片思いをこじらせ交際経験ゼロ。“結婚は人生の墓場”だと思っていた私が、幸せな家庭を築くまで
【今回の大人婚】Tさん 結婚時の年齢:35歳
関西在住の専業主婦のTさんは現在41歳。同い年の夫・Mさんと、可愛い二人の子どもと暮らしています。TさんにとってMさんは正式にお付き合いした初めての彼氏。遅咲きの恋でした。
酒飲みの父に苦労する母
明るい性格で友人も多く、いつもニコニコ元気なTさん。でも、父の飲酒問題に悩まされた過去がありました。
「父は昔、アルコール依存症でした。酔っ払って家で暴れ、母が苦労するところを見て育ったため、結婚は人生の墓場だと思っていました。幸い、退職後に父自ら病院へ行き、依存症を克服。今では、孫たちに激甘な優しいおじいちゃんです」
結婚願望はなかったものの、恋愛には大いに興味あり。しかし、男友達はたくさんいるものの、友達以上の関係になかなかなれず、片思いが続いていた。
「そのことがすごくコンプレックスでした。20代に入ると周りはみんな彼氏ができて、楽しそう。それなのに私は片思いばかり。一番こじらせたのは、24歳の合コンで出会った人への足掛け9年の片思いです」
当時、介護職をしていたTさんは「このまま同じ人生を送っていてもしょうがない」と一念発起。ワーキングホリデーでオーストラリアに行くことに決めた。その直前の合コンで出会ったのが片思いの彼。話が合って気になったものの、こちらは海外へ旅立つ身の上。とくにアプローチすることもなく、オーストラリアで2年働いた。帰国後、友達を介して彼に電話をすると、その声だけで、「Tちゃん?」とわかってくれた。
「覚えていてくれたんだ、ということにきゅんとして。友だちグループでよく遊ぶようになりました。そのうち、二人きりでも週1ペースで遊ぶようになったんです。一緒に富士登山したことも。これはもう両思いなのでは?と、告白したのですが振られてしまいました。その後も友達付き合いは続き……。あるとき、彼に2年間彼女がいたことがわかったんです。それなのに私と遊びまわってたの!?と思ったらスッと心が離れ、ようやく目が覚めました。33歳のことでした」
婚活疲れが吹き飛んだ〈同い年合コン〉
片思いの間も、合コンや街コンに参加して新しい出会いも求めたけれど、ただ楽しいだけで終わってしまった。
「彼を諦めてからはマッチングアプリも始め、週1回のペースで色んな人とご飯に行ったのですが、ピンとくる人にはめぐり合えず。こんなんでほんまに見つかるんかな……と段々疲れてきたころ、久しぶりの合コンに誘われました」
3対3で全員34歳という合コンは、最初から話が弾んで大盛り上がり。婚活疲れが吹き飛ぶ楽しさだった。
「でも、その中で一人だけ、女性陣とあまりしゃべらない男性がいました。この人は何しに来たんだろう、プライド高そうな人だな、と思いつつも顔はダントツでタイプでした(笑)」
合コンから二日目、その男性から「一緒に山登りいきませんか」とLINEがくる。Tさんが「趣味は登山」と言ったのを聞いていたらしい。
「その一瞬で恋に落ちました。ご飯に行きましょう、はよくあるけれど、山登りに誘われたのは初めて。クールに見えて、ちゃんと私の話を聞いていたギャップにやられたんです」
その男性がMさん。二人は3回目のデートで約束通り、山登りをした。
「おにぎりを握って持っていったら、うまいうまい、と喜んでくれました。帰り道に温泉に寄ることになったのですが、急だったのでシャンプーセットがなかったんです。私は気にせずのんびり女湯に入っていたのですが、彼は自販機で買ったシャンプーセットをなんとか私に届けようと、従業員さんにお願いするなど頑張ってくれたらしくて。なんて優しい人なんだろうと、感激しました」
決め手は、34歳で始めた一人暮らし
5回目のデートは7月7日、七夕の日だった。
「『七夕やなあ、なんかええことあるかな~』と言ったら、初めて私の家まで送ってくれ、一緒に朝まで過ごしたんです。じつはそれまで実家に住んでいて、このままではあかん、と34歳の自分への誕生日プレゼントとして一人暮らしを始めたばかりだったんです。今考えると、そのことも交際を後押ししてくれたと思います」
TさんとMさんは正式にお付き合いをすることになった。
「彼は元々インドアだったのに、アクティブな私に合わせて毎週のようにピクニックや登山、小旅行に付き合ってくれたんです。私の生活を何一つ変えずに一緒に楽しんでくれました。彼氏がいなくても友達と楽しくやってきましたが、守られているという安心感と、二人だからこその楽しさと……。恋人関係ってこんなに幸せなんだ!と、初めてのお付き合いを満喫しました」
付き合って5カ月、35歳の誕生日が近づくにつれ、この人と結婚したいという気持ちが強くなった。かつては「人生の墓場」だと思っていた結婚だったけれど……。
「その頃には父もアルコール依存症を克服し、姉たちも結婚して幸せな家庭を築いていました。何よりMとずっと一緒にいたい思いで、私は今すぐにでも結婚したかったんです」
Mさんに前のめりで結婚する気はあるのか尋ねると、「Tちゃんの結婚したいっていう気持ちは、おままごとみたいや。もうちょっと考えたい」と保留にされた。
「めっちゃショックでした。先に結婚していた姉に相談すると、『Mくんの言うてることもわかる。そんなに焦らんともうちょっと待ってみ~』と。なんとか自分の気持ちをなだめていました」
35歳の誕生日は過ぎ、翌年の8月。二人で登った山頂でMさんが「結婚してください」とネックレスをくれた。もちろん返事はOK。記念写真を撮ってもらおうと他の登山客に声をかけると、「せっかくなんで、もう1回やりましょう!」と動画を撮ってくれた。翌月に入籍し、36歳の誕生日直前に式を挙げた。
「どうしても35歳のうちに結婚したかったんです。なんとかギリギリセーフ。山頂で撮ってもらったプロポーズ動画も流し、友達みんなも来てくれて、本当に最高の結婚式でした」
夫と出会えたことが、一番の幸運
その後、37歳で第1子、39歳で第2子を出産。妊娠を機に専業主婦になった。
「Mとの二人の時間を楽しみたかったので、出産はそんなに急いでなかったのですが、生まれてきたらもう可愛くて可愛くて。今では完全に、愛の対象は子どもに移ってしまいました」
Mさんは今でもTさんと手をつなぎたがり、毎日のスキンシップも欠かさないそう。
「友達夫婦の話を聞くと、今でも手をつないでいる夫婦は珍しいそうで、Mが変わらず愛情を注いでくれることにもっと感謝しようと反省しました。最近は自分から手をつないでみたりしています。Mは私が育児で疲れていると、お土産を買ってきてくれたり、家事を全部やってくれたり、自分だって仕事で疲れているだろうに、労わってくれるんです。こんなに思いやりのある人が自分の夫になってくれて、不毛な片思いに悩んでいた日々が全て報われました」
大人婚でよかったことはなんですか。
「20代でさんざん遊び、海外生活もしたからこそ、今、家庭の穏やかな幸せを噛みしめることができるのかなと思います。何より結婚相手がMだったことが一番の幸運。34歳の〈同い年合コン〉でしか、Mと出会えない運命だったのなら、34歳まで彼氏ができなくて本当によかったな、と思うくらい。子どもたちが大きくなったら、昔ホームステイしていたタスマニアに家族で行くのが夢です」
(写真:本人提供)