八木勇征・櫻井海音
八木勇征さん(左)、櫻井海音さん

八木勇征さん・櫻井海音さん「夢は、叶えるまでの“過程”も大事」 映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』で共演

2024年3月をもって放送作家と脚本家を引退した鈴木おさむさんが、引退前に原作・脚本を手がけた作品『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』が、2月21日から公開されます。ある村の“秘密”を前に、悩み、葛藤しながら人生と向き合っていく主人公・アキトを演じた八木勇征さんと、仲間たちの優しさを素直に受け入れられないナツキを演じた櫻井海音さん。作品についての思いや、10代の頃と今との変化などを伺いました。
八木勇征さん・櫻井海音さん、経験を積むことで変わる「ありたい背中」と「プレッシャー」 【画像】八木勇征さん・櫻井海音さんの撮り下ろし写真

18歳のときの願いは?

――「この村の少年たちは18歳になると、人生で一度だけ魔法を使える」という村の秘密の掟を、18歳を迎えた4人の登場人物たちが知るところから物語が始まります。お二人は、18歳の頃どのような願いを持っていましたか?

八木勇征さん(以下、八木): 18歳というと、プロサッカー選手になる夢を追いかけていた頃です。小学生のときから20歳くらいまでサッカーを続けたのですが、その夢が叶わなかったとしても、何らかサッカーに携わることができる職業に就けたら、と願っていました。

櫻井海音さん(以下、櫻井): 僕は……、「将来、食いっぱぐれないこと」かな。

八木: 現実的!(笑)

櫻井: そうなんです(笑)。ちゃんと自立して生計をたてられるようにしたいなとか、色々なことを現実的に考えていましたね。

八木勇征
八木勇征さん

――夢を追う八木さんと、リアリストな櫻井さん。対照的ですね。八木さんは今年28歳、櫻井さんは今年24歳を迎えますが、18歳の時から願うことは変わりましたか?

八木: 変わりましたね。ちょうど18歳のころにサッカーで大きいケガをして、現実を見るようになったときにFANTASTICSのボーカルを決めるオーディションが開かれるということで、挑戦したんです。そこから人生が変わりました。

今の僕の願いは「FANTASTICSのみんなと、一歩ずつステップアップしたい」「ライブツアーをこれからもずっと回れるようになりたい」ということ。グループとしての願いが、いつのまにか、僕個人の願いにもなっていったんですよね。

櫻井: 僕はどうかなあ。現実的に考える癖は、あまり変わっていないような気がします。自分がありたい姿から逆算して、いつまでに何をやるべきかを考えていくタイプですね。

櫻井海音
櫻井海音さん

もし魔法を使えるのなら、誰のために?

――作品のなかでは、悩んだり、対立したり、誰かを思いやったりしながら、アキトとナツキ、ハルヒ(井上祐貴さん)、ユキオ(椿泰我さん)の4人が、それぞれに魔法の使い道を考えていきます。お二人がもし、一度きり魔法を使えるとしたら、何に使いますか?

八木: 僕、自分の人生に魔法を使うのは面白みがないなと思っちゃうんですよね。だから、この「魔法を使える」権利を、お母さんか、おばあちゃんにあげたいです。

櫻井: うわあ、すごい!

八木: いつも僕の活動を応援してくれているからね。忙しくて、直接会える機会は年始くらいなのですが、頻繁に家族と連絡はとっているんです。ほとんどメッセージのやりとりだけど、たまに僕からふと電話をかけることも。僕らのライブを観に来てくれることも多いので、ライブの後に「どうだった? ちゃんと帰れた?」と電話することもありますね。

おばあちゃんも、よく観るテレビ番組に僕が出演すると、すごく喜んでくれて。僕が僕らしくいることが家族の喜びだと思うから、「家族を喜ばせるために頑張る」というのは少し違うんですけど、「恩返しや親孝行をしたい」とは常に思いながら活動しているんですよね。

八木勇征

櫻井: ……。そんな好感度の高い回答のあとに言うのは気が引けるんですけど……(笑)、僕は魔法が使えるなら「才能」が欲しいですね。

八木: いやいやいや、もう十分あるって、才能!

