婚活するほど結婚は遠のく? 綾子(福田麻貴)は相談所から次のステップへ 『婚活1000本ノック』5話
第一印象にとらわれない「フィーリング」の力
イケメンにほだされて失敗してきた過去を見直し、中身を重視してみたり、心を揺さぶる直感を大事にしてみたり、それでもダメなら「理想の結婚相手」の条件を洗い出してみたり。そんなふうに、打てる手を次々と打ってきた綾子にとって、残された道はどんどん少なくなっていく。
次に綾子が選んだのは、伝家の宝刀ポジションにある「結婚相談所」。自分で相手を決められないなら、プロに選んでもらおう!という奥の手である。
すぐさま綾子の前には5人の男性があらわれた。まさに多種多様で個性あふれる人物たち。もっとも綾子と「フィーリング」が合っていると感じられたのは、ヤギとのツーショット写真が印象的な通称・ヤギオ(千賀健永)だ。
といっても、綾子から見たヤギオの第一印象は、決して良くはない。親戚に強引に勧められて結婚相談所に登録した彼は、一見、ほかの4人と比べて結婚そのものに乗り気ではなさそう。愛想がないわけではないが、最初から綾子に強い興味を持っているようには見えず、控えめな様子だ。
しかし、そのあと二人でお茶をした綾子とヤギオは意気投合。時間が経つのも忘れたかのように3時間も話をしていた。綾子はヤギオについて、ほかの候補者と比べても「いちばん一緒にいて楽しいし、会うの楽しみなんだよね」と言っている。
綾子のライバル小説家・九本(関水渚)が堂島(風間俊介)と出会ったときも、九本にとっての彼に対する第一印象は良くなかった。そのあと会話を重ねていくことで、お互いの思っていることを知り、印象を改めたのだ。
綾子とヤギオ、九本と堂島のケースを合わせてみると、第一印象にとらわれすぎず、その後何度か話してみて「フィーリング」が合うかどうかを判断する流れが、自然かつ確実性が高いように思える。
出会いはあるのに上手くいかない理由
綾子のように、会うことや話をすることが苦ではない、なんなら「会うのが楽しみ」だと思える相手と出会うことは、簡単なようで難しい。マッチングアプリや婚活イベント、結婚相談所など、出会うための環境や方法はすでに出揃っているように思える。
しかし、さまざまな方法を試したうえで得るものが少ない場合は、どうしたって途方に暮れる瞬間がやってきてしまう。
綾子が「婚活すればするほど、恋愛からも結婚からも遠ざかってる気がする」のは、気合いを入れれば入れるほど“目的”と“手段”の入れ替わりが起こってしまうからではないだろうか。
スタートは誰しも同じだろう。もちろん、結婚相談所や婚活イベントを活用する側としては、将来を見据えたパートナーを探している。
スッと相手が見つかればこじれることはないが、婚活歴が一年、二年……と長くなっていくにつれ、そもそも結婚したいのか、婚活することが目的なのか、ゴールを見失ってわけがわからなくなる。
それは、まったく条件に合う理想の相手と出会えないせいだ、とも限らない。蓋(ふた)を開ければ、お互いに常識人で清潔感もあって、話していてそこそこ楽しい、と思える異性がいるかもしれない。
恋愛をする相手にしても、結婚相手にしても、選ぼうと思えば選べる。それなのに上手くいかないのは、綾子のように「自分で決めたら失敗する」といった過去が足を引っ張っているからかもしれない。
「結婚」の先に待ち受ける関門
紆余曲折(うよきょくせつ)があったものの、綾子は無事にヤギオと結ばれ、おそらく次回の6話から新章が始まる。これまでが婚活編だとするなら、第二部は結婚準備編だろうか。
ヤギオは東京でバンドを組み、メジャーデビューをしていた経歴があるが、芽が出ないまま辞めて、山梨にある実家の和菓子屋で職人の見習いをしている。結婚を前提にしたお付き合いをスタートさせたヤギオと綾子は、次のステップとして、お互いの家のことを知っていく段階に入っていくだろう。
恋愛とは違う、結婚についてまわる“付随物”。それは、両者の家庭(親族)にまつわる“しがらみ”なのではないか。二人さえ良ければ完結していたものが、一気にそうではなくなっていく。ヤギオのように、代々続く家業があるなら、より一層、綾子の側が合わせたり妥協したりする場面が増えていくだろう。
よく聞かれる言葉だが、結婚はゴールではない。むしろ二人にとってのスタートであり、両家が入り混じった、有象無象の人間関係がはじまる合図なのだとも思う。
せっかく綾子の婚活が実を結びそうなタイミングで不穏なことを言うようだが、2022年の厚生労働省による人口動態統計をみてみると、婚姻数は約50万組である一方、離婚したのは約18万組だ。
仮に綾子とヤギオが無事に結婚したとして、夫婦生活を持続させられるのだろうか。たとえ、婚活の先にある結婚という一つの「ゴール」をクリアしても、まだまだ二人には乗り越えなければならない関門がやってくるだろう。綾子はそれらにどう向き合っていくのだろうか。
フジ系水曜22時~
出演:福田麻貴(3時のヒロイン)、八木勇征、関水渚、野村周平、白河れい、橋本マナミ、中越典子ほか
原作:南綾子
脚本:ニシオカ・ト・ニール、松本美弥子、山岡潤平、藤平久子
主題歌:水曜日のカンパネラ『幽霊と作家』
プロデュース:羽鳥健一、矢ノ口真実、髙石明彦
演出:田中亮、西岡和宏、 吉野主
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