わたしたちの大人婚物語#6

36歳、仕事大好き・結婚願望なし・元カレやや未練あり……から3児のワ―ママに

「このままずっと一人なのかな」と悩むあなたに届けたい、本当にあった大人のマリッジ・ストーリー。35歳以降に結婚した大人婚の先輩たちに、出会ったきっかけや結婚の決め手、妊活・キャリア・親の問題まで根掘り葉掘り聞きました。ここに紡がれた幸せな物語はすべてほんもの。だから全部あなたにも起こりうること――。今回は、結婚願望のなかったバリキャリ・Hさんが仕事をきっかけに3児のワ―ママとなった大人婚物語。
マッチングアプリで最初に会った人と35歳でオタク婚。子どもは作らず「ふたり」を楽しむ 離婚後、おひとりさまを満喫したからこそつかんだ41歳・電撃国際再婚

【今回の大人婚】Hさん 結婚時の年齢:36歳

Hさんは、マスコミ関係の仕事をする関東在住の49歳。二つ年上の夫・Eさんと小学生の3人の子どもたちと毎日にぎやかに暮らしています。Hさんはこれまで一度も本格的な婚活をしたことがないそう。

「元カレと元さや」という淡い期待

「うちの会社は女性が多く、みんなバリバリ働いて、プライベートも趣味と遊びで充実している人ばかり。深夜残業が当たり前の忙しい仕事なのですが、私自身、やりがいを持って働けていて、不満はナシ。一時期、両親の離婚騒動があったのもあって、結婚願望はとくにありませんでした」

余裕があった背景には、元カレの存在も。

「20代から30代前半まで長く付き合った遠距離の彼がいて。両親にも紹介済みで、兄の結婚式の二次会にも出席したほど。いずれは彼と結婚するんだろうなと思っていました。彼は、仕事終わりで他県から会いに来てくれるような情熱的な人。その分、ぶつかることも多く、後半はくっついたり離れたりを繰り返し、最後は旅行先で大喧嘩。これでも戻るなら、その時は結婚だと冷却期間を置いたのですが、最終的に『Hとの結婚はないと思うからもう別れよう』と告げられて」

その後、元カレは別の人と婚約。これで長かった関係もピリオドと思いきや、式直前に元カレから婚約破棄したという連絡が。「それで、もしかしたら元さやに戻るのかなって期待しちゃったんですよね」

ところが、しばらくして彼は別の人と入籍。その相手が自分とは全く違うタイプの女性だったことから、復縁はもうないだろうと諦めがついた。その後、飲み会で出会った人と付き合ったこともあったけれど、しっくりこずにすぐに破局。このまま結婚しなくてもいいか、と一人を満喫していた。

元カレとは正反対の穏やかさに惹かれて

35歳の7月、ある企業との仕事で名刺交換をした男性がいた。それが未来の夫となるEさんとの初対面。が、そのときは大勢いる仕事先の人の一人だったそう。翌月、その企業から野外イベントの誘いを受けた。

「2泊3日のキャンプイベントだったのですが、夜にはカジュアルな雰囲気の飲み会があり、先方の会社のみなさんととても仲良くなりました。Eはそのイベントのリーダーでしたが、偉ぶらず、自分で笑いを取りながらみんなをまとめていて頼もしかった。後輩から慕われているのも伝わってきました。飲み会では周りから『早く結婚しなよ』といじられていて、まあ確かにイケメンではないけれど、こんないい人がなんでまだ残ってるんだろうと不思議に思ったくらい。でも、その時は全然『じゃあ私が』とは思いませんでした。あくまでEは〈仕事先の感じのいい人〉でした。」

すっかりみんなと打ち解けたHさんは、翌月行われた打ち上げにも誘われ、参加。その帰り道、Eさんから「付き合ってくれませんか」と告白されたそう。名刺交換から2カ月の急展開だった。

「後から彼の友人に聞いたのですが、7月の名刺交換をした日は彼の誕生日だったそうで、その誕生日会で『今日すごい気になった子がいる』と言っていたそうなんです。どうやら8月のイベントのお誘いも、それもあってのことだったようで……」

Hさんはその場でOKの返事をしたそう。

「会った回数だけでいえば3回ですけど、うち1回は2泊して、対〈私〉の彼じゃなく、集団の中の素の彼を見ることができました。イベントでアクシデントがあった時、すぐリカバリーする様子も見ていて頼もしさも感じ、人間的な信頼があったんです。アウトドア好きという趣味も合っていて、交際することに躊躇はありませんでした」

結婚後、Eさんが赤ちゃんを背負って山登りしたことも
結婚後、Eさんが赤ちゃんを背負って山登りしたことも

二つの期限切れが後押しに

そしてなんと、交際から4カ月の翌元旦に入籍! とんとん拍子の入籍には、ふたつの後押しがあったそう。

ひとつは、Hさんの賃貸の契約が間もなく切れることがわかったこと。以前はきょうだいと二人暮らしで広い家に住んでいたEさんから「じゃあうちにくれば」という申し出が。この年で一緒に住むならちゃんと将来のことも考えないといけないね、という話になったそう。

ふたつめは、2月に行われる友人のハワイ挙式に招かれたこと。パスポートの有効期限が切れていて、更新することになり、年末に戸籍を取り寄せた。
「あらためて戸籍を見たら、兄の結婚で義姉の名前が加わるなど、そこには家族の歴史が刻まれていました。ここで私がそれを途絶えさせていいのか、とふと考えたんです」

Eさんとやがては結婚するのなら、名字が変わった状態でパスポートを更新したほうがラク、という現実的な理由もあって、クリスマスにプロポーズ、元旦に入籍とあっという間にゴールイン!

