金子恵美
金子恵美の獅子奮迅 〜二兎追って三兎得るために〜 #5

金子恵美さん、荒波も越えて築いた私たちの夫婦のかたち

夫婦間での家事の分担は? 元衆議院議員でテレビコメンテーターの金子恵美さんと、キャリアや家庭生活、女性の生き方について考える連載。今回は、夫の宮崎謙介・元衆院議員との間で築いた家庭内でのルールや夫婦円満の秘訣について聞きました。
金子恵美さん、夫の過ちをなぜ許せたか。関係修復の処方箋とは 金子恵美さん、いま改めて考える“公用車ベビーカー”問題。育児中の女性の働きやすさを実現させるには?

金子家の味を受け継いだのは夫。家事は得意なほうがやる

わが家の家事は、適性と意欲で分担しています。料理の担当は夫。あちらの得意分野なんです。彼は料理が好きで、どんなに疲れていても作りたいというタイプ。そこは本当にリスペクトしています。

結婚前からカレーを作るくらいはやっていたそうですが、なんといっても彼が料理の腕を上げたのは、議員を辞職してずっと家にいた時期でした。私は産後2カ月で国会に復帰していたので、当時住んでいた議員宿舎には、彼と生まれたばかりの息子、手伝いのために上京してきた私の両親だけ。夫の「女性問題」報道の後ですから、特に私の母には心中複雑な思いがあったそうです。そんな家の中で、橋渡しとなったのが料理。宮崎と母は息子の離乳食も含め3食の用意をしてくれました。「おかあさん、今日のご飯どうしますか」。そういう会話が重たい空気を和らげてくれたそうです。

だから、金子家の味は、そのときに宮崎が受け継いでいるんですよ。母の名前をつけた、玉ねぎが大きめの“れいこハンバーグ”も、今では夫が作ってくれます。そんな環境なので、子どもにも自然と、家事は男女関係なく得意なほうがやるという考えが根付いていますね。私は料理があんまり得意じゃないと思われているのは若干不服ですが……。

それ以外の家事は、できるほうがやります。私は洗濯が好きなのでやるのですが、そういうとき夫は「ありがとね」って、こちらが気持ちよく家事ができるような言葉をかけるのが上手。本当にコミュニケーション能力が高いんですよね。宮崎が体調を崩した週、珍しく私が朝ごはんを作ると、「今週は朝ごはんを全部作ってくれて助かったよ」と。そう言われるとこちらも気持ちよくできる。夫婦間でも、労をねぎらう一言はやはりすごく大事ですよね。

私も「あの味のパスタが食べたいな」とリクエストしたり、美味しかったら褒めたりすることは心がけています。私は、作らないくせに味にはうるさいんですよ。台所で料理している夫から「味見担当大臣!」って呼ばれて、味見を求められることも。家の中では夫のほうがおしゃべりで、そういうやり取りは盛んなほうだと思います。朝から全力のテンションで来られるとつらいな……と思うときもありますけど(笑)。

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衣装は夫がコーディネート。信頼して任せる

得意なことを率先してやってくれるおかげで助かっているといえば、衣装選びも。私がメディアに出演するときの衣装は、基本的にすべて夫がコーディネートしてくれています。私はファッションにあまりにも関心がないんです。色や柄の組み合わせが苦手で、私が選んだら黒ばかりになりそう。実は議員時代から、秘書や母親に選んでもらっていました。夫は逆にちょっと時間があるとお店をのぞくくらいファッションが好き。番組での私の立ち位置や放送の時間帯まで考えて、客観的かつ冷静に、1週間分のトータルコーディネートをしてくれています。

こだわっている人同士だとぶつかることもあると思うんですけど、私は反論するほど自分のセンスに自信があるわけではない。自分が不得意なことは信頼できる人に任せたほうがいいと思っています。仕事でもそうですけど、相手を信用して任せること。そうすると任されたほうは、成果を出そうと頑張りますよね。

ネットニュースは夫が先にチェック 

宮崎は現在、コンサルタント会社を経営しています。これまで、基本的に私がメディア出演、夫はビジネス中心でやってきました。私のコメントや映り具合に関しても、夫は客観的な視点でチェックしてくれるので、そこは頼りにしていますね。発言が拾われてネットニュースになると、私よりも先に確認してくれています。

政治的な発言は賛否両論がつきものですが、私はもともとコンプレックスの塊で自信がない。不安になると「あの発言、きちんと伝わったかな」と夫に聞くんです。そうすると「あれはあれでよかったよ」「大事なことが伝わればいいんだから」と励ましてくれるので、この人がそう言っていれば大丈夫かな、と思えるんですよね。逆に、「あれは言わないほうがよかったんじゃない」とか「話が少し長かったね」と言われることもあります。

