒りを表明し、既得権益を握る男と無自覚な男女を啓蒙しようとする。問題を根本から解決したいと考えている、本質的な思考の人たちなんだと思う。

3タイプの中で一番目立つだろう。だって「ルールを変えよう!」とアクションを起こしているんだから(ちなみに、ルールを攻略する女と、ルールを変えようとする女は、時に対立する……)。

日本にはどのタイプの女が一番多いのか?

日本にはどのタイプの女が多いのか。
私の実感としても、世の中の風潮を見ていても「ルールに無自覚な女」が圧倒的に多いように感じる。冒頭に出てきた第一線で活躍している女子でさえ、どことなく男尊女卑な日本のルールを自覚してない。いや、薄々はおかしいと、わかっているのではないか。痛みを感じてはいるけれど、生まれてからずっと続いている痛みだから、無自覚になっているのかもしれない。

昨今何かと炎上する、女性をめぐる情報発信。ルールに無自覚な女を対象にマーケティングしたなら、完成品としてのメッセージも、無自覚さをはらんだものになる可能性がある。

そうした広告などの表現が炎上したのは、「ルールを変えようとする女」が声を上げたからだ。彼女たちに見えているのはもっと俯瞰した景色なのだろう。無自覚な表現に違和感を持つのもうなずける。

メディアに必要なのは、共感よりも啓蒙なのかも

彼女たちの訴えを聞いて感じるのは、メディアに対する期待だ。「メディアは大衆に迎合するな、むしろ啓蒙しろ」というメッセージだ。もっといえば、ルールに無自覚な女を一緒に救い出したいという願望もあるだろう。だからこそ、ああした発信があると、彼女たちは期待を裏切られたと感じ、落胆や怒りを覚えるのだろう。

どの生き方を選ぶかは自由だ。
私自身が、ルールを変えようと闘っているか?と聞かれたら、胸を張って「はい」と言い切れる自信はないけれど、でも、痛みに気づかずに放置してしまう人がいるなら、少しでも減らした方がいいと思っている。

メディアの片隅でお仕事をさせてもらっている身としては、世の中のおかしさに気付き、ルールを変えようと声をあげる女たちの期待に、少しでも応えられる発信をしていけるといいなと思う。

1983年生まれ。社会人13年で転職4回。バツイチ。恋愛・結婚・女性性・人間関係・生き辛さなどの話題に興味があります。お笑い・現代アート・バームロールが好きです。
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