元カレとは長く付き合っても結婚にいたらず、Eさんとは出会ってすぐに結婚。その違いはなんだったのだろう。
「元カレとはドラマティックな関係でしたが、元々の私はトキメキやドキドキはそんなに必要としないタイプ。Eの穏やかな優しさには、この先ずっと一緒に仲良くいられるだろうなという安心感がありました」

当時Hさんは36歳。Eさんは38歳。子どものことはどう話していたのだろうか。
「もともと卵巣嚢腫(のうしゅ)があり、生理が重くて救急車で運ばれたこともあるほど。だから子どもはできないかもしれないと思っていました。そんな話をあらたまってしたわけでもないのに、彼は結婚するときに『お互い歳だから子どもは授かれないかもしれないけど、それでもいいから』と言ってくれたんです」

「この取材で久しぶりに引っ張り出してきたマタニティ写真。我ながら幸せそうです」
「この取材で久しぶりに引っ張り出してきたマタニティ写真。我ながら幸せそうです」

不妊外来に行くこともなく、37歳で自然妊娠し、出産。
「本当に幸運だったと思います。ただ、妊娠中に父の末期がんが発覚し、出産直前に急逝。孫の顔を見せてあげられなかったことだけが心残りでした」

三度の育休とキャリアのはざまで

39歳で第二子出産。年齢的には仕事の脂ものってくるころ。葛藤はなかったのだろうか。
「一人目のときは、仕事はある程度やり切ったなという思いもあって、生まれる喜びのほうが断然勝っていました。ただ復帰してすぐまた第二子の産休に入ることになり、そのことには申し訳なさを感じました。復帰後は後輩たちが自分の上司になっていたのも、モヤモヤしなかったと言ったらウソになります(笑)。向こうもやりにくいだろうなあって。ただ会社も、私が働きやすいよう、いろいろ配慮してくれているのを感じていたので、当然のことだと受け入れていました」

そして42歳で第三子を妊娠。
「まさかこの歳で授かると思っていなかったので、驚きでした。Eも喜びの前に戸惑った顔をして……。母からは『3人も産んだら会社辞めさせられるんじゃない?』と心配され、誰も喜んでくれないんだろうか、と落ち込みました」

そこで相談したのが、同じ会社、同じ年齢で三児のママをしている同僚。
「実は私、3人目を妊娠して……と打ち明けると、なんと彼女が『じつは私も4人目を……』と! すごく勇気をもらって、それからはお互いの状況を報告し合いながら妊娠期間を過ごしました」

三人目を無事出産
3人目を無事出産。3人の子どもをなんとか育てられたのは、両家のじぃじ・ばぁばのサポートも大きい。「ずっと健康でいてほしいです」

前置胎盤によって帝王切開になったものの、無事出産。三度目の育休ののち、職場復帰した。じつは夫のEさんは出張の多い仕事。これまでもほぼワンオペで育児と仕事をこなしてきたが、三人ともなるとさすがにHさんも不安になったそう。が、復帰して少し経った頃、コロナが大流行。テレワークとフレックス制が定着したことで、救われたという。

「新しい働き方がなかったら、さすがにパンクしていたかも。ママでも働きやすい環境を考え続けてくれた会社には感謝しています」

そして、最近になってHさんは仕事で大役を任されたそう。
「本当に私でいいんですか?と何度も念押ししたんですが、あなただから頼みたいんだ、と言ってもらい、ずいぶん悩みましたが引き受けることにしました。3人の育児をしながら、ここまでキャリアアップできるとはまったく予想していなかったのでこの先の怒涛の日々は不安しかないですが……引き受けたからには頑張ります」

「仲のいいきょうだいで、上の子が下の子の面倒をよくみてくれるので助かっています」
「仲のいいきょうだいで、上の子が下の子の面倒をよくみてくれるので助かっています」

〈たられば〉を思わない結婚

大人婚をしてよかったことは?
「いま幸せなのも結果論なんですよね。あのまま結婚していなくっても幸せで充実した人生だった可能性も十分ある。ただ、ある程度大人になってからEと出会えてよかったなと思います。31、32歳で出会っていたら、彼の素晴らしさに気づけなかったかも。私、彼と出会ってから『あのときああしておけば』と思ったことが一度もないんです。他の人だったり、他のタイミングで出会っていたら、たらればを考えていたかもしれない。ワンオペ育児に疲れて文句をいうことはありますが、彼が愛情深い父親なのも、いざというとき頼りになるのも日々感じているので、彼と結婚出来てよかったとしみじみ思っています。彼とならたとえ子どもがいなくっても仲良く過ごせただろうな。子育てと仕事がひと段落したら、二人で旅行に行くのが夢です」

(画像の一部を加工しています)

(写真:本人提供)

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マッチングアプリで最初に会った人と35歳でオタク婚。子どもは作らず「ふたり」を楽しむ 離婚後、おひとりさまを満喫したからこそつかんだ41歳・電撃国際再婚
ライター/エディター。出版社で雑誌・まんが・絵本の編集に携わったのち、39歳で一念発起。小説家を目指してフリーランスに。Web媒体「好書好日」にて「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」を連載。特技は「これ、あなただけに言うね」という話を聞くこと。note「小説家になりたい人(自笑)日記」更新中。