気持ちよく朝を迎えるためにやっていること

「夫婦円満の秘訣は」とよく聞かれますが、やっぱり日々の対話と、「ため込まないこと」じゃないでしょうか。不満をため込んだ後に爆発すると手遅れになりかねないですから。私たちは、嫌な気持ちを翌日に持ち越さないのがルール。朝は気持ちよく迎えたいですからね。何か気になることがあったら、夫が飲みに行っていていなくても、日付をまたぐ前にメールで伝えます。そうすると、すぐ「ごめんね」と返ってくることもありますし、ちょっと期待した答えではなくても、とりあえずはすっきりします。

「明日言おう」とためてしまうと、嫌な感情はどんどん悪いほうにいってしまうので、そうなる前にちゃんと伝えたほうがいいと思うんです。夫婦と言っても結局は他人。違う環境で育ってきて、物事の受け止め方や価値観が違う二人が一緒にいるわけですから、いろんなことがありますよね。その都度、お互いに思ったことを言うことが大事なのではないでしょうか。

あとは、夫婦もやっぱり要所・要所は男と女でいるための努力をしなければと思います。普段は“家族”でいいけど、1割でも2割でも男女だという関係は残しておいたほうがいい。とは言え、私も限りなく0に近づいたりするんですけどね……。お互いを名前で呼び合うのもいいかもしれません。わが家も、妻のことを「ママ」と言わないというのが彼のポリシーなのでそうしています。子どもにとってはママだけど、俺にとってはママじゃない、と。

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最初はちょっと苦手なタイプだった 

同期の議員として出会ったころは、全然タイプじゃありませんでした。宮崎のように生命力の塊のような人はむしろちょっと苦手だったんですよ。「チャラチャラした人がいるな」と思っていたんです。

でも、自民党内での会議での彼の発言がちょっとぶっ飛んでいるというか、すごく面白くて。彼はもともと経営者だったので、政治家然としていなかったんですよね。自分が知っている現場の声を先輩議員にも臆することなく伝えていました。そんな人は同期の中でも彼だけ。勢いだけの人かと思えば、気遣いもすごい。先輩や同僚の議員の誕生日が全部頭に入っていて、「誕生日だからお祝いを渡しに行ってくる」と。私にはとてもできないので、心から尊敬しました。

私はと言えば、地方議員から国会議員になったばかりで、国政のスピード感についていくのに必死。国会議員として生き生きと活動している彼の姿に、「こういう人がこれからの日本を変えていくんだろうな」と思ったんです。そこから人間的に惹かれていったんですよね。

彼の周りには友人や慕ってくれる後輩も多くて、そのにぎやかな様子を見ていたら、「この人は信用できるし、私もこの仲間に入りたい」と思いました。前回(#4『夫の過ちをなぜ許せたか。関係修復の処方箋とは』)お話ししたように、10年、20年先に、この人と一緒にいる未来が自然と想像できたんです。それが結婚を決める大きなきっかけになりました。

傷も含めて味が出るもの

私たちの結婚生活はこれまでもいろいろありましたが、夫婦のかたちって、そうやって悪いことも含めて、だんだんとできていくものかもしれませんね。無理に何か起こす必要はないですけど、ただ平坦な道のりだったら飽きてしまうかもしれない。ハプニングさえも楽しむという気持ちでいたほうがいい。夫は、傷も含めて味が出る「ヴィンテージものの家具」のようなものだと思っているんです。

夫は経営者としてビジネスの世界が向いているのかもしれないですけど、政治家としての適性はやっぱりあると私は思っていて。閉塞感のある今の時代こそ、あの突破力やマネジメント感覚が求められるのではないかと思うんです。ただ、そこは世間の審判を受けてこそ。妻が許しても世間が許すか、ですね。

金子恵美さん、夫の過ちをなぜ許せたか。関係修復の処方箋とは 金子恵美さん、いま改めて考える“公用車ベビーカー”問題。育児中の女性の働きやすさを実現させるには?
1978年、新潟県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2007年新潟市議会議員選挙に当選、新潟県議会議員を経て、12年に衆議院議員に初当選。16年に総務大臣政務官に就任。17年の衆議院議員選挙で落選。現在フジテレビ系「めざまし8」、CBC系「ゴゴスマ」など、多数のメディアにコメンテーターとして出演中。
愛媛県生まれ。5年間の都内学習塾勤務を経て、2011年にフリーライターに転身。ウェブや雑誌のインタビュー記事、教材や試験問題の作成や小論文の添削などを担当する。高校生と中学生の息子とのおしゃべりが大好き。
1989年東京生まれ、神奈川育ち。写真学校卒業後、出版社カメラマンとして勤務。現在フリーランス。