編集部コラム

就活における「自分らしい服装で来てください」問題

そろそろ就職活動が本格化。面接で「自分らしい服装で来てください」って言われたことがある人、いますか?「自分らしい服装」っていったい……。今回は、編集部員藤井のちょっと変わった体験談を交えてお届けします。

●編集部コラム

就活=黒スーツっていつから?

就職活動の時期になると、急に街に黒スーツ・白ブラウス・ピカピカのカバンの男女が増殖します。最近は特に、本当にみんな黒ばかり着ている気がします。たぶんちょっとずつ流行があるんだとは思いますが……。それにしても、いつからこんなに画一的な格好をしなきゃいけなくなったんでしょう。

私が就職活動をした2003年は、いわゆる「氷河期」の最終盤。もちろん、そのころからリクルートスーツなるものはありました。当時は「金融は3つボタン・紺色のスーツでないとダメ」と言われていました。ひねくれていた私は「どうせ金融業界には興味ないし、3つボタン紺色のスーツなんてダサいし、そしたら受けなきゃいいか」と思って本当に受けませんでした。

ちなみに私が買ったのは、チャコールグレーに薄くストライプが入ったスーツ。基本パンツで(寒いから)、ジャケットの下はシンプルなボートネックのカットソー。要は社会人のスーツ姿のスタイルです。それでもJR東日本にも受かったから、別に黒スーツじゃなきゃ!白シャツじゃなきゃ!とか関係ないんじゃないかな?と思います。

「自分を表現できる服で」

さてここからが本題。とはいえ来る日も来る日も(というほど受けてないけど)スーツばかり着ていて本当に嫌になるな……と思っていたところに、ちょっと変わった選考を見つけました。それはルイ・ヴィトンやディオールなどを擁する「LVMHグループ」の選考説明会。正確に一言一句覚えているわけではありませんが、案内状には「当日はあなたを表現できる服装でお越しください」といったことが書かれていました。

自分を表現できる服とは?そもそも、これは字面通りに取っていいのだろうか?と悩みました。よく、パーティーなどで「平服でお越しください」と書いてあったらだいたいみんなスーツで行く、というようなことも聞いていたので、やはりこれはスーツで行ったほうがいいのではないか。いやでも、アパレルもやっている会社だし。などなど悩み、ええい、ままよ!と思って、当時気に入っていた古着ミックスカジュアルで会場に行きました。たしか、星柄のタンクトップにメッシュの長袖を重ねて、カーゴパンツをブーツイン、とかだった気がする。

しかし!入り口についた時に見えたのは、スーツ姿の集団。そして入って席についてからも、私の両隣もスーツ。前の人もスーツ。ざっと見会場内の8割ぐらいがスーツ。お、終わった……。マンガでいう、白目みたいな感じになりました。まあそれでも来ちゃったものは仕方ない。と思っていたら、壇上に立った偉い人が開口一番「私は悲しい」と言い放ちました。

「私は悲しいです。今日は、皆さんに自分を表現できる服装で来てくださいとお願いしました。なのに会場の大半の方はスーツを着ている!」

驚きの展開に目を白黒

おっと、形勢逆転……!そのあと延々とスーツの人への説教が続きました。でもよく考えたらその前後に別の企業の選考がある人もいるよなあ。と思ったけど、さらに考えるとそれがあったとしても着替えて来いよってことかなあ。などとぼんやり思っていました。そして偉い人はさらに言いました。「この会場から今日のベストドレッサーを選びます。」へえ、と思っていたらスタッフの方に肩を叩かれ、あなた壇上に上がってください、と言われる。えええええええええええ。

結局私と、男子2人の計3人(だったと思う)が選ばれ、ベストドレッサーの記念品としてディオールの香水「addict」をもらいました。もう、目を白黒させるしかないです。その後エントリーシートを書いて解散。英語で志望動機を書け、という欄はこいつ本当に大学生か?というpoorな英語を書いてしまいました。ライティング苦手やねん……。

「その場に合っている」服ならいいんじゃないの?

そしてクソみたいな書類を書いたにもかかわらず、後日2次選考に呼ばれました。10人ほど呼ばれたメンバーは、みんな帰国子女とか、留学経験があるとかで英語ペラペラ。私、日本縦断はしたけど海外なんて行ってないドメドメ。そもそも会話が違う。死。加えて他の人に「ベストドレッサーに選ばれた人ですよね!」とか言われてさらに死んだ。面接はたぶん本当にダメだったのか、一切記憶がないです……。

それにしても、今思い返してもけっこう面白い体験でした。最近でこそ、ベンチャー企業などで「スーツ禁止」のような面接もあります。資生堂でも自由な服装での面接が話題になっていました。たしかに服を見ると、その人らしさがわかっていいのかなあ、とも思います。要は、「その場にふさわしい」服であればいいんじゃないかなあと。それにスーツの違いなんて、本当に身だしなみにうるさい企業じゃなければ見てもいないんじゃないでしょうか。

でもあのとき結局選考で通ったのは、1次ではスーツを着てきていた帰国子女の人だったようです。なんやねん!結局服装、関係なかったんじゃないか!

朝日新聞バーティカルメディアの編集者。撮影、分析などにも携わるなんでも屋。横浜DeNAベイスターズファン。旅行が大好物で、日本縦断2回、世界一周2回経験あり。特に好きな場所は横浜、沖縄、ハワイ、軽井沢。
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