NISAを始めてみたはいいものの……“出口”知っていますか?
始めることと同じくらい大切なNISAの“出口”
国はNISAやiDeCoなど、国民に積極的に取り組んでほしい制度の入口部分やメリットについては熱心に伝えてくれますが、注意点を含め“入口を入った後”についての説明は足りていないように思います。
以前♯38(「貯蓄から投資へ」と言うならば…~大事なこの1年の過ごし方)で、NISAの拡充を大きなプールに例えました。本来であればプール=制度の枠組みを用意するだけでなく、泳ぎ方=活用方法を学ぶ機会も提供してほしいところ。
新しいNISAをきっかけに投資をスタートする方も増えていますから、 “始めたら、後は自分で頑張って”ではなく、出口についても伝えることでより一層、制度が活用されるのではないかと感じます。
出口のポイントは3つ
出口を遠くに設定するためには、短期間のうちに使うことになりそうなお金を投資に回さないことが肝心です。これまでもお話ししていますが、数年以内に使うことが決まっているお金は定期預金や個人向け国債などを置き場所とし、使う時期や使い道が決まっていない余剰資金を投資にまわすのが鉄則。
積立投資であれば、長く続けるほど利息がさらに大きな利息を生む、複利の効果を得ることができます。
国は新しいNISAの活用例として、住宅資金、子どもの教育資金、老後資金と“3段活用”することを挙げています。非課税投資枠が復活する仕組みを生かし、その時々のライフイベントに合わせて余剰資金をNISA口座での投資に回したり取り崩したりしながら、まさにNISAとともに人生を歩むイメージです。
積立投資をしている方で、暴落した時に動揺し、慌てて出口に走って投資を辞めてしまう方もおられますが、実は逆効果。安い時はたくさん買えるタイミングですから、動じずに淡々と積み立てを続けるのが得策です。
他の人や市場の乱高下に惑わされることなく、自分だけの活用プランを考えるようにしましょう。
出口を考えておかないと、売り時を逃す可能性も
1人1,800万円まで非課税で投資できると聞くと、とてつもない額に感じますが、月5万円の積立投資をすると、30年で枠がいっぱいになります。20歳でNISA口座での投資を始めた場合は50歳。個別株の購入などをすれば、さらに早く埋まります。
ギリギリまで出口について考えずにいると、いざ売ろうと思った時に相場状況が悪く売り時を逃してしまう可能性も。当年中に枠が埋まりそうであれば年初から売却のタイミングを検討するなど、出口の準備期間は長めにとるのがオススメです。
新しいNISAの特徴のひとつである、非課税枠の復活。短期売買を防ぐため、枠が復活するのは翌年となっています。復活した場合でも年間の非課税投資枠(成長投資枠120万円、つみたて投資枠240万円)が増えるわけではないことにも注意が必要です。
投資先や金額、見直しのタイミングとは
NISA口座での投資を始めたばかりだから、何も考えなくても大丈夫、と思う方がおられるかもしれませんが、そうではありません。状況に応じて投資先や投資金額の見直しをするようにしましょう。
私がオススメする見直しのタイミングは以下の3つ。
①年1回、定期的に②ライフプランが変わった時③知識や経験が増えた時。
健康であっても毎年、健康診断を受けて今の体の状態を知り、病気を未然に防ぐように、定期的に資産の状況を確認しておければ安心です。
人生100年時代においては、一度立てたライフプランが大きく変わる可能性も。ライフイベントそのものがなくなったり、時期が前倒しになったりした場合にはNISAの出口のタイミングを遅らせる/早めるなど見直しが必要となります。さらに知識や経験が増えればリスク許容度(許容できる値動きの振れ幅)も変わってきますから、見直しによって、その時の自分に合った投資を考えることができます。
いずれの場合も、NISA口座だけでなく家計全体の現在の状況と、目指す未来の方向性をチェックすることが重要です。
私の失敗談。旧NISA利用者が注意すべきこと
私の失敗談を読んで、「10月中旬に気付いたのなら、間に合っているのでは?」と感じた方もおられるかと思います。手遅れではないのですが、勘違いをしていたことでみすみす利益を逃してしまいました。
この個別株は、今年の春頃までは上場来高値を更新するなど絶好調だったにも関わらず、その後、下落。24年末で非課税保有期間が終わることに気付いていれば、春の時点で売却し、大きな利益を得ることができたのに…と悔しい気持ちでいっぱいです。
新しいNISAは非課税期間が無期限となったため、私のような失敗をすることはなくなりましたが、年間の非課税投資枠と生涯の非課税保有限度額の両方をご自身で管理する必要がある点には気を付けておきたいところです。
特に積立投資をしていると、資産残高が少しずつ増えていくのが嬉しくて、「貯める」ことが目的となってしまいがち。でもお金が増えるだけで人生の満足度が高まるわけではありません。お金を使うことでより一層、皆さんの人生を彩り豊かなものにすることができます。だからこそ、“出口”や使い方を考えることが重要になってくるのです。
NISA口座はあくまでも“ツール”。人生の“ゴール”にたどり着く助けとなるよう、うまく活用したいですね。
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