櫻井: たとえば一目見ただけで台本を覚えられるとか、演じるうえで誰もが「天才」とうなるような力があったらいいなあ、って。もちろん努力してそのレベルに近づいていくことが大事だとわかっているし、実際は自分の力で頑張るんですけど、生まれた時から芝居の才能が授けられていたらな、とつい思ってしまうこともありますね。

魔法に頼らず、自分の力で突破する瞬間

――作品のなかで、登場人物たちは「魔法の力を使いたいこと」と「特別な魔法の力に頼らず、自分の力で頑張りたいこと」の間で葛藤していきます。「これは自分の力で頑張ることだ」と心に決めたとしたら、どのように向き合う必要があると思いますか?

櫻井: 人生には「逃げてもいい瞬間」と「逃げちゃいけない瞬間」があると思うんです。僕の経験でいえば、もともとバンド活動をしていたのですが、コロナ禍でライブができなくなってしまった。そのときに救っていただいたのが、ソロ活動のオファーでした。オファーをいただいて直感的に「これは『逃げちゃいけない瞬間』だ」と感じたんです。

あのとき思い切り飛び込んでいったからこそ、今の自分があるように思います。だから、もし今が「逃げちゃいけない瞬間」だと感じるなら、失敗するかどうかを気にせず、熱量をもって向かっていくことが大切なのではないでしょうか。

櫻井海音

八木: 夢や目標というのは、叶う瞬間だけではなく、そこに向かう“過程”がすごく大事なんじゃないかと思っています。目標に向かってちゃんと準備をすることによって「これだけやってきたんだ」と、自分に対しても自信を持てるようになる。

僕自身「しっかり準備できたな」と自信をもって臨むと、撮影現場での立ち振る舞いや、見える範囲がまったく変わるような感覚があります。そう思うと、準備には、やり過ぎるということはないのかもしれません。とことん準備に力を注ぐことで、胸を張って、思い切り挑戦できるんじゃないかなと思います。

●八木勇征(やぎ・ゆうせい)さんのプロフィール
1997年生まれ、東京都出身。2017年に「VOCAL BATTLE AUDITION 5~夢を持った若者達へ~」に合格。2018年「OVER DRIVE」でメジャーデビュー。2021年、ドラマ『美しい彼』で本格的に俳優業に進出。主な出演作に映画『イチケイのカラス』『矢野くんの普通の日々』、ドラマ『南くんが恋人!?』、配信ドラマ『最期の授業‐生き残った者だけが卒業‐』など多数。

●櫻井海音(さくらい・かいと)さんのプロフィール
2001年生まれ、東京都出身。2019年、バンドコンテストの出場を機に、バンド“インナージャーニー”のドラム担当・Kaitoとして活動。2020年連続テレビ小説『エール』で俳優デビュー。主な出演作に、映画『【推しの子】-The Final Act-』、ドラマ『【推しの子】』『アオハライド』(WOWOW)『VIVANT』『御上先生』など多数。

八木勇征さん・櫻井海音さん、経験を積むことで変わる「ありたい背中」と「プレッシャー」 【画像】八木勇征さん・櫻井海音さんの撮り下ろし写真

■映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』

出演:八木勇征 井上祐貴 櫻井海音 椿 泰我(IMP.)/カンニング竹山 阿部亮平 髙橋 洋 馬渕英里何/平野宏周 工藤美桜/笹野高史 田辺誠一
原作・脚本:鈴木おさむ
監督:木村真人
制作:共同テレビジョン
配給:ポニーキャニオン
©2025 映画「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」製作委員会

ライター・編集者。1988年、神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後ベネッセコーポレーションに入社し、編集者として勤務。2016年フリーランスに。雑誌やWEB、書籍で取材・執筆を手がける他に、子ども向けの教育コンテンツ企画・編集も行う。文京区在住。お酒と料理が好き。
1989年生まれ。写真の専門学校卒業後、出版社写真部に所属。現在はフリーランスとして活動。